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Intel N150搭載ミニPCを導入 ACEMAGIC Vista Mini V1

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家に常時稼働するPCがあると便利だな、というのはずっと思っていた。

この考えは、一般的に考えるよりも複雑だ。

常時稼働コンピュータを用意する方法としては、

  • 専用の省電力サーバーを用意する
  • 退役したラップトップを転用
  • NASなどもともとLinuxの動作するものを利用
  • ルーターにOpenWRT等を導入して使用

などが考えられる。

そして、実際にそれで何ができるかというのはその常時稼働コンピュータの性能にも大きく左右される。 加えて、内容によっては既存のVPSなどに担わせることも可能なので、案外「何のために、何を用意するか」というのを予めちゃんと考えておく必要がある。

そして考えているかいらないかでずっと留まっていたが、ついにN150ミニPCを導入ることになった。

どんな状況で何が必要なのか

前提の状況はMEGAがいよいよだめになったので、完全移行へでCore i5-2520Mを搭載したDynabookをローカルサーバーとして導入したところにある。

だが、バッテリーを抜いているとはいえ15年モノのおんぼろラップトップ、さらには電源プラグの接続がシビアというシロモノ。 加えて、とうとうEthernetチップが機能しなくなり、USB-Ethernetアダプタに頼る状況にまでなっている。 アイドリング時の電力消費が20Wくらいあるので、できればもっと適切なホストが欲しいところである。

E2EEをサポートするSeafileを導入したので、Unisonやリポジトリホストを廃止することはできなくはないが、VPS側にも余裕はないので結構厳しい。

メインPCに兼用させるような方法もあるが、メインPCが起動していることを他のホストを利用できる最低条件にしてしまうと縛りとしては重すぎる。

つまり、「常時起動用ホストがあると便利だが、なくても工夫次第で代替不可能というわけではないし、実際今使っているDynabookが利用不可能になっているわけでもない」あたりになる。

なので、単に常時起動用ホストとして導入するのはモチベーションに乏しいが、もう少し何かを担えると話が変わってくる。

微妙な状況を埋めるのに活躍しているのがRyzen7 5700Uを搭載したIdeapad。 導入当初は導入した割に問題が多く活躍しなかったが、amd-pstate-eppドライバが導入されてからはそこそこ省電力1で日常利用可能なレベルの性能が出ているPCとして活躍している。

というか、活躍しすぎている。 ThinkStation P720がリビングから外されたことでリビング2で使うときもIdeaPadを持ち込んでいるし、専用の丸プラグ電源であることもあって割と移動・持ち込みがめんどくさい。

ミニPCがリビング常設になると、短時間のリビングでの利用のためにPCを持ち込む必要がなくなる。 ついでにミニPCをいじるとき用にディスプレイが欲しいが、ミニPC用ディスプレイも確保できる。

Intel N150について

Atom系コアの系譜を持つCeleronの系譜のプロセッサ。 4コア4スレッドでブーストクロックは3.6GHz。ローンチは2025 Q1。TDPは6W。 メモリはDDR4/DDR5に対応。 コードネームはTwin Lake。製造プロセスは10nm。

この系統のプロセッサはIntel N100(2023 Q1)が従来から大幅な性能向上を果たして「実用可能なレベル」になったことから結構話題になって、搭載したミニPCも一気に増えた。 N150はその後継になるのだけど、ミニPC市場ではN100が主流でN150は少なめ。

上位モデルとしてはN250があるが、こちらは搭載ミニPCのお値段が5万円くらいするのであまり安くない。

ベンチマーク上の性能的にはちょうど私の手元にあるThinkPadが搭載するIntel Core-i5 7200Uあたりに近い。

ACEMAGIC Vista Mini V1について

Intel N150を搭載するミニPCである。 ACEMAGICは中国のメーカーで、最近名前を聞くようになったくらいらしい。

私が買ったのは8GB RAM, 256GB SATA SSD (M.2 2280)というモデルだが、Windows 11 Pro搭載で驚異の16880円。 N150搭載ミニPCは3万円くらいが相場なので、激安である。

この価格になると、導入はコスト的負担がかなり小さい。

単に本体そのものが安いというだけでなく、現在のDynabookよりも省電力であるため電気代が少し低減できる。 さらに、性能向上も相まって消費電力の大きいメインPCを起動している時間が減少すると、さらに電気代の節約になる。

結果的に16880円という価格は、「数年で電気代の節約によって回収可能」というものになる。

観察

Vista Mini V1 前面

フロントはUSB3.2 Gen1 Type-Aが2ポートと3.5mm CITAが1ポート、電源ボタン。 サイドには大きな通気口がある。

Vista Mini V1 背面

背面はインターフェイスぎっしりで、HDMI, DP, RJ45, USB2.0x2, DC in。 給電はUSB-PDではなくDC丸プラグ。

Vista Mini V1 天面

落ち着いた銀色の筐体。サイドはプラだが、トップは金属っぽい。 高級感はないが、特別安っぽいということもない。

ProDesk 600 G2 Miniとの比較

ProDeskと比べると大きさが全然違う。 写真だとはみ出しているように見えるが、単に高さの問題。

inxiで見てみよう。

System:
  Host: kalmia Kernel: 6.12.41-1-MANJARO arch: x86_64 bits: 64
  Desktop: Cinnamon v: 6.4.10 Distro: Manjaro Linux
Machine:
  Type: Desktop Mobo: N/A model: N/A serial: <superuser required>
    UEFI: American Megatrends LLC. v: TWL_P0_AK_10_01.02 date: 10/21/2024
CPU:
  Info: quad core model: Intel N150 bits: 64 type: MCP cache: L2: 2 MiB
  Speed (MHz): avg: 700 min/max: 700/3600 cores: 1: 700 2: 700 3: 700 4: 700
Graphics:
  Device-1: Intel Alder Lake-N [Intel Graphics] driver: i915 v: kernel
  Display: x11 server: X.org v: 1.21.1.18 with: Xwayland v: 24.1.8 driver:
    X: loaded: modesetting dri: iris gpu: i915 resolution: 1920x1080~60Hz
  API: EGL v: 1.5 drivers: iris,swrast platforms: gbm,x11,surfaceless,device
  API: OpenGL v: 4.6 compat-v: 4.5 vendor: intel mesa v: 25.1.7-arch1.1
    renderer: Mesa Intel Graphics (ADL-N)
  Info: Tools: api: eglinfo,glxinfo x11: xprop,xrandr
Audio:
  Device-1: Intel Alder Lake-N PCH High Definition Audio driver: snd_hda_intel
  Device-2: Zoran Personal Media Division (Nogatech) USB Audio and HID
    driver: snd-usb-audio type: USB
  API: ALSA v: k6.12.41-1-MANJARO status: kernel-api
  Server-1: PipeWire v: 1.4.7 status: active
  Server-2: PulseAudio v: 17.0-43-g3e2bb status: active
Network:
  Device-1: Realtek RTL8111/8168/8211/8411 PCI Express Gigabit Ethernet
    driver: r8169
  IF: enp1s0 state: up speed: 1000 Mbps duplex: full mac: xx:xx:xx:xx:xx:xx
  Device-2: Realtek RTL8821CE 802.11ac PCIe Wireless Network Adapter
    driver: rtw_8821ce
  IF: wlp2s0 state: down mac: xx:xx:xx:xx:xx:xx
Bluetooth:
  Device-1: Realtek Bluetooth Radio driver: btusb type: USB
  Report: rfkill ID: hci0 state: up address: see --recommends
Drives:
  Local Storage: total: 238.47 GiB used: 6.91 GiB (2.9%)
  ID-1: /dev/sda vendor: AirDisk model: 256GB SSD size: 238.47 GiB
Partition:
  ID-1: / size: 229.38 GiB used: 6.02 GiB (2.6%) fs: btrfs dev: /dev/dm-0
  ID-2: /boot/efi size: 299.4 MiB used: 800 KiB (0.3%) fs: vfat
    dev: /dev/sda1
  ID-3: /home size: 229.38 GiB used: 6.02 GiB (2.6%) fs: btrfs
    dev: /dev/dm-0
  ID-4: /var/log size: 229.38 GiB used: 6.02 GiB (2.6%) fs: btrfs
    dev: /dev/dm-0
Swap:
  ID-1: swap-1 type: partition size: 8.8 GiB used: 915.9 MiB (10.2%)
    dev: /dev/dm-1
Sensors:
  System Temperatures: cpu: 46.0 C mobo: N/A
  Fan Speeds (rpm): N/A
Info:
  Memory: total: 8 GiB note: est. available: 7.54 GiB used: 852.2 MiB (11.0%)
  Processes: 221 Uptime: 37m Shell: Zsh inxi: 3.3.38

Zoran Personal Media Division (Nogatech) USB Audio and HID

というサウンドデバイスが見えているが、これが何を指しているかはよくわからない。 フロントの3.5mmではないようだ。

vendor: AirDisk model: 256GB SSD size: 238.47 GiB

AirDiskというメーカーの256GBのSATA SSDを搭載。 ミニPCに搭載されていることが多いようだが、単独製品としては販売されていないようだ。

従来うちにあったミニPCであるProDeskと対比するとかなりの違いを感じる。

ProDesk600 G2DM Vista Mini V1
ストレージ NVMe M.2 2280, SATA SATA/NVMe M.2 2280
ワイヤレス Option WiFi6, BT4.2
USBポート 6x3g1-A, 1x3g1-C 2x3g2-A, 2x2-A
映像出力 2xDP1.23, VGA HDMI2.0, DP1.4
音声出力 3.5mm-CITA, 3.5mm-stereo 3.5mm-CITA
イーサネット 1000M RJ45 2.5G RJ45
電源アダプタ容量 65W 30W
実測重量 1166g 268g
公称寸法 175x177x34 100x100x33

600G2DMはミニとはいえそれなりの大きさを持ち、重量もある。 全体で放熱する金属筐体だ。 そして、ミニサイズだからといって拡張性が低いこともなく、計7つのUSBポートと3つの映像出力、2つの3.5mm音声ジャックを持っている。

スピーカー+マイクの接続をアダプタなしに実現できる3.5mmの2ポート、Skylake世代では珍しいVGA(D-Sub15)端子とオフィス利用を想定して非常に合理的に作られている印象だ。 工具レスで開けられるのはhpらしさか。

これに対してVista Mini V1は「小さい」ことが価値の中心にあることを感じる。 サイズは半分程度、重量は20%程度しかない。 4つのUSBポート、2.5GのRJ45端子などラップトップよりはポートが多いけれど、ラップトップと大差ないでもある。

ベンチマーク

いつもの独自のもの。 比較できる結果はこちら。

かなり興味深い結果になった。

Unigine Heaven
Model CPU Video Score FPS MinFPS MaxFPS
X570UD Ryzen9 5950X Radeon RX7900XTX 8719 346.1 108.5 666.0
Dynabook RZ Core i7-1360P - 616 24.5 13.7 55.4
Vista Mini V1 Intel N150 - 190 7.5 4.5 15.5
FM2iller A10 7870k - 157 5.2 3.8 12.9
Core i7-10610U 142 5.6 3.6 11.9
Core i5-7200U 149 5.9 3.6 12.3

Unigine Heavenの結果は妥当というか、まぁそうだろうなという感じ。

Core i7-10610Uよりも良く、低消費電力CPUとしては結構頑張っている感じはするが、Core i7-1360Pのように高性能なわけでもない。 もちろん、ディスクリートビデオカードを載せているようなやつには全く及ばない。

Antutu HTML5
Model CPU Browser Score Governor
X570UD Ryzen9 5950X Vivaldi 6.2 98096 ACPI Performance
dynabook RZ Core i7-1360P Vivaldi 6.2 97847 Intel P-State Performance
Vista Mini V1 Intel N150 Vivaldi 7.5 68222 Intel-PState Performance
ThinkPad X1 Carbon Gen8 Core i7-10610U Vivaldi 6.2 63167 Intel P-State Performance
IdeaPad Slim 360 (17) Ryzen7 5700U Vivaldi 6.2 61794 ACPI Performance
ThinkPad X1 Carbon Gen5 Core i5-7200U Vivaldi 6.2 48779 Intel P-State Performance

Antutu HTML5ベンチマークは驚異的な結果と言えるだろう。 さすがに突き抜けたスコアのZen3プロセッサやCore i7-1360Pには届いていないものの、高性能なRyzen7 5700UやCore i7-10610Uを凌ぐ結果である。 ただ、熱的な問題か、冷えた状態でスタートしないと結果はおよそPowersaveと同じもの(58000程度)になってしまう。

BMark
Model CPU Browser CPU Dri Canvas1 Canvas2 WebGL1 WebGL2 Total
dynabook RZ Core i7-1360P Vivaldi 6.2 Intel PS 1222 4951 2103 2048 10324
X570UD Ryzen9 5950X Radeon RX7900XTX Vivaldi 6.2 ACPI 1237 4574 1927 1984
IdeaPad Slim 360 (17) Ryzen7 5700U Vivaldi 7.5 amd-epp 969 2722 1281 1442 6414
Vista Mini V1 Intel N150 - Vivaldi 7.5 Intel PS 887 2820 972 1019
ThinkPad X1 Carbon Gen5 Core i5-7200U Vivaldi 7.5 Intel PS 577 1995 606 575 3753
ThinkPad X1 Carbon Gen8 Core i7-10610U Vivaldi 6.2 Intel PS 765 1539 769 618 3691

BMarkも同じ傾向だが、Ryzen7 5700Uがスコアを伸ばしており逆転している一方、Core i7-10610Uはかなり落ち込んでいる。 こちらもかなり良い結果で、実用性が高いように見える。

xz
Model CPU Time CPU Dri
X570UD Ryzen9 5950X 13.607 ACPI
dynabook RZ Core i7-1360P 23.869 Intel PS
B550 Ryzen5 5600X 27.566 ACPI
ThinkPad X1 Carbon Gen8 Core i7-10610U 43.375 Intel PS
ThinkPad X1 Carbon Gen5 Core i7-7200U 75.78 Intel PS
FM2Killer A10-7870K 78.00 ACPI
Vista Mini V1 Intel N150 79.79 Intel PS
Dynabook R731/B Core i5-2520M 83.77 Intel PS

CPUのマルチスレッド性能が露呈するxzテストは目を疑うような結果になった。なんと、A10-7870Kよりも遅い。

何かの間違いかと思ったが、何度試しても結果は同じだ。 ひょっとしてシングルコア負荷でのブーストに極度に依存しているのかと思い、-T1も試してみたが、4分以上とおよそ4倍の時間がかかった(なおかつ、4倍未満であった)ため特にそういうことではないらしい。

zstdも遅いため、日常的に妙に遅いという場面が発生する。

ffmpeg
Model CPU Total FPS MaxFPS MinFPS Processes
X570UD Ryzen9 5950X 15.0 2.4 1.4 8
IdeaPad Slim 360 (17) Ryzen7 5700U 3.5 0.8 0.7 5
ThinkPad X1 Carbon Gen8 Core i7-10610U 1.9 1.3 0.7 2
Vista Mini V1 Intel N150 1.5 0.1 0.4 6
FM2Killer A10-7870K 1.3 0.1 0.3 6
ThinkPad X1 Carbon Gen5 Core i7-7200U 1.0 0.6 0.4 2

実用における所感

各種特徴

  • ビデオメモリの設定はできない
  • 設定できるのはブースト関連とSecure boot, Fast bootくらいのもの

YouTube

馬鹿げたレベルで無駄に激重なYouTubeのサイトだが、結構重要になってくるのがGovernor。 結局最大20Wなのだからあまり変わらないように思うのだが、実際は操作もまともにうけつけなくなることがあるレベルと、おおよそひっかかりがないレベルで変化するため大きい。

基本的にはウェブブラウジング等をするのであればPerformanceにしておいたほうがいいだろう。 Intel PStateドライバはPerformanceにしていてもそれなりによく省電力しようとする。

1920x1080ソースを1920x1080 * 2.00 viewportに出した場合、Powersaveで約50%、Performanceで約10%ドロップする。 Performanceで960x540*2.00 viewportなら問題なし。

YouTube利用で「問題なく再生できる」とは言えない感じ。 動画ソースのエンコーディング問題というより、4k viewportに動画を出すのがそれなりに厳しい。 これはYouTubeでない動画再生(VA-APIを使ったもの)でも4k出力は厳しいので、結局のところLinux的にはディスプレイはFHDに落とすほうが現実的。

また、デスクトップも60Hzで描画できている感じはしないので、4kデスクトップ利用はそもそも厳し目という理解で良さそう。

Windowsの場合どうなるかは、そもそも動画出力スケーリングの仕組みが違うので同じ問題があるかどうかも分からないし、さらにディスプレイ設定で単純にFHDビューポートとして扱われるわけでもないため、全く違う話になる。

デスクトップ全般

突如ひっかかるようにプチフリを繰り返すことがあり、あんまり快適ではない。 FHDに落とすとかなり改善されるけれど、4コアある割には特定の負荷がかかる処理やスパイクにシステム全体が引っ張られる感じがある。

常にもっさりというわけではないから古いラップトップとかとは違うのだけど、「こいつ余裕ないな」と感じる瞬間がある。

ただし、Performanceであれば負荷をかけることを特にしていなければ「たまに発生する」程度なので、デスクトップ用途に苦しいと感じるほどではない。 けれど快適でもない、くらい。

例えばPCがない環境で軽作業をするためにPCが欲しいという場合であれば苦痛ないレベルで最低限要求を満たせるものとして選択可能だろう。 また、子供用4のPCにするのも悪くはない。

実際試した限り、Manjaro Cinnamonを用いてFHDのディスプレイでWaterfoxとCode OSSをタイルし、WaterfoxでYouTubeを再生しつつCode OSSで文章やコードを書く、くらいなら全然可能。 プログラムの開発・実行も問題なく可能であり、並列であれこれしないなら割と普通に使える。 ただし、私は重いフレームワークを使って開発したりすることはないので、そういうことをするために買う人には有効なアドバイスはできない。

性能的には場面を問わず安定した性能のCore i5-6500Tを搭載したProDeskのほうが使いやすいため、性能に期待できるほどのものではない。 だが、かといってどうしようもないほど遅いわけでもなく、それなりの性能がある。 これで価格が高ければ「やすい中古PCで十分」という話もできるのだが、Vista Mini V1の価格はたったの16880円。ミニPCの中古はだいぶ入手しづらくなっている上に価格も結構する。 つまり、価格で得られる性能としても結構な満足感があるのだ。 それに、Skylake世代ではVP9再生支援がないため動画が厳しい。

多少ピーキーな部分はあるが、現代的な機能を備えたCPUで、性能もデスクトップとしてまあまあ使える程度のものは持っている。 それでいて価格としても同等性能の中古PCに見劣りしない。

加えて、ピーク20Wという消費電力の少なさは非常に大きなアドバンテージだ。 デスクトップ利用していて、電気の無駄遣いや熱を気にしなくて良い。5

サーバー用途

アイドル4Wはだいたいラップトップの水準。 性能的にもラップトップに近いので、ラップトップサーバーと同じようなものだと考えて良いだろう。

N150と同等性能になる第7世代/第8世代Core iを搭載したラップトップはだいたい2万円くらいで、価格的にも近い。6

ディスプレイとバッテリーを搭載していることをメリットとして捉えられるなら、中古ラップトップのほうが良いかもしれない。

ただし、ディスプレイは「場所を取る」というデメリットになりうるし、バッテリーも常時給電するのは気になる可能性もある。 こうした「気にならなさ」がミニPCをサーバーにするメリットのひとつ。

サーバープラットフォームではないので、激しいトラフィックをさばけるようなものではない。だが、ローカルサーバーとしては消費電力が少なく、小さくて静かなのはとてもメリットだ。

ただ、サーバー用途では圧縮と暗号化がかなり比重としては重いため、これらを苦手とするN150はトータルスペックに対してもだいぶ見劣りする感じはする。 ローカルに本格的に重いソフトウェア7を展開するつもりなら、ちゃんと性能が高いサーバー、もしくはPCを用意したほうが良い。

もちろん、AI関係のやつをやりたい場合も適してはいない。

どちらかというと「プログラム自体は軽いが、常時起動しているホストであることが要求である」という場合には大変魅力的だ。 私がメイン用途としているGitホストはVPSにやらせることも可能ではあるが、dnsmasqなどはローカルに必要なので、そういうものがほしい場合は適している。

また、VPSを持っていない人にとってはGitホストや、ジョブスケジューラなど幅広く活用できる。

私は一人暮らしな上にファイルサーバーは別に存在するのでやらないが、家族がいるのなら大容量SSDを搭載してメディアサーバーにするのも悪くない。 LWMPを導入するのもいいだろう。

総評

前提として、Visa Mini V1には

  • 小さい
  • 消費電力がとても小さい
  • 安い

というメリットがある。 これが本機の価値の根幹をなしている。

一方で、圧縮が遅いというのがあらゆる場面で効いてくる。 このピーキーさがなければ評価はもっとずっと高いのにといった感じだ。

このため、普通のコンピュータの感覚で使うことはできない。 ある程度は安価で小さく、消費電力が小さく、そこそこの性能を持ったPCとして使うことができるが、苦手な場面ではもっとずっと性能が低いコンピュータのように振る舞う。 このため、どの程度期待していいかというのが読みにくい。

そして、性能的にはまあそこそこのレベルに留まる。 メインPCとして使うにはそれなりにストレスのある性能をしていると言えるし、4kは割ときつい。 一方でウェブブラウジングなどはそれなりに快適だし、デスクトップでのレスポンスも悪くない。2万円行かという価格、さらにAtom系のプロセッサという情報から想像するよりはずっと普通に使える。

ここに、消費電力の小ささと物理的な小ささがさらなる価値になってくる。

物理的に小さいのでディスプレイがある場所に置きっぱなしにして邪魔ならず、消費電力が小さいからつけっぱなしでも気にならない。 作業方針が定まらずだらだらとつけっぱなしにしても罪悪感が少ないし、ローカルサーバーとしても非常に使いやすい。

近年で「つぶしの効く性能」を求めると最高峰のものを選択するしかなくなってしまっているが、そうなると今度は「大したことしていないのに電気をモリモリ使う問題」と向き合うことになる。 ディスプレイの消費電力があるから完全解決できているわけではないのだが、この気負わない感じはかなりのメリットだとも感じた。

おまけ: 追加されたその他のベンチマーク

hp ProDesk 600 G2 Mini PC / Core i5-6500T

防音室常設になっているSkylake世代のミニPC。 小さいながらもビジネスPCとしての実用性を極めている。

AntutuではCore i5-7500Uと大差ないが、それ以外ではそれなりに差をつけている。 N150が異様に落ち込んでしまったxzのテストでは順当な性能を出しており、逆に言えばA10-7870K以上Xeon W3565未満で処理性能は高くない。

消費電力はアイドル9W、最大で37W(xzのときには43Wに到達)というところで、省電力ではあるため、性能は時代遅れなレベルだが電力効率は全然違うというところ。

ただ、N150のようにブラウザ性能が非常に高いといったこともないため、現代では魅力に乏しい。

Toshiba Dynabook R731/B / Core i5-2520M

Vista Mini V1によって何度目かの退役を迎えたSandy Bridge世代のラップトップ。

相当古いモデルだが、意外にも性能面ではかなり奮闘している。 ほとんどのベンチマークではCore i5-7200Uに勝てないが、肉薄している。 想像よりもだいぶ「普通に使える」性能を示した。

だが一方で、電力効率は話にならないレベルの違いがあり、明確な世代差を感じる。 ちょっと負荷をかけると40Wを越え、Antutuベンチマーク中はデスクトップ並の53Wに到達。 アイドル中もラップトップとしてはやや高く、なかなかつらい。

とはいえ、アイドル時9Wは高性能デスクトップでは出ない値なので、負荷をかけることがほとんどない用途であれば使えなくもない。


  1. 実際にデスクトップ利用している状態で16〜20Wくらい↩︎

  2. 食事をとるときはリビングを使うようにしている。その時に資料を確認したり動画を見たりするためにリビングに42インチのディスプレイがあり、そのためのPCにIdeaPadを使っているということである。↩︎

  3. ひとつはFlex I/Oポートで、購入時にDP, HDMI, VGA等から選択可能↩︎

  4. 未就学児〜小学生程度の子供で、コンピュータに関する特別なスキルを身につけようとしていない場合を想定している。↩︎

  5. 「熱を気にしなくて良い」は「パフォーマンスを出してしまったのでめちゃくちゃ熱い」という思いをしなくて良いという意味であり、Vista Mini V1自体は発熱での性能低下が非常に出やすいので、気にしたほうが良いではある。ちなみに、低下幅としては、Performance governorでPowersave governorとだいたい同程度になる。↩︎

  6. 今ならなぜかCore i5-8265Uを搭載したラップトップが大変豊富である。↩︎

  7. 例えばNextCloudやRetool↩︎