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「究極のキーボード」を求めて、JIS配列カスタムキーボードの世界へ

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以前も言ったように、私はキーボードコレクターであるかのように様々なキーボードに手を出していたが、RAZER HUNTSMAN MINIで光学リニアスイッチV2に触れ、これが私の究極のキーボードであると確信した。

しかし、60%キーボードは実用上辛いため、TKLを待ち望んでいた。 そして、HUNTSMAN V2 TKLによって願いは叶えられた。

かに思われた。

しかし、最初から私は思っていたのだ。 「ちょっと感触違うのでは?」と。

同じスイッチなのだから気の所為だろうと思っていたのだが、実際に使っていてもやはり違う。 HUNTSMAN MINIのほうがしっとりとした感触で、HUNTSMAN V2は軽く、曖昧だ。 HUNTSMAN TEは全く感触が違うので、V2であることは間違いないと思うのだが、なんか違う。HUNTSMAN V2の満足度は、せいぜい80%くらいだ。

そもそも新たな問題として、作業環境が増えた。 当然ながらワークルームと寝室のPCはそれぞれ据え付けのキーボードがあるわけだが、会社の仕事をするときにキーボードが欲しい。 会社の仕事はまた別のデスクでやることになるのだが、スペース的にあまり大きいキーボードは広げにくく、UnicompやLibertouchといったキーボードは候補にならない。

RealForceは、改めて試してみたけれど、いまいちしっくりこない。気持ちよくないし、コードを書く集中力がちょっと持っていかれてしまう。HUNTSMAN MINIは打ち心地は良いが、60%キーボードで仕事するのは結構きつい。

そう考えるとこの環境にちょうどいいキーボードがない。 HUNTSMAN V2 TKLやVarmiloのIris軸に匹敵する入力フィールを持ち、フットプリントが小さいTKLというのを私は他に持っていない。

HUNTSMAN MINIのフィーリングのTKLがあれば100%満足しそうだと思うけれど、V2がだめだった以上、「私にとっての理想のキーボード」にはまだ到達できていない。その状況で「クオリティが気にならないTKLがもうひとつ欲しい」となったときに考えることはひとつ。

「ここはひとつ、理想のキーボードをこの手で作ってみたい」

もちろん、他にも選択肢はあることは知っている。 V2に搭載されているのとは違う「アナログ」スイッチを採用したHUNTSMAN V3 Proであったり、ホール効果センサーを用いたKeychron K2 HE1などだ。

しかし気になるじゃないか。 自作キーボードをビルドするキーボードマニアに応えるための、最高のスイッチというのが。

こだわるなら、キー特性を好みにカスタマイズするという方向で複数種類のキースイッチを混ぜることも可能だ。 結果がどうあれ一度やっておくべきもののような気がしてしまう。

「Cherry MX メカニカルスイッチ」の時代にお別れを告げるためにも、ここで自分のロマンを集積した「究極のキーボード」を求めてみたい。

Pulsar PCMK TKL Mechanical Gaming Keyboard

Pulsar Gamingは韓国龍仁市のゲーミングギアメーカー。 日本で目にする機会はやや少ないが、キーボードやマウスをはじめ、eスポーツ向けのギアを販売している。

最近はGateronと共同開発したホール効果磁気センサーを用いたHEキーボードを出しているのが注目ポイントか。

そんなPulsarには非常に珍しいものがある。 それが、「JISキーボードのベアボーン」である。

まず、JIS配列のゲーミングキーボードという時点でかなり珍しいのだが、基盤だけのベアボーンというのはちょっと聞いたことがないレベルだ。

ベアボーンなので、ここにお好みのスイッチとキーキャップを組み合わせて理想のキーボードを作れるというわけだ。

PCMKシリーズそのものは現在は磁気スイッチバージョンに移行していて、在庫も少ない。 あるのは白のベアボーンだけだ。

そして、さらに問題がある。 JISキーボードのキーキャップというもの自体がほとんどなく、特に下段の構成は他のキーボードと共通点が少ない上に、かなりまちまちである。

PulsarはJISキーキャップも販売しているが、こちらは白が在庫切れで黒のみ。 このため、Pulsarで構成しようとすると白基盤黒キャップになってしまう。

キースイッチ

スイッチだが、私の手元にEPOMAKER BUDGERIGARスイッチがある。 少し重めくらいのタクタイルスイッチである。 イニシャル55gf、アクチュエーション47gf。

これが35個セット。91キーのキーボードなので、残り56。

35個はタイピングに使わないキーにアサインするのにちょうどいい数なので、目的を達成するために徹底的にこだわったスイッチを採用しようと考えた。

私はリニアもタクタイルも両方使う人なので、非常に悩むところだが、魅力的なのはDurockのWhite Lotusスイッチと、Wuque Studio Pearl Linearスイッチ。

White Lotusはタクタイルタイプで、アクチュエーション46gf、ボトムアウト56gf。 WS Pearlスイッチはトラベル少し短めで、45gfアクチュエーション、58gfボトムアウト。 スペックは非常に似ており、主な違いはPearlスイッチは少しストロークが短いことと、リニアタイプであることだ。

この記事を書くのにも使っているVarmilo Iris軸はプレッシャーポイントで60gf。アクチュエーションは45gfになっている。 White Lotusは荷重グラフがないためプレッシャーポイントが不明だが、実測した人のグラフを見ると60gfあたりに設定されている印象ではある。

つまりはIris軸, Budgerigarスイッチ、White Lotusスイッチのいずれもだいたい同じ荷重特性ということになる。 Pearlスイッチはリニアなので、またちょっと違う。これは最近ハマってるGraywood V4とかに近い。

最近赤軸系のキーボードにハマっているので非常に悩むところだけど、リニア系のキーボードは別途狙ってるやつがあったりするのでここはタイピングしやすいタクタイルに。となればということで、White Lotusを選択した。

スイッチはスペックが同じようなものなら同じようなもの、とはいかないのが不思議なところ。 赤軸系のキーボードは似たようなスイッチでも結構明確に分かるものだった。 1個80円という高級スイッチは使ったことがないので、その意味でも楽しみである。

91個のキーのうち

  • F1〜F12キー
  • 下段のキー (左CtrlとSpace以外)
  • PrtSc, ScrLk, Pause, Insert, Home, End
  • 右Shift
  • カーソルキー
  • ESC
  • E/J
  • Eisu
  • BackSpace

の35キーはBudgerigarスイッチを採用。 残りのキーにWhite Lotusをセットした。

ちなみに、Budgerigarスイッチは60円くらい、White Lotusは80円くらいで、White Lotusのほうが少し高い。そしてBudgerigarも別に安くはない軸である。 スペック上は両者はとても似ているので、製品の違いがどう出るかというのを感じやすいだろう。

スイッチ選択の基準は次のような感じ

  • タイピングで使うキー -> White Lotus
  • 押す時に操作を間違えたくないキー -> Budgerigar
  • 押す時に確実なフィードバックが欲しいキー -> Budgerigar
  • 連打することがあるキー -> White Lotus
  • 小指で押すキー -> White Lotus
  • 親指で押すキー -> Budgerigar
  • 通常のポジションから完全に離して打つキー -> Budgerigar

これはBudgerigarのほうがカチッとしてそうだという予測のもとでの選択だけど、逆だったらどうしよう、とは思っていた。

ちなみに、私はEnterは小指で押したり薬指で押したりする。

キーキャップ

キーキャップだが、Pulsarの黒キーキャップではなく、GRAPHTのデザインキーキャップを採用。

正直、他に選択肢が見当たらなかった。黒キーキャップで我慢するか、高価なGRAPHTのものを買うかだけだ。キーキャップだけで9000円くらいする。

GRAPHTのキーキャップ

揃ったパーツたち

Pulsar PCMK TKL (JIS)(Kit)

不織布の袋とプラスチックのキーボードカバーが付属しており、ほこりよけも運搬も非常にしやすいようになっている。

GRAPHT Designer’s Keycap
Pulsar PCMK Custom ID Tag
EpoMaker Budgerigar Switch
DUROCK White Lotus Switch

ビルドする

自作キーボードと違いケースはすでにあるベアボーンベースなので、スイッチとキーキャップを乗せていくだけである。

パーツが非常に多い。手順は簡単だが、焦らずやったほうが良さそうだ。

準備は整った

ベースとなるキーボードはPulsarのPCMK。 アルミ筐体で剛性感があり、軽め。ボトムは透明のプラスチック製。滑り止めはかなり優秀な感じ。

裏面は透明なプラスチック

まずはBudgerigarスイッチを配置する。こっちのほうが数が少ない。 これを先にやってしまえば、あとは片っ端からWhite Lotusスイッチを配置していくだけなので確認作業が少ない。

Budgerigarスイッチを載せる

White Lotusスイッチを載せていく。見た目がかわいい。

White Lotusスイッチを載せる

LED点灯確認。 Budgerigarは普通に窓になっていて、White Lotusはディフューザーつき。 White Lotusのほうが輝いて見える。

スイッチ状態でのライト確認

GRAPHTのキーキャップ。 単独製品になっているものに限らず、日本語印字のない日本語キーボードはかなり珍しい。 高級キーボードを使い、かつかな入力を使う層は基本的にかな配列は覚えているだろうから、かな印字はあまりいらないと思うのだけど。

結構マットな感じの白。 触った感触もかなりマットなザラっとした感じ。 印字は昇華印刷によるもので、イルミネーションは透けない。

キーキャップを載せる

158キーという膨大な量を収録したキーキャップで、幅広いJIS配列キーボードに対応する。 スペースとEnterとEscはグレーのキーキャップも付属しているけれど、黒に付属する黄色と違い使いどころはあまりなさそう。

Windowsキーは(私にとってはSuperキーなので)ブランクキーにしたかったのだけど、1.25のブランクキーはなく諦めた。 また、変換キーは1.25しか付属していないので、ブランクキーを使った。

さらにカスタムIDタグを装着。 アルファベットで6文字までなので、候補はHRKMかHARUKAなんだけど、あまりに悩んで決められなかったため、両方注文。 カスタムIDタグは光らない、みたいな話も聞いていたのだけど、実物は刻印は透明になっていて、光る仕様。

カスタムIDタグ

IDタグはマグネットでついていて、しっかりくっついているようだけど、爪を入れて引き上げるとすっと引き剥がせる。 取り付けも近づけただけでパチッと入る。

標準のタグはPulsarのロゴ

そして完成したのがこちら。

カスタムキーボードの完成

ちなみに、ビルドしている途中でEnterにBudgerigarを入れたいと感じたため、Home/EndをWhite Lotusにして、Tab/EnterをBudgerigarに入れ換えた。

眺めて触る

ケースは個性はあるけど高級感はあまりない。 キーキャップがだいぶ高級感を引き上げている感じ。

ケースはシンプルな板。キャップの白さが質感に貢献している

カスタムIDタグ、フォントが地味なのが難点だけど、特別感はある。 IDタグの部分はイルミネーションが独立していて、デフォルトでめちゃくちゃ光る。 文字数が多いほうが光る幅が増えるのでより派手。

カスタムIDタグも光る

高級感がある(実際高級な)キャップ。 マットホワイトという色になっているが、触感もマット。 滑りや艶を感じないものだが、RealForce R2の黒みたいに指の脂を吸われるようなマットさではなく、カサついた指でもまあ許容できる。 触感ではVarmiloみたいな艶のある感じのほうが好きだけど、マットなのも高級感があって良いので甲乙つけがたし。

お値段分の価値があるかと言われると、「5000円前後にして欲しい……」と思いはするものの、色関係なくPulsar純正ではなくGRAPHTにする意味があるかという意味でいうと、アリだとは思う。 それだけ質感は良い。

キーキャップの質感はとても良い

イルミネーションはスイッチの違いが結構出ている。 ケースが゜半透明で、さらにLED部分に半透明のディフューザーがかぶさるWhite Lotusを使ったキーは周りがふわっと光る。 Budgerigarは上にあるキーの一部分が強く光る感じ。基本的にWhite Lotusのほうがキレイ。

文字が透過しないので地味かなと思ったけれど、ラップトップのバックライトみたいな感じでなかなかいい味が出ている。

イルミネーション。White Lotusのほうがぽわっと広がる

スイッチは2種類混ざっているわけだけど、触った感じでは全然違う。

まず、タクタイル感の強さがまるで違う。明らかにBudgerigarのほうが強く、カチッと入る感じがする。 これに対してWhite Lotusのほうが滑らかで、リニアと勘違いするような感覚ではないものの、そっと押し込むとタクタイルポイントを越えたときにBudgerigarが一気に落ちる感じがするのに対して、White Lotusはどこでも止められる感じ。

また、音も違う。Budgerigarが「カタッ」という感じ、White Lotusが「コトッ」という感じ。 White Lotusのほうが静かで、Budgerigarはうるさいわけではないけど響く音なので、押したときは分かる。 ただし、強くタイプして底付きした場合は、White Lotusのほうがカンッという音がする。

ビルドしてるときはEnterが左右方向にかなりぐらつくのが気になったのだけど、実際タイピングしていたら気にならなかった。

ボードはアルミプレートがかなりしっかりしていて、強めにタイピングしても沈み込む感じはない。 個人的な好みとしてはプレートマウントが好き。高級キーボードとしては好まれない面もあるみたいなのだけど、私は剛性は無限に欲しい派なので剛性ガッチガチになるプレートマウントがいい。

2段階のスタンドの角度もかなり良い感じで、私はだいたいいつも2段はスタンド高いほうで使うのだけど、PCMKはデスクとチェアの関係次第でハイもローもあり。 ただ、言い換えるとハイもローも他のキーボードよりちょっと高めなので、合わないって人はいるかもしれない。

タイピング

基本的な感想

やばいくらい良い。

タイピングの上質感が全然違う。Optical Linear V2もIris軸もかなり至高のキースイッチだと思うけれど、こちらはLibertouchみたいな「心地よさ」と「楽しさ」がある。

感触的にはOptical Linear V2に近い。HUNTSMAN MINIのほうは相当心地よいキータッチになっている。 そして、これはそれに劣らぬ心地よさに加えて、それよりも「打ちやすい」。

White Lotusスイッチの抵抗感は非常によい感じで、力を抜いて打つと若干の重さを感じるけど、打ちきれないほどではない。 タイピングに力が入っているときは抵抗を感じないほどスムーズだけど、打ったことははっきりと分かる程度のフィードバックがある。

完璧な理想かというと、もうちょっと、ほんの僅かに軽いと嬉しい。 力を抜いて撫でるように打っているときはタイピング速度が少し落ちる感じがある。 それでも、撫でるようには打てないタクタイルキーボードも結構あるので、不満があるほどではない。

理想的なキーボードに近似と言っていいんじゃないだろうか。 ミスタイプも相当少ない。

例えばIris軸は、打ち心地はよくミスタイプも少ないので非常に良いキーボードではあるのだが、楽しいかというと微妙。 フィーリング自体は楽しいんだけど、書いていてめっちゃテンション上がる、みたいなことはない。

Optical Linear V2は、HUNTSMAN MINIのほうは打っていて楽しいのだけど、HUNTSMAN V2のほうはキーボードの存在感薄めで楽しさはそんなにない。 また、HUNTSMAN MINIのほうは60%キーボードだからなのか、打っていて正確なタイピングのためにちょっと気を遣う。

そこらへんも踏まえると、今私が知っている「良い」キーボードである

  • Libertouchの楽しさ
  • HUNTSMAN MINIの心地よさ
  • Varmilo Iris軸の打ちやすさ

を(すべて超越しているわけではないにせよ)兼ね備えているようなキーボードになったと思う。

10 Fast Fingers

比較としてHUNTSMAN V2 TKLとそれぞれ5回ずつやってのベスト:

Keyboard WPM KS right KS wrong KS total Correct Wrong
HUNTSMAN V2 TKL 76 380 11 391 72 2
Palser PCMK Custom 78 391 0 391 77 0

これだけ見ると圧倒的に今回のキーボードのほうが優れていそうに見えるのだけど実はそんなことはなく、今回のキーボードは速度が一定を上回るとかなりミスタッチが増えて結果が悪化する。 その手前、リズミカルに打てるくらいのペースだとミスが少ないので、ミスの多寡は打鍵速度がある閾値で一気に逆転する感じ。

この意味でタイプミスが非常に少なかったIris軸ほどの安定感はない。

HUNTSMAN V2 TKL
Palser PCMK Custom

どのキーボードでも気に入っているやつならだいたい72〜74WPMくらいで安定するので、そのペースであればIris軸よりも安定している気がする。 キーボードのフィーリングとして、あんまり焦ってタイピングするのには向かない。もっとも、日常でそんな機会はないけれども。

ゲーム

そもそもゲームで使う意図自体がほとんどないのだけど、鳴潮とMUSE DASHで試してみた。

鳴潮はアクションRPGで、この手のゲームとしてはかなり入力が激しい。 使うキー自体は少なく、主にw, q, e, r, 1, 2, 3を押すことになるのだが、忙しい操作で正確に押す必要がある。 今回は特に操作量の多いヴェリーナ/長離/カルロッタ編成で試した。 なお私は回避は右クリックでやる派なので、Shift操作は入らない。

MUSE DASHは音ゲーであり、2レーンというシンプルさながら難易度10以上の高難易度は相当に歯ごたえがある設定になっており、かなり激しいトリルも登場する。 音ゲーである以上は正確な入力が不可欠であり、キーボードのゲーミング性能を測る上では最も良いだろう。

MUSE DASHは私は上をShift, s, d, f、下をj, k, l, .に設定しているため、すべてWhite Lotusになる。

ちなみに、普段は鳴潮はそれぞれのPCの備え付け(つまりVarmiloかRazer)でやっていて、MUSE DASHはDAREUのEK87 ProというUS配列/独自赤軸系リニアスイッチのキーボードでやっている。

鳴潮での違いを明確な指標として出すことは難しいが、従来クリアできていなかったホロタクティクス難易度Ⅵを2つほどクリアできた。 連打するわけではなく、タイミングよく正確に操作することが求められるためね

MUSE DASHは、よっぽどの凡ミスが発生しない限り各曲1回だけトライした。 また、安定させるために慣れている曲をプレイしたが、言い換えれば回数プレイしているだけにスコアは結構詰めてある。 結果は、まずは見てもらうのが早い。

難易度8 FC BEST 99%
難易度8 FC BEST(+0.36%) 99.5%
難易度9 FC -0.28%
難易度9 FC -0.39%
難易度11 -0.25%
難易度10 FC BEST(+0.12%)
難易度10 FC BEST(+0.13%)

もちろん、ベストには遠く及ばない……という曲もあるにはあったが、多くの曲が一発でベスト前後の結果をだしている。 「粉骨砕身カジノゥ」などは今まで3回しかFCしていないけれど今回一発でFCできていたりするし、「Halcyon」はそれと比べるとプレイ回数はかなり少ないにせよ今まで1回しかFCしていない。

難易度8の99%も私としてはかなり良い精度。

ここらへんのスコアは、最近DAREU EK89Proで大幅に更新したものがほとんどで、私には難易度10はそこらの普通のキーボードではとてもじゃないけどFCできる感じではない。 なので、わざわざ普段使わないUS配列のキーボードを持ち出して出しているベストリザルトに近いスコアを一発で出せているため、このキーボードは「ゲーム最強」の予感がする。

目立って感じるのは一番は余裕があること。 難易度10くらいから頻出する複雑かつ忙しいパートはだいたいぐちゃぐちゃっと通してしまっている2のだけど、それをちゃんと認識した上で叩けることが圧倒的に多い。

また、タイミングが通常よりシビアな歯車抜けでミスることが極端に少なかった。

大型の敵の連打もめちゃくちゃ早くて驚いた。 ここはタクタイルで連打するタイミングがつかみやすいからだろうか。

思うに

ゲーミングキーボードはアナログ入力をサポートするかどうがに関係なくホール効果センサーの時代になってきていて、こうした旧来のメカニカルスイッチでのカスタムビルドはゲーミングキーボード界隈ではもう最終シーズンにあると言っていいだろう。

自作キーボード界隈では取り扱いやすさも大事になってくるため、高級メカニカルキースイッチそのものはまだ登場してくるかもしれない。 だが、JISキーボードとなると難しい。自作キーボード界隈ではJISキーボードは需要がなく、パーツがない。

このため、基本的にはホットスワップ対応のメカニカルスイッチを採用したJISキーボードを探し、これを素体としてスイッチ入れ替えで機能させることになる。 今回はPulsarのキーボードキットとGRAPHTのキャップがあったためにカスタムビルドが可能だったが、これはそう長くは続かない話だろう。

だが、この改造による方法も問題がある。 まず、「ホットスワップ対応のメカニカルスイッチを採用したJISキーボード」というもの自体が非常に少ない。 安価なものでも実現自体は可能だが、安価なものをベースにするとベースプレートの剛性など、様々な面で最高のキーボードづくりにはならない。 結局、高級なゲーミングキーボードをベースにすることになるわけだが、それらがメカニカルスイッチよりも独自性が強いキースイッチを採用するようになってくると、「ホットスワップ対応のメカニカルスイッチを採用した高品質なJISキーボード」はさらに遠のく。

結果的に、「理想のJISキーボードをビルドする」というのは、本当にわずかな期間しか実現できないものである可能性がある。

例えそれが一般的なライトタクタイルのキーボードと大差ないと感じることがあったとしても、あるいは今後出てくる新しいアクチュエーション機構とセンサーを持つキーボードのほうが素晴らしいと感じることがあるとしても、ロマンを追い求めて高級軸3を搭載した高品質なJISキーボードをビルドできる機会は最後かもしれない、と思えばやらずにはいられない。

じゃあそんなロマンを追い求めた結果は実際どうだったか。

まず、パーツがひとつずつ届いて揃っていく感じは、もどかしくも楽しかった。 自作PCを作るときと似た感じ。 もちろん、その構成を考えている時間もだ。

ビルドもなかなか楽しい。ここまでの苦労が形になっていく感じがして充実していた。

カスタムIDタグも、完成の証にプレートをはめるような感じで、なかなか良い。

総コストとしては25000円くらいなので、かなり高級なキーボード並だけれど、私はその価値はあったと思う。 もしかしたらHEキーボードのほうが安くて、より良いものだと感じたかもしれないけれど、それでもだ。

一度は経験しておいてよかった。 このキーボードでCherry MX時代にお別れを告げるのは全く悔いが残らない。

配置だけれど、一応とりあえずはこのままワークルームはVarmilo、寝室がRazer、17インチIdeaPad(ワークルームのサブ備え付け)がPulsarで行こうと思っている。

メイン環境は後傾姿勢という特殊性もあって、Varmiloがとてもちょうど良くて変える必要がない。 じゃあ寝室かワークルームサブかっていう話になるんだけど、本来寝室ってそんなに激しくタイピングする場所ではないし、今現在の私の状況が多くの時間をワークルームサブで作業する状態になっているので、こっちにいいキーボードが欲しい。 ワークルームサブは60x100cmのスタンダードなデスクになっているのだけど、奥にアーム類を設置していることもあって17インチラップトップを置くとさすがにスペースがなく、フットプリントが標準TKLとして最小に近いという点も採用する理由のひとつ。まぁ、そこはVarmiloもRazerもあまり変わらないけれど。

ワークルームサブは将来的により高性能なデスクトップPC(現在のメインPCよりも高性能なsemi-headless)を導入するつもりでいて、それが実現したらそれのキーボードになると思う。

ここからさらに改善するなら2点。

まずスペースにWhite Lotusを入れたけれどかなりかちゃかちゃする感じがある。 ここは若干重めのリニアスイッチとかあるといいかもしれない。 どれかのキーと交換してBudgerigarにしてもいいけど、重くしたいわけではないのでどうだろう。

ShiftはWhite Lotusでもまだ重い。 ほとんどの人はそんなこと考えないと思うのだけど、JISかな打ちだとShiftの押し離しが激しいので、入力タイミングの合う合わないはかなり重要になる。 ここだけ赤軸系のスイッチを入れたい気持ち。EK87Proとどこかのスイッチを交換してもいいかもしれない。

ちなみに、「Shiftを軽くしたい」は私が昔からキーボードをカスタムしたいと思っていた最大の理由。

とりあえず今の手持ちでやってみた。

AltとSpaceを交換、ShiftをDreamスイッチに

Altに若干重さを感じていたため、AltとSpaceを交換。 そしてEK87ProのPauseキーからDreamスイッチを持ってきた。

Dreamスイッチに関してはちょっと難儀した。 外すのがめっっちゃくちゃ固い上に、スイッチのケースが弱くて歪んでしまう。 スイッチのクオリティはあまり高くないかも。 ちゃんとやるなら、TTCのFrozen Silent V2あたりにしたい。

多少よくなったのだけど、Shiftはもっと軽いほうがいいし、スペースもリニアスイッチのほうが良い。 ShiftはFrozen Silentでいいとして、スペースはWuque Studio Pearlだろうか。 1個のために導入するのは相当な贅沢だけれど。

まとめ

  • キーボードをビルドするのは楽しかった
  • 25000円ほどかかったが、結構満足している
  • まだ完璧ではないので、さらなる改良は可能
  • 「楽しい」「心地よい」「打ちやすい」が、それぞれベストではないがその全てを持ち合わせたキーボードになった
  • 狙ってなかったけどゲーム最強キーボードになった
  • この先もうこんなことはできなくなるかもしれない今だけ許された楽しみ方

  1. KeychronはMac向けになっているため慣れ親しんだ91キーのキーボードとは違う配列をしているのでちょっと苦手だが↩︎

  2. MUSE DASHは「押しすぎ」に対するペナルティがない場合が多いため、よくわからない部分はぐちゃぐちゃっと押せば通せてしまったりする。↩︎

  3. メカニカルスイッチは安いもので1個15円くらい。本当に高いものだと1個120円くらい。1個80円はなかなかの高級軸。↩︎