Chienomi

メッセンジャーアプリの使い勝手レビュー アップデート

Live With Linux::software

1年前となる前回の記事ではTelegram, Signal, Session, Wire, Threema., MEGA Chatについて触れた。

前回の記事で新登場したのがThreema.だが、有料アプリということもあって検証は非常に浅い状態となっていた。

今回は各アプリ/サービスのアップデートや、実際に利用しての情報更新を含めて現状を伝えていこう。

前回触れた中で、TelegramとSignalは今回触れない。 依然としてメインで使うメッセンジャーで最も使い心地が良いのはTelegramであるという状況であり、Telegramを使う前提であれば電話番号をIDに使うSignalを使う理由がない。 Signalの挙動には不満も多いし、使っていないとアカウントが消えるのも厳しいのでSignalは私の中では選択肢に入らないものになったからだ。

また、環境の変化として、Discordが理由が不明なBANを行うようになり、非常に選択しづらくなった。このことからメッセンジャーアプリ難民は増えているものと思われる。 今回は触れないRevoltも現状では日常的な連絡に使うのは厳しい。

また、今回通話品質については、Jitsi Meetと比較した上で言及している。

Session

  • デスクトップアプリで日本語入力できない問題は未解決
    • 進展としては、「Jiraでチケット化した」という報告はあった
  • 通話品質は厳しい
    • 音質は非常に悪く、聞き取れないこともある
    • 画質はビットレート低い感じでかなりざらついた画面になる
  • 通話は受け手側が通話機能を有効にしており、かつマイクを有効にしている必要がある
    • マイクを「今回のみ」で有効にしているとかからない
    • 受け手側では通知もなしに不在着信となり、かけてる側はコールしているように見える
  • 全体的にラグが大きく、通知やメッセージがなかなかこなかったりする。通話ラグも大きい
  • 通知が非常に不安定で、バックグラウンド動作させていてもメッセージ受信がこなかったり、通話をかけても鳴らないということが多い
  • 複数デバイスでアクセスしている場合、通話をとったデバイス以外では「不在着信」扱いになる
  • メッセージ同期がWireと似た方式になった
    • 長くログインしていない環境ではメッセージが受け取れなかったりする
  • メッセージはスクショもエクスポートもできない

アカウント作成手順すらなく開始でき、匿名性が高く、アカウントを捨てやすいので「とりあえずの連絡先交換」の適性は非常に高い。 一方で全体的な品質が低いため、頻繁にやりとりするようだと使い勝手がかなり悪く感じられる。 これはメッセージのエクスポートができないといった面でも問題が感じられる。

マルチデバイスに制限がないのは良いところ。 また、ビデオ通話が追加されたことで利用できる範囲は少し広がった。

連絡先交換の最初の入口としては最も適している。 頻繁に連絡を取るようなら他のアプリに切り替える方向で考えると良いだろう。

Threema.

  • 有料アプリ
  • マルチデバイス非対応
  • 通話は良くない
    • 音質はSessionよりは良く聞き取ることはできるが、ビットレートの低いざらついた音質
    • 画質は最初かなり悪い。通信状態が良ければそこそこになる
  • PC適性がない
    • スマホと常に通信し続ける方式
    • スマホがスリープになったりすると機能しなくなる
    • PCでは通話できないばかりか、PCと接続していると通話を受けることができない
  • 通知精度は良い
    • タスクキルで完全に死んでるのでなければ、通話もちゃんと鳴る

有料アプリ、ということでこれを受け入れる人がほんといない。 なおかつ、メインの連絡手段として使うには厳しい品質であるため、勧めるのも難しい。

課金はプラットフォーム単位であるため、一度課金すればいくつでもアカウントは作れる。 というより、マルチデバイスに対応していないため、デバイスごとに異なるアカウントにするしかない。

一方で異なるプラットフォームは別だから、同じアカウントでもAndroidからiOSに機種変した、というような場合は再課金が必要になる。

AndroidはGoogle Play, F-Droid, Threema Shopの選択肢があり、課金する場所だけでなくアプリの入手元も限定されることになる。 個人的にはF-Droidがおすすめだけど、難しいことを考えたくないならGoogle Playのほうがいい。 Huawei AppGalleryにも対応。

また、この仕組み上大陸版ColorOSに搭載されているアプリクローン機能で複数アカウントを運用することはできない。

アカウントが1台のスマートフォンにバインドされるのも難点なら、PCではまるで使い物にならないのも難点。 どうしても長文を打たないといけないときだけ使う程度のもので、基本的にPCはないものと思ったほうがいい。

そもそもPCアプリはElectronでwebを表示しているだけというものになっている。

1台のスマートフォンだけで使うことを想定して考えるならそこまで悪くもないのだけど、メッセンジャーアプリの場合は相手の都合もあるので結構厳しい。

通話品質はSessionよりは良いが、信頼度3(直接接続になる)でテストして音質はそんなによくなかったため、決して良くはない。

一方で1台1アカウントであり、かつ通話をかけるとしっかり鳴るという点から、スマートフォンを複数台保有し、かつSIMが入っていないものがある場合は、行方不明になった端末を探すのに電話をかけるかわりにThreema.でコールできるため、地味に便利だったりする。

価格も5USD/5EUR程度とそんなに高くはないので、とりあえず持っておいても悪くはない。 ただ、現実的な使い勝手としてはThreema.でやりとりするケースはだいぶ考えにくいのが現実。

Wire

  • メールアドレスでアカウント登録
  • 通話は良いほう
    • 音質はこもった感じはあるが、聞き取れる
    • 画質もまあまあ
    • カメラは参加者枠に合わせて画角がクロップされる
    • 画面共有もスマートフォンではクロップされるが、ダブルタップするとフルで表示できる
  • マルチデバイスだが、最大7台まで
    • しかもデバイス管理が非常にやりづらい
  • 結構短期間で自動ログアウトされる。自動ログアウトされている期間のメッセージは受け取れない
    • この仕組み上、web版もあるけどweb版は向いていない

アカウント登録が必要なタイプ。

「自動的にログアウトされる」がかなり厄介で、1週間程度でログアウトされてしまうため、意図せずやりとりできなくなっているケースが非常に多い。

また、マルチデバイスに制限があるのも面倒。そもそもメッセンジャーとしての使い勝手にクセがあって微妙なので、好んで使う気にはそんなになれないではある。

ただ、SessionやThreemaと比べると明確に良い点もあり、それが通話品質が良いことと、PCアプリがまともなこと。

通話の音質はSessionよりは明らかに良く、Threema.とは同じようなもの。 ちゃんと聞き取れるので実用的。 複数デバイスがアクティブだと特定デバイスでしかコールされなかったりはするが、コールの問題もSessionやThreema.よりは軽い。

PCアプリはElectornだが、普通に機能し、通話もできる。 SessionとThreema.がひどすぎるため、結構貴重。

MEGA Chat

  • MEGAのドライブに付属する機能
  • メールアドレスでのアカウント登録
  • 通話は相当微妙
    • フリープランは通話に1時間という制限がついた
    • 音質は悪く、不安定。悪いときは聞き取るのも厳しい
    • 画質はまあまあ良い
    • 画面共有があるが、参加者枠に合わせてクロップされる形であるため共有もクロップされて使い物にならない
  • 通知がかなり優秀
    • 通知できなかった場合はメールで通知される
  • PC版にチャット機能がない
    • ウェブがあるけれど、呼びかけられるようにするためにはウェブを立ち上げっぱなしにする必要がある

ドライブのおまけのようなチャット機能。 どちらかというとコラボレーション/ミーティングツールを意識している感じだが、チャットで送信したファイルはドライブのファイル共有扱いになるため、ファイル共有を軸にして見るとドライブの拡張機能感覚で使える。

フリープランは1時間という制限がつくようになり、50GB時代のアカウントはMEGA Basicという安価なプランが案内されている。 だがその通話は非常に残念で、画角がクロップされるため画面共有は使い物にならず、音質が悪くて聞き取れなかったりする。

良い点としては、通知が優秀なこと。 テキスト主体でやりとりするメディアとしては案外悪くない。

つまり……

とりあえずの連絡先交換にSession、最終的にはTelegram、という形で良いと思うのだが、その中間が結構困る。

やりとりの頻度が高く「1週間空くなんてまず考えられない」ということであればWireでいいと思うのだけど、そうでない場合はWireを維持するための努力が必要になってしまう。

通話はそれこそJitsi Meetのような別サービスを使うという選択肢もあるのだけど、それを前提にしてさえどれも一長一短の感がぬぐえない。