序
私が知る限り、現在販売されているホットスワップ対応のJIS配列キーボードは
- Keychron 各種
- RK ROYAL KLUDGE M87 (TKL)
- mongeese KB820 (75%)
- LEOPOLD FC-BTシリーズ各種 (65%/TKL/フル/フル+)
- iKBC CD108 (フル+) / CD87 (TKL)
- Turtle Beach Vulkan II TKL (TKL)
- FILCO LUCE60 (60%)
- Pulsar Gaming PCMK TKL Mechanical Gaming Keyboard (TKL)
である。 このほか、なんちゃってJIS配列1のキーボードは存在するが、ちゃんとキーが揃っているのはこれだけだ。
このうち、Keychronは散々だったし、Vulkan II TKLはおもちゃレベルだった。
さらに、一番まともなPCMKがベアボーンが終売、Pre-built版がわずかに残るだけという状態。 いよいよJISキーボード暗黒期だ。
ちなみにLUCE60、重量的にも説明文的にもあんまりしっかりした構造ではなさそうなので、ちょっと期待もてないかなと感じている。ABSキーキャップなのもそう。 なんか現代の文脈のキーボードって感じはあまりしない。
そうして私が静音キーボードをビルドをするにあたりベースボードがない、ということにとても悩まされていた。 一番有力なのはPCMKのプレビルトを買うことだが、PCMKも3台目になってしまう。し、PCMKは別に静音寄りのボードではないので静音キーボードをビルドする選択肢としては微妙。
現状選択肢は皆無ではないけれど、あまり有力ではないというのが現実なのだ。
しっかりした構造をしているのだと、LEOPOLDのものが良さそうだが、BluetoothとUSB-C接続で2.4GHzはサポートせず、また乾電池式だ。 USB接続ならバッテリーなしでも動きそうなので、有線接続専用と割り切ればいいのだが、LEDバックライトがないというのもちょっと気になる部分。かな印字なしモデルがあるのは良いことだけど……
iKBCのキーボードは情報が皆無なので本当に謎。 CD87で1100gあるらしいので、中身は詰まってそうなのだけど、筐体の中身が全くわからない。
そうして悩んでいたら気づいた。
Impact 80のJIS配列が出ている。
物語
JISキーボード誕生がそれほど大事な理由
まず前提として、JIS配列というのは世界的に珍しい物理的にUSキーボードと互換性のない配列であり、ほとんどのキーボードがUS配列と互換性があるということは日本人で詳しい人以外はJIS配列を理解しがたいということでもある。
このため、ちょっとしたモディファイではJIS配列キーボードは作れないため、わざわざ「日本市場専用に製造する」必要があり、しかもそこにJIS配列事情に詳しい日本人が関与しないとなんちゃってJIS配列が誕生するという問題がある。
だから、まともなJIS配列キーボードというのは生まれにくく、日本のキーボードメーカーが世界で戦えるキーボードをあまり作らないという状況になる。 世界は日本を見ないし、日本は世界を見ない状態だ。
Impact 80は新興メーカーSmackApeのキーボードで、日本ではインポーターショップのKIBU SHOPが取り扱っている。 そして、KIBU SHOPはあの人気キーボード、WOBKEY Rainy 75のJIS配列を誕生させたショップである。
この手のインポーターショップといえばVermiloを取り扱うふもっふのおみせが有名だろう。 メーカーとしては存在しないVermiloのJIS配列キーボードを販売していたのは、メーカーとのコミュニケーションの賜物だと言える。 つまりはショップの手柄だ。
Rainy 75のJIS配列誕生も、同じようにKIBU SHOPががんばったものと思われる。 ただ、この手のやつは継続的に生産してくれるわけではないことが多く、ずっとあるものではない。 ほしいならお早めに、だ。
そして今気づいたが、限定生産ではあるがCrush 80の日本語配列キットのセットが売られている……
Impact 80
Impact 80の日本語配列、という話に私は大変な衝撃を受けた。 なぜならば、Impact 80は私が静音キーボードをビルドするときに「理想的なキーボード」と考えていたものだからだ。
そのとき、Impact 80には日本語配列がなかったのだが、とりあえず静音キーボードをビルドすることで望ましい構成を考えることから始めた。 その結果たどり着いたのがImpact 80だった。
Impact 80を簡単に言い表すと、「全部入りのキーボード」だ。
ABS筐体。 シリコン製ガスケットによるガスケットマウント。 4層静音フォーム。 プレートはPC(ポリカーボネート)またはFR42。 ホットスワップ対応。 厚みのあるPBTダブルショットCherryプロファイルキーキャップ。 USB-C/Bluetooth (5.0)/2.4GHz接続。 VIA対応。 ARGBサイドライティング。
FR4プレート、なかなか珍しい気がする。
静音キーボードをビルドする上でこれこそ理想的だと思う。 けれど、US配列しかなかったので、当時はKeychron V3 Max JISを購入した。 その顛末は以前の記事で話した通りで、Frozen Silent V2スイッチは載らず、計画は失敗に終わった。
そんなImpact 80だが、2025年12月15日にJIS配列版が発売されていたらしい。
なんということだ! Vulkan II TKL買う前じゃん!
Impact 80は3グレード構成で、
- Standard - PCプレート/4000mAhバッテリー/BSUN Polarスイッチ
- Pro - PCプレート/4000mAhバッテリー/Cheeseスイッチ
- Ultra - FR4プレート/8000mAhバッテリー/Kailh Frost Blueスイッチ
となっている。 例外として、Ultraのバリエーションとして、PCプレート、Cheeseスイッチのモデルもある。
カラーバリエーションはUS配列と異なり、
- Sunset - Standard
- Mist - Pro, Ultra
- Black - Ultra, Ultra (PC/Cheese)
- Forest - Ultra
となっている。
US配列のカラーバリエーションの違いとして、US配列はMistがStandard、SunsetとForestがPro、BlackがUltraだったというのと、UltraのBlackはサイドプリントシャインスルーだったのに対して、JIS配列版ではStandard/Pro同様のトッププリントになったというのがある。 これに伴って、US配列のBlackはグラデーションカラーの紫っぽいものなのに対して、JIS配列はStandard/Pro同様の3色構成のものになっている。
このあたりのキーキャップの違いはUltraを分けるポイントだったので少し残念な気はするけれど、JIS配列版Impact 80はかな印字の主張強めのものになっているので、Ultraは印字に困ったというのもあるのだろう。
大容量バッテリーを搭載し、さらにグレードでバッテリー容量にも差があるので、ワイヤレス利用を中心に考えたモデルなのかなと思う。
3つのグレードの違いはバッテリー容量、プレート素材、スイッチ。 特にStandardとProの違いはスイッチしかなく、UltraにProと同じスイッチとプレートのモデルがあることから、プレート素材とスイッチで作り込んだものと思われる。
私は静音ビルドのためのベースボードとして買っているのでちょっと申し訳ない気持ちだが、本記事では標準状態でのレビューをして、後日静音ビルドでのレビューをしようと思っている。
表記上の重量は1100g。 やや重いくらいの部類。
実機レビュー
眺める
購入したのはUltraのBlack。 静音ビルド素材なので、響きにくいPCプレートのほうが良かったような気もするけど、そこはあまり深く考えてなかった。
めちゃくちゃ質感が良い。中身が詰まっているという感じで、恐らくケース内の剛性メンバーが多いためにABSケースとは思えないくらいものすごくしっかりしている。 前後方向、つまりスペースキーの下あたりを押すとさすがにたわむけれど、上から押しても横から押しても変形はナシ。しっかりしている。
ケースは表面が加工されていて、その意味でも質感が良い。
ブラックの色は特別良いわけではないかな。配色は良いと思うけど、塗装は普通だと思う。 感触はわずかにざらっとした程度。ざらついて乾燥した指が痛いということもないし、滑るというわけでもない。良いと思う。 かな印字は主張強め。
キーキャップのプロファイルはCherry。
キーキャップを外すとかなりこだわって作られていることが伝わる。
クズが結構出るけど、加工が雑なわけではない。 クリーンアップの問題だろう。
Front Blueスイッチは恐らく単品販売はされていないもの。 あまり高級そうな感じはしない。
重量は実測1123g。 ずっしりと重量感があり、あまり持ち歩きたい重さではない。
参考までに他のキーボードの実測値は
- DAREU EK87 - 809g
- Razer HUNTSMAN V2 TKL - 699g
- Varmilo VA - 1036g
- Pulsar Gaming PCMK (Graphtキーキャップ) - 800g
- Keychron V3 Max - 1024g
- Vulkan II TKL - 590g
である。
ライティングはものすごく多彩。 普段見えるところではないが、サイドライトも綺麗。
タイピング
キータッチがすごい独特。まるで油圧がかかっているような、にゅぅぅぅぅんという動きをする。 エンターキーが特に顕著で、重いというか、ゆっくり動く。
力がいるというより時間がいる。 アクチュエーションポイントはそこまで深くないので、タイプしていてボトムアウトしにくい。
別に重くはないので、リニアスイッチで軽すぎてスコッといっちゃうのは苦手だけど、重いリニアスイッチも苦手、みたいな人にはいいのかもしれない。 スムーズでないという意味ではないんだけど、なんか遅い。
音はまぁ、割と落ち着いているほうかな。多分、自作キーボード界隈ではthocとか言われるやつだと思う。 ただ、私としてはちょっと高いと思う。このあたりはやはり静音スイッチのほうが音質的にもジェントルでいいと思うんだ。
結果としてはかなり速いけど、フィードバックが曖昧でミスタイプが多くて快適ではなかった。
うまく打てるときはいいんだけど、キーが離れててキー位置を探らないといけないときに隣のキーを押してしまいがち。ちょっと手元をみたい感じがした。
にゅっとした感覚があまり良くないのかもしれない。
トータルとしては…… キーボード標準のスイッチとしては悪くないと思う。CherryやGateronのデフォルトのシリーズを載せているようなものと比べれば、ずっとこだわりは伝わってくる。 けれど、カスタムスイッチと張り合うにはちょっと物足りないかな。みんなそれぞれベストを追求したらこのスイッチにはなりにくいかなという感じ。 65〜70点くらい? 「悪いわけじゃないんだけど……」という感想になる。
じゃあそれを支えるキーボードに関して何か感じるかというと、硬いってことかな。 ふにゃふにゃした感じは全然ない。むしろ相当剛性あるなって感じ。 タイピングをめちゃくちゃしっかり受け止めてくれるし。
ちなみに、押し込んでもたわむ感じはほとんどない。 V3 Maxもほとんどたわまないくらいしっかりしているので、ガスケットマウントだからといってぐにょんぐにょんなのは今の流行りではないのかもしれない。
ここがPCプレートだと変わるのかっていうのはちょっと気になるかもしれない。 でも剛性部材としてのプレートへの依存度はそんなに高くなさそうなので、めちゃくちゃ変わることはないんじゃないかという気がする。
あと、Cherryプロファイルは薄いな、と改めて思った。 私はOEMプロファイルのほうが好き。
ゲーム
いつも通りMuse Dash。
難易度9で-0.3~-0.5%付近、難易度10で-1%付近なので悪くはないものの、忙しいところで遅れたりミスったりが多くて良いともいいにくい。
忙しいところで遅れやすいということで、難易度11では-5%前後と明らかに良くない。
今回は先代ベストであるFrozen Silent V2との直接比較が可能だが、やはり明確な差がある。
ゲーミングキーボードのスイッチとしては「適」くらいかな。 タイピングスイッチとしての評価よりちょっと低め。60〜65点くらい。 ゲーミングキーボードとしてお求めならおすすめはしないくらい。
機能的には普通に使える。
ちなみに今までのキーボード評価は?
| キーボード | タイピング | ゲーム |
|---|---|---|
| RealForce R2 | 🫤 | 🫤 |
| Libertouch | 🙂 | 😣 |
| UltraClassic | 🙂 | 😣 |
| EDGE 201 | 😡 | 🫤 |
| HUNTSMAN TE | 🫤 | 🙂 |
| HUNTSMAN Mini | 😀 | 🙂 |
| HUNTSMAN V2 | 🙂 | 🙂 |
| Varmilo VA | 😀 | 😐 |
| PCMK/White Lotus | 😆 | 😆 |
| V3 Max/Prestige Silent | 🥰 | 😆 |
| PCMK/WS Pearl | 😆 | 🥰 |
| Vulkan II TKL | 😠 | 😠 |
| Impact 80 Ultra | 🙂 | 😐 |
| Impact 80u/FSv2 | 😄 | 😄 |
| Impact 80u/RS | 🥰 | 🥰 |
総評
今買えるホットスワップ対応JISキーボードの中では間違いなくベストな品だろう。
ただ、UltraのFrost Blueスイッチはタイピングでもゲームでもいまひとつ輝かず、標準状態では魅力は限定的だった。
しかし、本品はホットスワップに対応しているため、スイッチ交換によってもっと魅力的なキーボードにすることができるだろう。