Chienomi

中華USBヘッドセット FIFINE H13を買ったぞ

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私はUSBヘッドセットをあんまり持っていない。 というか、1台しか持っていない。

USBヘッドセットが流行ったのが割と近年で、その頃にはヘッドセットとか割と色々持っていたという事情もあるのだけど、ヘッドセットはかなり壊れがちでライフタイムが短いので増えていかないのだ。

これまではPXN Konlon IIというのを使っていたのだが、マイクにビーーーーというノイズが乗るようになってしまい、相手側からかなり気になると指摘された。

で、USBヘッドセットの出番が割と少ないので忘れていたのだが、いざ使うとなったときにそのことを思い出した。 試しにKonlon IIで録音してみたものの、確かにノイズが気になる。気にしなければ気にならない気もしたが、相手が気にしてしまうとダメなレベル。

となると、私の手元に有効なUSBヘッドセットはないことになる。 それはちょっと困る。

他にもオーディオデバイスはあるのだから困らないと思うかもしれないが、そうでもない。 確かにデスクトップPCにはそれぞれ固有のオーディオ環境が存在するのだが、私がMTGをするのは大抵ラップトップである。ラップトップを使うのは別のデスクで、オーディオシステムが流用できない。

別に3.5mmのヘッドセットを使えばいいように思うかもしれないが、確かにAMDプラットフォームのラップトップならそうだ。 私は転職活動でのMTGなどではIdeaPadを使っていて、これはAMDだから問題ない。

ところが、最近のIntelラップトップはsof-firmwareが必要なオーディオを積んでいることがほとんどで、これは結構動作が不安定なのだ。 例えば、3.5mmが接続されていてもヘッドフォン出力に切り替わらなかったり、マイクとヘッドセット両方から拾ってしまったり、音量設定が反映されなかったり。 チャンネル制御も本来あるべきものとはかなり違ったりする。

色々試した結果、「sof-firmwareが必要なラップトップでは、スピーカーからオーディオ出力する以外の役割をさせないほうが良い」という結論になった。

これ用にオーディオシステムを組む気もないので、USBヘッドセットというのが最も簡単かつ適切な解決方法なのだ。 なので、「ない」というのはちょっと困ってしまう。

また、先日USBマイクがかなりノイズを拾ってしまうことがわかったためUSBマイクを使う方法も使いづらく、その代替という意味もある。 寝室で使っているmaonoのマイクを持ってくれば問題ないのだが、あれもタイプ音を拾いすぎるのが気になっている。

結局ベストな方法を考えると、USBヘッドセットを1つ持っておくが正解な気がしたのだ。

FIFINEについてと製品概要

FIFINEは中国・深圳に本社を構える音響機器メーカー深圳迅維佳科技開発有限公司(Shenzhen Xunweijia Technology Development Co., Ltd.)のブランド。

深圳迅維佳科技開発有限公司は設立は2005年9月9日と結構古株。 所在地は中国・深圳市龍華区大浪街道高峰社区陶吓錦華大厦1104。 マイクを主力製品として成長してきた会社で、世界中にかなり広く展開している。

低価格・高品質の中華マイクとしてmaonoと並ぶ二大勢力である。 企業としてはFIFINEのほうがだいぶ古いが(maonoは2017年創業)。 けれど、日本市場ではアスクが輸入しているmaonoのほうがだいぶ優勢。

日本には2017年に商標登録して本格参入。 Amazonでかわいいスマイルマークのヘッドセットを見かけることも増えてきた。 ゲーミングデバイス系はAmpliGameというシリーズで出している。

ポッドキャスト向けに人気のUSB/XLRマイクK688、コンパクトでかわいらしいゲーミングマイクA6V、本格的なUSB/XLRゲーミングダイナミックマイクAM8といったマイク製品、シンプルで軽量なヘッドセットH9、RGBイルミネーションが鮮やかなゲーミングヘッドセットH6、本格的なストリーミングミキサー/オーディオインターフェイスSC3といった製品をラインナップする。 最近はStreamDeckっぽいストリームコントローラD6も登場。GK1というゲーミングキーボードのリリースも予定しているとか。

ヘッドセットシリーズはHというシリーズ名で、数値は別にグレードを表しているわけではなく、製品名から製品グレードを推測することはできない。 ヘッドセットラインナップはFIFINE公式によるとこうなっている。

製品名 PCゲーム コンソールゲーム モニター シアター 備考
H6/H6X/H6G USB
H9 USB/3.5mm
H13 USB, H6の後継
H19 未発売, USB
H3 3.5mm
H18/H18V 未発売, USB/3.5mm
H8 3.5mm/6.35mm
X3 Bluetooth

H13はRGBライティングを持つゲーミングヘッドセットであるH6の後継製品として登場したもの。日本ではまだあまり見かけないが、AliExpressで購入できる。 最大の違いとして、H13が2つのオーディオデバイスとして認識され、sinkを振り分けることでゲーム音とチャットの音量のMIXをコントロールできるということが挙げられている。

もう少し詳しく見ていこう。

コントロールボックスまで一体になったUSB接続のみのヘッドセット、という点はH6と共通だ。3.5mm接続でマイクが分離式なのも同じ。

50mmのダイナミックドライバ、RGBライティング、7.1chサラウンドサポートなども同じ。PS4/PS5には対応するが、XBoxには対応していないというのも同じところだ。

USBオーディオデバイスのスペックは16/24bit, 48kHzとこれも共通。

重量は330gから390gと結構増加した。 特徴的なRGBライティングは立体的なものに変わり、スマイルマークも光るようになった。 支持部がプラスチックからアルミになり、全体的なデザインクオリティも向上している。

EQモードはH6のゲーム/音楽/映画の3モードから、イコライザーを使わないデフォルトモードが追加された4モードになった。

コントロールボックスはチャット/ゲームのボリュームバランスダイヤルが追加され、全体的に更新されている。

非常に大きな変更として「ノイズキャンセリング」が追加された。 これは出力に対するものではなく、入力に対してAIによるノイズ低減が行われるというものだ。 オンオフがコントロールボックスから1クリックとなっている。

価格は9700円から16300円と大幅に上がっており、もしかしたら後継というより上位モデルなのかもしれない。

カラーバリエーションは黒・白・ピンク。 AliExpressだと黒だけだけど、公式サイトやAmazon.comでは白とピンクが選択可能。 AliExpressやAmazon.comだと7000円前後という感じ。 公式サイトでは10%オフがある程度なので、公式サイトで買う人はあまりいないだろう。

ちなみに、H6は4000円くらいで売っているので、やっぱり価格差は結構ある。

外観と仕様

FIFINEのヘッドセット、いままでだと割と安っぽい形をしていたけれど、H13は立体感のある立派な形状になった。 これならヘッドフォンスタンドにかけていても気分が良さそうだ。

Fifine H13 外観

商品写真だとイルミネーション部分が飛び出して見えるけれど、実際は透明なプレートが覆っているので表面自体は平面。 ただ、内部ではイルミネーション部分は立体的になっている。

スマイルマーク部分も光る。

光るスマイルマーク

Linuxから見えるデバイスはMV-SILICON fifine H13 Chatとなっている。

3142:0021 MV-SILICON fifine H13 Chat

H13は “fifine H13 Game” と “fifine H13 Chat” という2つのオーディオデバイスを提供する。 ただし、Linux 6.16では “fifine H13 Chat” として認識される。このタイプの構成のデバイスは増えているので、多分そのうち対応されるだろうが、2つのオーディオデバイスという非常に大きな特徴は現状Linuxでは活かせない。 また、オーディオプロファイルとしてアナログステレオ, デジタルステレオ, デジタルサラウンドの3種類のsinkを使うことができるが、このうち音声出力が可能なのはデジタルステレオのみである。

EQ機能と7.1chサラウンドはGameのほうでしか機能しないため、Linuxだと割とデッドになる機能が多い。

ちなみに、LinuxでもALSAレベルではデバイスは2つあるように見えているのだが、device#1を指定しても音は出ない。 今後に期待。

Windowsにおいても微妙なところはあった。 というのも、ChatとGameに同時に音を入れたら音がものすごいことになったりしたのだ。 これは、デフォルトのsinkを切り替えることでも発生した。

ただ、何度か挿し直したり再起動したりと色々していたらなんか直った。 よくわからない。

サウンドについて

ちょっと大事な前提なのだが、GameとChatで音が違う。 どっちも低音の強いサウンドではあるのだけど、Gameのほうが押しの強い音をしている。 そして、LinuxではChatしか使えない関係上、ちゃんと評価しようとするとChatのほうだけになってしまうという問題が発生した。

仕方ないので、Windows環境でできる限り評価するようにがんばってみた。

なお、WindowsでもWindows 10では接続したままGameとChatを切り替えるとおかしくなってしまうため、評価作業がとても難しい。 基本的にはWindows 11向けだと考えたほうが良いだろう。

GameとChatで音が違うというと、普通は「Chatのほうは人の声が聴きやすいように中域に振っているんだな」と思うかもしれないが、そんなことはない。普通に低音寄りであり、むしろ中域が薄い。

素早く切り替えられないのでちょっと自信がないんだけど、ChatのほうはGameの中ではミュージックモードEQに近い気がする。 でも、同一ではない。

GameのほうのEQはかなりしっかりと音が変わる。 デジタルEQなので抑える方向で、音量はEQオフが一番大きい。

音の特性で言うと、いわゆるカーステっぽい音。 ただ、低音はもわもわしておらず、やたらと明瞭。バスドラやベースラインがやたら聞き取りやすい。 ヴォーカルはやや埋もれ気味、広域は沈まないけど控えめで痛くない。

EDM系のベースやキックはかなり強調されるけど、ロックではそうでもなく、ロックくらいならだいたいヴォーカルのほうが前に出る。

つまり、大変聴きやすく疲れにくいが面白みはない音。 低音が演出的なのでモニターっぽくはないけれど、7インチとか8インチのスタジオモニタースピーカーだとこういう音の配分はまあまあ存在するので、モニターっぽくないというか、モニターヘッドフォンっぽくないのほうが正しいか。 大型スタジオモニターみたいな音かというと、まぁなんとなくそんな雰囲気はあるが、大型スタジオモニターはもっと圧のある音をしているので、それと比べると相当おとなしい。

音楽用ヘッドフォンとしてどうかと言うと、手持ちによるという感じ。 私の手持ちで言えば、リスニングにH13を選ぶことはない。 それならまだ、K712 ProとかPro 580iとかを使う。 けど、それはそれなりに良いヘッドフォンを持っている前提の話になるため、これといった音楽向けのヘッドフォンを持っていないのであれば別にオーディオリスニングに使ってもいいとは思う。

やや蒸れるものの非常に耳が痛くなりづらいイヤーパッドなので、少なくともアリではある。

ゲーム用途……は私はFPSとかはやらないので話半分に聞いて欲しい。 GameのほうでゲームモードEQとEQオフで試した。

まず基本的に解像度が高く低音が強いという基本特性があるので、迫力はあるし何の音が鳴っているかはわかる。 が、特に足音の位置関係がわかりやすいということはなかったし、どちらかというとシネマティック重視のゲームには合うのかなぁという感じ。

ゲームモードEQだと声が埋もれてしまうため、ナビゲーションボイスが聞き取りづらかった。

マイクについて

マイクはfifine H13 Chatのsourceになる。Linuxでもモノとして認識される。

コントローラにミュートスイッチがあり、マイクミュートが可能。 トグル式のボタンではなくスライドスイッチになっている。 このため、手探りで間違いなく操作することが可能。素晴らしい。

マイクミュートするとマイク部先端が赤く光る。 これは非常に大きな特徴で、装着していても視認可能。 ミュートしそこねている事故がない。

ただし、カメラをオンにしている場合はミュートしていることが伝わってしまうという点には注意が必要。

音質はかなり良好なようだった。 BY-CM03と比べてもらったところ、H13のほうが良好な音質であるとのことであった。

AIノイズキャンセリングがあり、これはマイク入力からノイズを取り除く。 完璧ではないが、有効にするとキーボードの音はかなり小さくなった。 不自然な感じはなく、完璧にせず控えめにしておくことでデメリットを消しているタイプのようだ。

このAIノイズキャンセリングについて試したところ、非常に良好な結果が得られた。 特にある程度のノイズキャンセリング機能を持ったプラットフォームでの通話だと、それなりに大きなキーボードのタイプ音も「聞こえない」とのことだった。 なおかつ、声質が変化したようにも感じないという。

マイクアームはかなり柔軟に固定できるので、位置調整しやすく口元まで持ってこれる。 ただしマイクにポップガード等はないため、ブレスノイズなどが乗りやすくなる。 むしろ少し離したほうが良いようだ。

コントロールボックス

前面は大きな7.1chボタンと小さなEQボタン。

右サイドはマイクミュートスイッチとヘッドフォンボリュームダイヤル。

左サイドはChat/Gameミックスダイヤルとノイズキャンセリングスイッチ。

背面はクリップがついている。

イルミネーションコントロールはユニットの後側にあるのでコントロールボックスにはない。

総括

2系統のsinkはLinuxでは利用できず、Windowsでも不安定。 ここは非常に残念なところだ。 また、Linuxで利用できるのはChat側sinkだけなので、EQやサラウンド機能も死ぬ。 Linuxで使うという前提だとちょっと微妙かもしれない。

出力音質はクセは強いが良好ではある。 マイク音質はかなり良好なようだ。 また、AIノイズキャンセリングの性能は大変素晴らしい。

デザインは独特で優れている。

装着感は良好で痛みも出にくい。 ただし蒸れる。

Game/Chatのミックス機能は出番がある場面では非常に便利である。 通話アプリ側にsink設定の機能があれば利用可能だ。

コントロールボックスの使い勝手も良い。

総合的にはかなり良いと思う。 LinuxではH6のほうが適しているのではないかという気がするが、AIノイズキャンセリングに価値を見いだせるのであればH13を選ぶのもひとつだろう。