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Vulkan II HS 〜 商品写真に反しておもちゃみたいなチープ

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今回の話題はTurtleBeach Vulkan II Amazon.co.jp限定 ホットスワップ版である。

このキーボード、すごく存在がわかりにくいものなので解説していこう。

まず、Roccatというアメリカのゲーミングギアメーカーがあった。 そのRoccatが出していたのがVulkanというキーボード。 キーキャップが薄く、ライティングが横から透けているのが特徴だ。

そのRoccatはTurtleBeachという中国のゲーミングギアメーカーに買収された。 このため、Roccat VulkanとTurtle Beach Vulkanがある。

Vulkanはかなりバリエーション豊かなので、バリエーションによって両方あるやつ、Roccatしかないやつ、TurtleBeachしかないやつがあったりする。

そして、その進化版として登場したのがVulkan II。 こちらはTurtleBeachとして出されているのだが、なぜか一部Roccatで出されているものもある。

JIS配列のラインナップとしてはVulkan II TKL Pro, Vulkan II Max, Vulkan II TKL Amazon.co.jp限定版の3つ。 だが、これらは全部仕様が違う。

まずVulkan TKL Proはオプティカルセンサーを用いたTitanスイッチを使ったゲーミングキーボードだ。 対して、Vulkan II TKL Proはホール効果センサーを用いた名前のないスイッチを使用している。 ちなみに、Vulkan II TKL Proが公式サイトに掲載されている唯一のVulkan IIである。

Vulkan II Maxは仕様はほとんど変わっていないが、光学式のTitan IIスイッチを採用している。 何が変わったのかは不明。

そしてAmazon.co.jp限定販売のVulkan II TKLはホットスワップに対応したTitan HSスイッチを採用する。 Titan HSスイッチは金属接点を持つメカニカルスイッチだ。

一応、Vulkan IIを名乗るキーボードはソフトウェアにSwarm2を使うという共通点があるのだが……これについては後述しよう。

というわけで超わかりにくいのだが、Amazon.co.jp限定で販売されているVulkan II TKLは希少なホットスワップ対応JIS配列キーボードという特徴を持っている。 私はこのキーボードを普通のキーボードとしてビルドするために用意したが、とりあえず素の状態を今回はレビューしよう。

眺める

薄いキーキャップがあまりにも特徴的だ。スイッチが完全に露出しており、透明なスイッチであるために光り輝く。

…………はずなのだが、そうでもない。 光源がスクリーンもなにもないLED素子剥き出し、スイッチ側もディフューザーとかも特にないので光が広がらない。 すでにちょっと嫌な予感がする。

手前から見た様子。光の広がり方はそんなでもない

下段キーレイアウトがちょっと変わっていて

  • 1.5U Ctrl
  • 1.25U Win
  • 1.25U Alt
  • 1U 無変換
  • 3.75U スペース
  • 1U 変換
  • 1.25U ひらがな
  • 1.25U FN
  • 1.25U App
  • 1.5U Ctrl

と短めスペースを採用。4.25Uのキーボードに対してCtrlを1.5Uに拡張している分スペースが0.5U削られた形だ。入手は絶望的なので、交換用キーキャップは少し小さいShiftなどで代用するしかないだろう。

あと、省略されているのがAppではなくAltというのも珍しい。 Appキーってそんな需要あるか? ……調べたら、ほとんどの人には全くないが、一部の人にはすごくあるらしい。ショートカットキーは使いたくないが、マウスの右クリックするのも嫌という層。 ……なかなかクセの強い層だ。

こちらは後述するようにSwarm2で右Altに割り当てることは可能。 ただし、別のキーボードを用意して接続する必要がある。

ノブに占領されて右上3つのキーがなくて、FNを伴う形になっている。P, @, [がそれぞれ右上キーのFN割り当て。 prtPc以外は使わないという人が多いだろうから別に悪くはないと思う。私はpauseをHyperにしているから影響はちょっとあるけど、ほぼ使っていないので気にもならない。

天面はヘアライン加工してあってなかなか質感は良いけれど、全体で見るとボトムはすーごい安っぽいプラスチックで薄くて軽いので、全体で見るとチープ。 これはちょっとびっくりする。

重量は実測590g。これは軽い。 肯定的な意味の軽いではなく、中身が入っていないチープな軽さ。印象は悪い。

中身の入っていない軽さ

特にガスケットマウントというわけではないのだけど、吸音フォームの効果か押すとそれなりに沈む。

ノブはいい感じ。回すときのクリック感も質感良い。

ライティングは商品写真だと印象的だけど、普通の姿勢だとキースイッチが露出して見えるような角度にはならないので、せいぜいキャップの側面が光っている程度の見え方になる。 それはそれできれいだけど。

トップから見た様子

キーキャップは非常に薄いが、ダブルショット。

キーキャップはぺらっぺらのダブルショット

キーキャップのレイアウトとしては高さは一定だけれど、奥側が低くなっている。 トップはそこそこ深いシリンドリカルだから、トップはフラットさは全くない。

桁は一緒、トップは傾きとくぼみがある

スイッチは透明なハウジングの3ピン。 だいぶ簡素で安っぽい。 ちなみに、上側に全然爪が入らないので、ものすごく外しにくい。

Titan HSスイッチ

タイピング

すーーーーっごいチープ。

カチャついた音もさることながら、キートップの感触がおもちゃみたい。 さらに、むにゅっとしたリニアスイッチの押し心地がそのチープさを加速させる。

すごく、おもちゃっぽい。

だから体験としては悪い。

ただ、思ったよりは打ちにくくない。 フラットなのでもっと打ちにくいのを想定していたし、もっとタイプミスすると思ったけど、タイプミスはそんなにないし、そこまで探り探りにはならない。

キーの高さ自体は同じなのだけれど、キーキャップが奥のほうが低くなっている関係で、シリンドリカルなんだけれどもキーの奥側に落ち着くポイントがあるスフィリカルっぽい感じがあって、キーの中心がどこにあるかは指でわかる。 だから、そこまでタイプミスに対して繊細な感じはしないし、横はともかく縦の複数押しのミスは少ない。

シリンドリカルのくぼみ具合もいい感じ。

だから思ってたよりはずっと普通に打てる。

打てるけど、打ちやすくはない。 フラットだから1段目が本当に遠い。かな打ちだと1段目は普通に高頻度にタイプするキーなので、手を浮かせて手ごと移動させていかないとちゃんとタイプできない。

このあたりは英文だと気にならないところで、10FastFingersはちょっと探りながらだからそんなに成績がいいわけではないけど、悪くもなかった。

良くはないがひどくもない

指のひっかかりに関しては、キーキャップが薄いことに起因する問題はないけれど、一般的なキーキャップよりもキーの奥と上のキーの手前の段差が大きいので、上のキーのエッジに引っかかるということはある。

キーキャップ起因というより、スイッチのほうが打ちづらいかもしれない。 渋い重さがあって、スピード軸というより黒軸っぽい感じ。 アクチュエーションポイントは浅いけど、浅く打てるようなスイッチでもないので、無駄なストロークを感じる。

ゲーム

あまり良くない。 重さとつかみにくいストロークがそのまま出る。

Muse Dashでは、トリルを必要としない9くらいなら悪くはないけれど、密度の高い11だと追いつかない。 そして疲れるのが早く、11だと後半崩れてしまったりする。

鳴潮でも割と操作しにくいように感じた。

これで「勝利のためのキーボード」は時代を間違えている感がある。

Swarm2

私はRoccatのマウスを使っているのでメインPCにはSwarm2が入っているのだけど、まずこの時代にWindows専用プログラムを用意していることに疑義を投げつけたい。

さらにいえば、同じような違うアプリケーションでそれぞれ対応デバイスが違うということにもだ。

そして、スクショすらまともにないので謎に包まれている。

Swarm2のトップ画面

実際のところ、見た目は良いし機能も良いが挙動はあやしい。 スクロールしないといけない表示なのに、ウィンドウサイズによって表示量が増えるのではなく表示全体が伸縮するよくわからない挙動。

キーアサインの変更はFN状態も含めてできるのは交換が持てるのだけど、リマッピングが「キーを押してください」になるのは最悪。 そのキーボードにないキーを割り当てられないからだ。

このリマッピングはキーコードが入力できればいいので、他のキーボードを接続することで設定することはできる。 ちなみにこれはこれで、左ALTがALT (L)表記なのに対して、右ALTはRIGHT ALTになるというよく分からない仕様。

RIGHT ALTを割り当て

ダイヤルへの割当は不可。

プロファイルは5つ。切り替えは簡単。

プロファイル機能

UIの日本語は若干怪しい。

気になるので開けてみた

なんでこんなんなんだ? と思い開けてみた。

本当に中身がない

下側の爪がはずれないので上側だけ開けたけど、中身としては「アルミプレート→PCB→うっすいぺらぺらシリコン」という3層構造。

シリコンにたわむだけの厚みはないので、たわみは単にボディ剛性が足りなくてたわんでいるだけのようだ。シリコンは静音性というより、底打ちのショックをやわらげる用だろうか。 というより、キーボードの下に空間があるので、このシリコンは衝撃をやわらげる役割もしていない。入っているだけで意味はなさそう。

アルミプレートとPCBは16本のネジで強固に連結されているので、アルミプレート自体は剛性部材として機能している。 が、アルミプレートがやわやわすぎるのだろうか。

まぁ、ただ単純に「剛性不足」と言い切ることはできなくて、多少たわむくらいの剛性感は硬すぎず良い、と言えなくもない。

ベースボードとしても失格

もともとスイッチとキーキャップを取り替えるつもりでいたのだが、だめだった。

できないという意味ではなく、Frozen Silentを搭載してもカシャカシャと音が響くし、感触もとても悪いので、良いスイッチを載せる価値がないという意味。 スイッチの良さを殺してしまう。

キーキャップを替えてもチープな打ち心地が残ってしまう。

総評

チープ。すごいチープ。

高さが同じキーキャップはそれほど違和感ないけれど、タイピングのしやすさで言えば普通のプロファイルのほうがいい。 EDGE 201で感じたようなとてつもない打ちづらさは感じない。

スイッチはあまり良くない。 アクチュエーションポイントは浅いが重いスイッチで、快適ではない。 ロープロファイルのリニアスイッチのストロークを引き伸ばしたような感じがする。 Vulkan II TKLはホットスワップかつ金属接点なのでシリーズの他の製品とは異なるスイッチだが、もし他の製品も同じようなフィーリングだとしたら、スイッチを交換可能なVulkan II TKLが一番正解ではある。

TKLだけど薄くて軽いので、携行用にビルドしたいなら結構いい選択肢の可能性がある。

キーキャップの交換を考える場合、イルミネーションの問題は正直思ったほどではないと思う。 北向きライトなので手前から見てスイッチ全体がギラギラしている感じはない。 ただ問題は3.75Uのスペースバーと、1.5UのCtrlが入手できるか。

値段相応は絶対にないと思う。