Chienomi

静音JISキーボードを極めろ! Frozen Silent v2 × Rabbit Silent

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Impact 80の記事の後編だ。 いよいよ静音キーボードをビルドしていく。

ずっと用意されていたけれどビルドできずにいたFrozen Silent V2スイッチ。 さらに新たにRabbit Silentスイッチを追加した。

Frozen Silent V2スイッチは50個、Rabbit Silentスイッチは60個。 周辺キーを他のスイッチに当てれば2台ビルドすることは可能だが、静音キーボードの場合同等に静音なスイッチで固めないと静音キーボードとしての価値が損なわれてしまうのでそれはできない。 だからこの2種類のスイッチで1台をビルドする。

となると必然的にこの問いになる。 Frozen Silent V2とRabbit Silent、どちらが優れた静音スイッチなのか――――

スイッチ紹介

TTC Frozen Silent V2

半透明のハウジングを持つTTCの静音スイッチがFrozen Silent V2。

TTCはこれまでも積極的に静音スイッチを出してきたが、静音度合いは普通というか、よくありそうなレベルにとどまっているものが多かった。 対して、Frozen Silent V2は極めて静かなスイッチであり、最も静かなスイッチの候補となるものだ。

そして、意外と変わったスイッチでもある。 リニアタイプでプレトラベルは2.0mmと普通なのに対し、総トラベルは3.5mmととても短い。 作動押下圧は39gfと非常に軽い。ボトムアウトも43gfでとても軽い。

つまり、基本的にボトムアウト前提でタイプするスイッチ。 そして、ボトムアウトの感触まで味わうスイッチだと思う。

単品145円くらいするかなり高級なスイッチ。

TTC Rabbit Silent

2023年に発売されたTTCの新しい静音軸。 卯年の旧正月に合わせて発売されたのでRabbit。トップハウジングにかわいらしいうさぎのプリントがされている。

トップハウジングが半透明なモデルと、ステムが透明なモデルのバリエーションがある。

Frozen Silentで静音スイッチのコツを掴んだのか、Rabbit Silentも極めて静音なリニアスイッチとなっている。

単品160円くらいでFrozen Silent V2より少し高い程度なのだけど、セールでの下がり幅が非常に渋くて実際は本当に高いスイッチになっている。 私が知る限り最も安いタイミングで90円くらい、私が買ったときは約100円。

作動押下圧42gf、プリトラベル1.2mm、総トラベル3.8mm。 スピードタイプのスイッチだ。

フィーリングと静音性

Frozen Silent V2はスペックだけでなく感触も変わっている。 リニアスイッチだが、押し始めにカクッとした感覚があり、ボトムアウトはむにゅっと優しく受け止めてくれる。

対してRabbit Silentは普通にリニア軸だ。 いや、「優れたリニア軸」と言ったほうがいいかもしれない。 淀みなく、吸い込まれるようにストロークし、ボトムアウトはピタッと止まる。

静音性の比較は少しむずかしい。 とりあえず比較用にPCMKに載せてみる。

スイッチ単体で押した場合、明らかにRabbit Silentのほうが静か。 でもタイピングするとFrozen Silent V2のほうが静か。

おそらく、スイッチ自体はRabbit Silentのほうが静かなのだが、Frozen Silent V2のほうが衝撃吸収性が高いのだろう。 音質的にFrozen Silent V2のほうが低いというのもあって落ち着いていて響かない。

こちらの動画で音を比較している。 動画はJKLがRabbit Silent、SDFがFrozen Silent V2である。

Frozen Silent V2はスペック上は激軽だが、実際はそうは感じないし、実際ミスタイプは少ない。

Rabbit Silentはスッと入る。ものすごくスムーズ。

Frozen Silent V2を選択……?

メインスイッチにはFrozen Silent V2を選択した。

そもそも目指しているのが静音キーボードであり、Frozen Silent V2スイッチを使うために準備していたから、というのもある。 Rabbit SilentがFrozen Silent V2よりも静かならRabbit Silentでビルドするつもりだったが、Frozen Silent V2のほうが静かだったのでFrozen Silent V2を選択。

また、感触という意味でも、ちょっとタクタイル感を感じてボトムで優しく受け止めてくれるFrozen Silent V2のほうが好みだった。

ただし、Rabbit Silentも「ものすごくスムーズ」という美点がある。 スムーズさだけなら他に選択肢もあるのかもしれないけど、優れた静音性という武器がありながら、それを前提にせずともスムーズさだけで戦えるような素晴らしいスイッチだ。

音量的には、V3 MaxのほうがFrozen Silent V2は静かだった気がする。 ただ、V3 Maxにはちゃんとスイッチがはまらなかったから、V3 Maxにビルドするという選択肢はない。 あと、V3 Maxはスペースキーがすごいうるさいので、スタビライザーが入っている部分がとても静かなImapct 80のほうがトータルでは良さそう。

やっぱりRabbit Silentを選択

というわけで1回Frozen Silent V2でビルドしたのだけど、翌日、よく考えたらRabbit Silentのほうがいいかもと思えてきた。

そもそもの話として、Frozen Silent V2でビルドしようとしたときは無音に近い静音キーボードが欲しいという明確な状況があった。 ところが、現在はその状況のほうが解消されてしまい、無音に近いキーボード必要としなくなった。

なので、音量差を踏まえてFrozen Silent V2を選択……ということ自体は合理的な判断なのだけど、そうしなければならない理由は今はない。 となると、音量以外の部分の評価を踏まえないといけない。

Frozen Silent V2のコトコトした感覚はとても好きだ。 ただ、その感触はPrestige Silentと結構似ている。 そうなると、Prestige Silentのキーボードがある今、Frozen Silent V2をフィーリングで選択する動機はやや低い。 もちろん、違いはあるし、より静かなのだからFrozen Silent V2でビルドする動機そのものはあるのだが、相対的に下がってしまった。

それりに対してRabbit Silentはものすごくスムーズなリニアスイッチであるという特徴がある。 もちろん、Prestige SilentもWS Pearlもリニアスイッチなのだけど、Prestige Silentはちょっとコトコトする感覚があるし、WS Pearlはばいんばいんする独特なフィーリングなので、素直に普通のリニアスイッチという感じのものがない。

その意味で、今ビルドするならRabbit Silentのほうがバリューがある。 Rabbit Silentの淀みのないリニアフィーリングは相当魅力的だ。

それと、Impact 80 Ultraのフィーリングとしては非常にしっかりしているというものなので、むにゅっとしたFrozen Silent V2よりもRabbit Silentのほうが性格的に合いそうだという気がした。

Impact 80 × Rabbit Silent

タイピング

Kind of 最高。

基本的にはマイルドスピード軸の感覚だと思うのだけど、沈み込みに節度があって軽すぎる感じはない。 オンオフで動作するような感覚ではなく、滑らかに沈んでいくのがよく分かる。それでいて重さや抵抗感はない。

リニアスイッチの理想型だと思う。

しっかりしたImapct 80との組み合わせが良いのではないかというのは当たっていて、しっかりと受け止めてくれるボードに上質で滑らかなスイッチはしっかりと性能を引き出せていて、素晴らしい。 このフィットに関してはPCMKよりも良い。

入力速度、タイプ精度いずれも非常に良い。 ただしスピード軸であるということもあり、力をかけてしまうとミスタイプを防止するのは難しい。 この特徴は、10fastfingersでは明確に出た。

苦労の詰まった10ff

この成績は良好だが、ミスタイプなしにしようとするとスピードが落ちるので相当苦労した。 ぶっちゃけ、この結果を出すのに2時間ほどかかった。

余談だが、10fastfingersでのテストをやめ、自作しようかと思っている。 10fastfingersは出題される単語によるブレが非常に大きく、運ゲー要素が強い。 さらに、判定の関係で試行回数が相当必要で、テスト結果を出すために何時間もかかることが少なくない。 さらに、何時間も試行している関係上、良好な成績が出たときということになってしまい、キーボードによるブレよりも運と試行回数によるところが大きくなってしまう。

このあたりをうまく計測できる方法を新たに開発する必要があるかもしれない。

それにしても、thoughとthoughtとthroughを入れるのは本当にやめてほしい。 タイピングより認知に時間がかかるし、よりにもよって打ちにくい文字列だ。

それと、音。

動画がここにある。 聞いて欲しい、この音を。

Rabbit SilentはFrozen Silent V2よりは音がするとはいえ、かなり静かな静音軸なのだが、静かな空間では小さいながらもはっきり聞こえる音で、すごく落ち着いた音がする。 世の中では割とカチャついた音をthocと呼んでいるようだけど、「深い音」というのはこういう音のことを言うのだと思う。

タイピング (新メソッド) (そして失敗する)

10ffがあんまり参考になっていないのと、完走するのがとてもつらいので、それ用に作った。

これについての詳細は後日にするとして、今後はタイピング速度の計測はこれの “chienomi” を使っていく。 “chienomi” テストはChienomiおよび私関連の語と、私がよくタイプする語で構成されている。

試技は5回固定で、KPMのbest, worst, meanと誤打数のmeanを掲載する。

試技前のキャリブレーションが許可される。 これは、そのキーボードで安定する速度を探るもので、限界速度付近だと大量のミスが生じ、結果がやや指運に頼ることになる。 このため、あまりにも詰まるようであればリセットしてやり直し、安定して完走できるようになったら再度リセットして試技を開始する。 試技開始後はリセットしない。

今回は初回なので、主要なキーボードでの結果をまとめて掲載。

キーボード Best Worst Mean Wrong
HUNTSMAN V2 TKL (Linear) 644.7 448.3 552.8 4.2
Varmilo VA / Iris 566.6 489.2 530.8 5.5
PCMK / White Lotus 622.6 505.3 552.0 5.4
V3 Max / Prestige Silent 552.5 513.0 539.2 6.0
PCMK / WS Pearl 548.8 527.6 541.9 4.2
Impact80 Ultra / Rabbit Silent 605.0 528.3 566.6 6.6

……HUNTSMAN、速くない? 個人的にあんまりフィーリング良くないと思っているんだけど、実は結構快適にタイピングできているんだろうか。 指がもつれたりする感覚もなく、かなり打ちやすかった。うーむ。

というか、10ffのときから思っていたのだけど、そういうことじゃなくない?

限界付近の速度でのタイピングって普通のタイピングとは全然違うので、普段はミスしにくいキーボードでも普通にミスを多発したりする。 タイピングの高速性を強みにするキーボードでも、限界まで詰めようとするとミスにより結果が出なかったりする。

このあたりの結果は、普段のタイピングの傾向と一致しない。 つまり、タイピングテストでちゃんとリザルトを出そうとした結果というのは、タイピスト、あるいはタイピングコンテスト愛好者向けの情報になってしまう。 Chienomiのキーボード記事に望まれているのはそういうことではないはずだ。

タイピング (新メソッド Type-B)

違う、と思ったので、もっと良いメソッドを作ってみた。

簡単に言うと、KPM閾値とミスタイプ閾値があり、KPMのボーダーを越えつつミスタイプが閾値を越えないよう正確性重視で打つということを求めるもの。 試技に通過するとKPM閾値は上昇する。

重要な指標は、通過した試技の数と最終的なKPM閾値。 副次的に平均KPMと平均ミスタイプ数。

キーボード Attempts Threshold Best KPM Typos
HUNTSMAN V2 TKL (Linear) 7 520 623.3 567.9 4.5
Varmilo VA / Iris 7 520 614.5 561.8 3.8
PCMK / White Lotus 5 500 649.8 618.0 2.5
V3 Max / Prestige Silent 8 530 658.4 600.9 3.0
PCMK / WS Pearl 6 510 580.2 554.8 3.3
Impact80 Ultra / Rabbit Silent 10 550 665.0 574.4 2.4
HUNTSMAN V2 TKL
むにゅむにゅしているので結構打ちづらい。また、隣のキーに触れてしまってのミスタイプが多い。アクチュエーションポイントが浅いのも影響してそう。Type-Aよりはこっちのほうが実感に近い
Varmilo VA / Iris
550KPMあたりでものすごく安定するけれど、そこから速度を上げようとするとリズムが崩れる感じがあって難しい。打鍵実感がノイズになる感じ。速度を抑制すれば非常に安定していて打ちやすい。
PCMK / White Lotus
非常に軽いタクタイルではあるけれど、打鍵実感が高くて非常に打ちやすい。ミスが重なったことで慎重になったAttempt 6が509.6KPMとごくわずかに足りずに試技数が少なかったが、非常に高い速度で安定していた。
V3 Max / Prestige Silent
非常に打ちやすく、速度も速い。打鍵実感も優れている。ただ、跳ね返るような感じがあってこれがタイピングを加速させているため、焦るとリズムを崩して急激にミスタイプが増える。 Attempt 9でミス7となって失格したが、最も結果を出せそうなフィーリングだった
PCMK / WS Pearl
楽しいし、打鍵実感は高いけど、勢いをつけるとミスタイプは増えやすい。このため、速度は上げにくい。
Impact 80 Ultra / Rabbit Silent
軽く打てて非常に速い。ただ、勢いがつきすぎてミスタイプしそうなので、少しセーブしながら打つ必要がある。勢いがつきすぎてのミスタイプも多い。Cherryプロファイルは高速打鍵にあまり向かない気もする。

結果としては、おおまかにキーボードに感じている特性に従った結果になった。 調子にかなり左右されてはいるけれど、多少の参考にはなると思う。

ゲーム

Muse Dashはベストを更新した。

だいたい1発でベスト付近が出る上に、ベスト更新もそれなりに出た。 ゲームプレイでは最高だと言えるかもしれない。

ただ、完璧というわけではなかった。 戻りがあまり強くないので、意識して指を離すようにしないと、リセットポイントまで戻っていなくてトリルで打鍵数が足りないということがあったりする。

この意味では安定感ではWS PearlやPrestige Silentのほうが優れていた。

VS Prestige Silent

これまでのベストキーボードであるPrestige Silentと直接比較してみる。

V3 Max/Prestige Silentのほうが若干コトコト感があり、Impact 80 Ultra/Rabbit Silentのほうがリニアらしいフィードバック。 Rabbit Silentのほうがボトムアウトに重さを感じる。

Prestige Silentは打っていて気持ちいいのだけど、フィードバックの薄さが良くも悪くもという感じ。 疲れにくいスイッチではあるんだけど誤打りやすく、ペースを上げると急激にミスが増加する。 このため、安定して打つには速度を抑制する必要がある。

これは実用上でも気になるレベルで、あんまり調子に乗って速度を上げるとミスタイプに苦しむことになる。

これと比べるとRabbit Silentはそもそもが重めのスイッチだ。 作動圧は42gfと同じだが、Prestige Silentが1.8mmに対してRabbit Silentは1.2mmと浅い。つまり、急激に立ち上がる特性だ。

ここで両者のスペックを比較してみよう。

Rabbit Silent Prestige Silent
作動圧 42gf 42gf
ボトムアウト圧 ? 50gf
作動トラベル 1.2mm 1.8(±0.4)mm
総トラベル 3.8mm 3.6(±0.4)mm

総トラベルの違いもなんとなく分かる。 というか、3.6mmになると明確に短く感じられて、3.8mmはあんまり4.0mmと違いを感じない。 ただ、違いを感じるのはトラベル差というよりも、Prestige Silentが簡単にボトムアウトするし、ボトムアウト前提のタイピングになるのに対して、Rabbit Silentはもっと浅く打つ感じがする。

誤打問題はImpact 80 Ultra/Rabbit Silentにもあり、こっちは速度を落として打ってもある程度誤打が発生する。 1.2mmという浅いトラベルで反応するスピード軸なので指が触れてしまったことが反応するというのがあるのだろう。 あと、私のタイピングスタイルだと基本的に次のキーには指を置いた状態でタイピングするのだけど、そのせいで先のキーの入力が入ってしまうことがまあまあある。

ただ速度を上げなければ修正可能な範囲というか、あんまりそれをストレスに感じることはない。 けど、タイピングテストではシビアだなぁと感じる。

そして、めちゃくちゃ速い。 タイピングテストをするとImpact 80 Ultra/Rabbit Silentだけがタイピングが速すぎて次の単語の認識が間に合わないということがある。いわゆる頭のバッファアンダーラン。 ほかでは発生しないことで、頭のバッファを消化しきってしまうと単語の読み取りも運指もスペルも真っ白になるという問題が生じる。 指よりも頭のほうに限界があるということを知った。

ただこの点はタイピングテストでは苦しみとして表出するが、通常のタイピングではかなり強みと言えると思う。 文章打ちは頭の中に浮かんだワードを失わないうちに出力しきるというのが大事なので、バッファを消費しきれるタイピングスピードは武器だ。

両者を比べたときにどちらも非常に素晴らしいので評価は難しい。互角といっていいと思う。 心地よさ、楽しさもだ。

また、静音性も似たようなもの。V3 Max/Prestige Silentはスペースキーがかなり響くが、それを除けば良い勝負だと思う。

違いを感じる部分としては、Impact 80 Ultra/Rabbit Silentのほうがかなりしっかりした打ち心地になる。受け止められている安心感があり、高品位なキーボードをタイピングしている感覚が強い。また、キーボード全体から受ける印象がジェントルだ。 ここの点で少しアドバンテージを持っているように思うが、これはスイッチよりボード側に由来している気がする。

似ているかということに関しては、ある程度似てはいるが、ブラインドテストしたら絶対わかるレベルでは違う。 Prestige SilentとFrozen Silent V2だと音を聞かないと分からない可能性はあるが。

タイピング体験そのもので言うと、Impact 80 Ultra/Rabbit Silentのほうが淀みなくなめらかで速く打てる。が、その分打鍵実感が薄く、V3 Max/Prestige Silentのほうが速い速度を維持しやすい。 バランスが良いのはV3 Max/Prestige Silentのほうで、Impact 80 Ultra/Rabbit Silentはやや誤打しやすいためよりピーキーな印象。

総合的には互角といって良く、気分やその日によってどちらがいいかは変わると思う。 ただ、この上質感としっかりしたキーボードとして感じられるという点で、Impact 80 Ultra /Rabbit Silentのほうが少しだけ優位なのではないかという気持ちではいる。

つまり

この組み合わせ、今のキーボードのひとつの最高峰では。 少なくともJIS配列では。