序
Chienomiでは何度か触れているBALCK PAWN。
今回はBLACK PAWNを含むBLACKシリーズキーボードがどのようなものだったのか、思い出話も含めて語っていきたい。
Century Black Chessシリーズ
Centuryはあまりキーボードの印象はないだろうし、今もキーボードは販売しているもののそれほど力も入っていない。
そんなCenturyだが、Cherry MX全盛の時代に割と本格的にメカニカルキーボードを出していた。 いや、本格的といってもラインナップが本格的だっただけで見かける機会はそれほど多くはなかったが。
前提として、2010年代前半あたりは、基本的にメカニカルキースイッチはCherry MXしかなくて、しかも4種類(赤・青・茶・黒)しかないという時代だった。 他の選択肢としてはRealForceやHHKBといったTopreの静電容量スイッチを用いたもの。一応、LibertouchとかUnicompのキーボードとか、他の選択肢も存在はしていたんだけれども、それらは相当マニアックだった。
実のところ、このCherry MX時代のCherry MXによる概念を今でも引きずっている人もいるし、部分的には概念そのものがアンマッチになっても依然として使われているところもある。
まぁざっくり、6種類のキーボードから選ぶ、という時代だったわけだ。
- 安価で感触の悪いメンブレンキーボード
- 非常に軽いCherry MX 赤軸
- クリッキーのCherry MX 青軸
- タクタイルのCherry MX 茶軸
- 重いリニアのCherry MX 黒軸
- 静電容量無接点方式
もちろん、色々間違っているのだが、当時の人々の認識はこんな感じだったし、実際にこのような説明をされることが多かった。
で、Topreのスイッチを使っているのは非常に限られたメーカーの話なので、だいたいの高級キーボードラインナップというのはCherry MXのどのスイッチを採用するかの話だったし、だいたいの製品において4種類のバリエーションがあった。
Blackシリーズもそんな製品のひとつで、Cherry MXの4種類のスイッチを搭載していた。
製品名 | 内容 |
---|---|
BLACK QUEEN | 63キーの60%キーボード。シリーズの中では後発で、スピードシルバーやサイレント赤軸のモデルもあった |
BLACK PAWN | 67キーの60%キーボード。カーソルーキーがあるのが特徴 |
BLACK ROOK | TKLモデル |
BLACK BISHOP | 108キーのフルキーボード |
BLACK KNIGHT | 112キーのフルキーボード。茶軸のみ |
WHITE KNIGHT | KNIGHTだけ白がある。まんま色違い |
比較的安価で作りの良いキーボードとしての一定の人気があったが、このシリーズが話題になったのは「限定版としてCherry MXのレア軸モデルが出た」ことにある。
BLACK PAWNでは
- リニアグレー
- タクタイルグレー
- ホワイト
- クリア
- グリーン
の5種類、BLACK ROOKには緑軸が限定販売された。 ちょっとした話題になったが、即完売というほどではなかった。
さらに、BLACK ROOKにはCherry MXの4種類の軸を列ごとに配置したMIX軸というのもある。


そして、私はBLACK ROOKの緑軸と、BLACK PAWNのリニアグレー軸を持っている。 当時私はオルガンのようにしっかり叩くタイピングをしていたので、それを受け止める反発力のあるスイッチを求めていたのだ。 特にBLACK PAWNは結構長い間メインとして使っていた。
改めて語ろう
まずバックライトの話をしよう。 BLACK PAWN, BLACK BISHOP, WHITE KNIGHTは青色のバックライトを持っており、キーキャップがシャインスルーになっている。 BLACK KNIGHTは赤色のバックライト。

BLACK ROOKとBLACK QUEENはオレンジと緑の2つのLEDを持っており、それぞれに明るさを指定できるため混色が可能。 自由に設定できるわけではないが、エリア分けして光らせることもできる。

この時代には珍しい、ケーブル着脱可能なタイプ。本体側はmini-Bである。 ただし、BLACK BISHOPは着脱式ではない。
BLACK PAWNとBLACK QUEENはポートが側面にあり、非常に扱いやすい。 一方、BLACK ROOKは背面にえぐりを設けているタイプなのだが、このえぐりが非常に浅い。 mini-Bでコネクタが薄いケーブルは非常に少ないので、ROOKだけはケーブルにめちゃくちゃ困る。


キープロファイルはOEM。 感触はつるっとしたものだけれど、全くすべらないので「ぺたっとしている」に近い。 割としっかりめにシリンドリカルになっており、指の収まりが極めて良い。ミスタイプを抑制するのに十分なフィット感。ちなみに、感触としては表面を除けばGRAPHTのDesigner’s Keycapがかなり近い。
このキートップは私が知る中で最も感触が良い。 キーを見失いにくく、ミスタイプしづらい。 ただ、キーレイアウトはPCMKのほうがよりよい。
BLACK ROOKは下段が
- Ctrl 1.25u
- Win 1u
- Alt 1.25u
- 無変換 1u
- スペース 4.25u
- 変換 1.25u
- かな 1.25u
- Alt 1.25u
- Fn 1u
- Ctrl 1.25u
である。変換に1.25u取っていて、その分スペースが4.25uになっている。
一方、BLACK PAWNは
- Ctrl 1.25u
- Win 1.25u
- Alt 1.25u
- 無変換 1.25u
- スペース 4.25u
- 変換 1u
- かな 1u
- Fn 1u
- ← 1u
- ↓ 1u
- → 1u
とこっちは無変換が1.25uで変換が1uと逆転している。 「↑」を収める関係でRShiftが1uになっていて、RShiftは↑の右側という変則的配置。
ちなみに、PCMKのスペースバー4.25uを「特殊」という人がいるのだが、スペースバー4.25uはJISキーボードでは結構普通。だいたいは4.25u or 4.5u or 3.5uである。KeychronもVarmiloも4.25u。
BLACK PAWNは60%キーボードだが、まだ60%キーボードという呼び方がなされていなかった時代で、「カーソルキーを持っている」というのがかなり大きなアドバンテージ。 スタンドがないが、代わりに本体の厚みで傾斜を作っている。
弱点もある
素晴らしいキートップを持っていて、先進的な着脱式USBケーブルに対応している。 現代から見たら長所はキートップくらいしかないが、当時としては素晴らしいキーボードであった。 もちろん、限定版に関してはほかでは手に入らないレア軸という価値もあるだろう。
だが、割とはっきりとした弱点として、基板が弱い。 このため、かなりチャタがちゃたたたたりやすい。
扱いやすいTKLであるBLACK ROOKはえぐりが薄すぎてケーブルがささらないのも悩ましい。
現代でそのまま通用するキーボードかというとそんなことはないのだが、当時としては非常に良く考えられた、良い製品だった。