世のギークたちにシンプルグリーンの素晴らしさを語る
製品・サービス::supply
シンプルグリーンとは
深夜の通販番組を愛したオッサンならクイックブライトと共に強烈に印象に残っていることだろう。
「重油に汚染された海洋生物の洗浄や水族館の水槽の洗浄にも使っている」と宣伝していた液体洗剤である。
クイックブライトは白いバケツ入りの固形洗剤で、原材料はノニル、フェノキシ、ポリエトキシル、エタノール、エチレンジ四酢酸ナトリウム、トリポリ三リン酸塩、水分、天然ココナッツオイル、天然ケルプアルジネート、染料。つまりは主に界面活性剤である。
一方のシンプルグリーンは緑色をした液体洗剤で、ほぼほぼ2.5%のポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
界面活性剤の基本知識
界面活性剤は親水基と親油基の分子が結合したもので、これが媒介することで水と油が混ざる。 また、表面張力を弱める。
界面には強い界面自由エネルギーが働き、界面はできる限り表面積を小さくしようとする。 これが界面張力だが、界面活性剤は界面自由エネルギーを低減させる作用があり、これにより界面張力が低減する。
「界面活性剤」が示すことはこれだけである。 しかも、重要な知識として、界面活性剤は非常に多くの種類がある。その大きな理由として、「似ているがちょっと違う」化学物質が界面活性剤ではあるもののその性質は大きく違うとなりやすいからだ。 そのため、「界面活性剤」と言っただけでは界面活性作用があるという以上のことは言いづらい。
界面活性剤の主な目的は洗剤であり、これは疎水性の汚れは水で流すことはできない(というよりも、親水性の汚れは水で簡単に落ちる)のだが、界面活性剤を使えば水に解けるので洗い流せる、というわけだ。 また化粧品など、「主成分が疎水性だが、水分がないと使い物にならない」もの(乳液とか)においても重要な役割を占める。
油分が水に解けて流れる、という作用は生物に対する攻撃性がある。基本的に生物は外側が油分で保護されているからだ。 人間などはせいぜい肌荒れで済む話だが、虫は油膜が重要な役割を果たしているものが多く、対害虫にも活躍する。 体の小さい虫は毒性の強い洗剤には耐えられない上に、油膜保護が効かなくなるために即時影響するという面もあり、害虫退治にはとても役に立つ。が、植物にも効いてしまうので植物保護のための害虫退治には使えない。
細菌に対して効用があるのも同様の理屈である。 また、ウィルスに関してもエンベロープを持つ種に対しては、エンベロープはタンパク質であるから界面活性剤によってエンベロープを破壊し、ウィルスを露出させることで滅することができる。 これは単純に油が溶けるという話に留まらず、タンパク質の可溶化という作用があるのだが、ここは本格的に化学の話になってしまい、私も説明が厳しいので省略する。生物の影響という意味でもこの作用によるところが大きい。 なお、界面活性剤によってノロウイルスのようなエンベロープを持たないウィルスを除去することはできない。 また、タンパク質の可溶化のためには界面活性剤の濃度が高い必要があり、希薄な洗剤や界面活性剤含有率の低い洗剤では効果を発揮することができない。
ほとんどの洗浄物質は界面活性剤である。 界面活性剤万能説を唱えてもいいくらいだ。 他は低年度の油(エタノールとか、パーツクリーナーとか)か、強塩基か、酸ぐらいしかない。そして、これらと比べると界面活性剤は安全で使いやすい。
根本的に洗浄とは「水に流すことである」ということを認識しておく必要もあるだろう。 直接水をかけられない場合でも、水分に解ければ水分と共に拭き取ることができる。
広く使用されていた界面活性剤が海洋生物に対する攻撃性のあるものであり、それ自体作用は弱いものであるが大量に海に流したことで問題になったこともある。このことと、化学に対する無理解が重なって界面活性剤はオカルトの一種として忌み嫌われていたりする。
なお、界面活性剤の多くはアルコールであるが、アルコールが殺菌作用を持つのはアルコール濃度で一定の範囲にあるときであり、この場合アルコールは媒介でしかないから「アルコール洗浄の効果」があるわけではない。
アルコールエトキシレート
アルコールエトキシレートは同様の用途に使用されていたノニルフェノールエトキシレートやオクチルフェノールエトキシレートと比べ海洋生物に対する攻撃的な作用がないことから、これらの代替として(海に流しても安全な洗剤として)使われている。
このあたりがシンプルグリーンが海洋生物に大して安全であることを大々的に宣伝するポイントになっているのだろう。 ただし、アルコールエトキシレート自体は別に珍しいものでもなくて、まあまあ存在する。が、製品の選択肢が狭いのは事実。
アルキル基の炭素数が12-15のものに関しては排出規制がある。
シンプルグリーンの特長
環境への作用が低いことは、我々が日常使う上であまり気にするような話ではない。
シンプルグリーンの良いところは、
- 希釈が可能で
- 泡立ちが非常に少なく
- 容易に拭き取れる
ということだ。
広く利用できるように希釈済みで販売されているRTUタイプは約8倍希釈で界面活性剤0.3%である。
この8倍希釈シンプルグリーン、テーブルなど「シュッと吹いて拭けば綺麗」というお手軽さである。 ほぼひと拭きで拭き取れるし、それでだいたい綺麗になる。
普通は希釈せず使うことはないが、2.5%というのは台所洗剤としてもやや低めくらいの話である。 ぶっちゃけ洗剤の類では台所洗剤が最強であり、界面活性剤6%クラスの台所洗剤が何より汚れを落とす。
のだが、台所洗剤というのは拭き取りが非常に難しく、水をかけて洗い流せるものでしか使えない。 ハンドソープはそれよりはマイルドだが、やはり水洗いができるものにしか使えない。
それと比べてシンプルグリーンは拭き取りが非常に簡単で、エタノールによる洗浄とあまり変わらない感覚で使える。 もちろん、タンパク質の可溶化作用の弱い非イオン界面活性剤であるし、8倍希釈で0.3%にすぎないから細菌やウィルスを滅する作用はあまり期待できない。 のだが、そもそも手洗いは手洗いによって細菌やウィルスが死滅するから衛生的なのではなく、細菌やウィルスを水で流してしまうから衛生的なのである。これらは汚れの中にいることが多いから、汚れを拭き取ってしまえば、細菌やウィルスも汚れとともに取り去ることができる。もちろん、完全に、ではないし、死滅しているわけではないから拭き取りに使ったものをそのままにして繰り返し使うようなことは避けるべきだが。 (タオルであれば洗濯することによって死滅させると共に洗い流してしまう効果が期待できるだろう)
原液の価格はなかなか高いが、実際のところ希釈するのでとくに高いということもない。エタノールのような気軽さで、エタノールよりも安く使える。エタノールのようにすぐに乾いてしまうわけでもないのでぶわっと吹いて拭き取るのがしやすいし、キーボードなどの脂汚れの除去にも適している。
また、アルコール耐性菌の問題も考えるとエタノール乱用は汚臭の原因にもなる。 シンプルグリーンで拭き取ってしまうのは賢い。
スマートフォンはエタノールによる消毒のほうが適するが、アクリルはエタノールに弱い。 カメラレンズやカメラカバーなどにアクリルが使われているのなら、シンプルグリーンのほうが良いだろう。 ただし、浸透を防ぐため、直接吹きかけてはいけない。
また、液晶ディスプレイもエタノールは避けるべきであるから、これもシンプルグリーンが活躍する。 こちらも直接吹きかけてはいけない。
床掃除でもシンプルグリーンを適当に吹いてフローリングワイパーで拭くのはとても強力だ。 さらに、汚れがしみてしまったカーペットやチェアも、シンプルグリーンをたっぷり吹いて叩くことでかなり綺麗にできる。 特にカーペットの汚れ落としには非常に威力を発揮する。
原液はギトギト汚れにも使えるようなものである。 さすがにパーツクリーナーや台所洗剤が勝るため、ギトギト汚れで活躍するシーンは少ないが、高い洗浄力も助かる。
この万能性、洗浄が面倒なデバイスが多い人には有用なはずだ。