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プロジェクト成果物で知られるLinuxディストリビューション 10選

Live With Linux::newbie

本記事では、メジャーかマイナーかを問わず、プロジェクトの成果物がそのディストリビューションの枠を越えて愛されている、という状況にあるLinuxディストリビューションを取り上げる。

古くは、PlayStation3上で動作するLinuxとして開発されたYellowDog LinuxのRPMパッケージ管理フロントエンドであるYUMが、RPMの本家Fedoraに採用され非常に有名なものとなった、というような例もある。 この場合YellowDog Linuxよりもyumのほうがずっと有名であり、YUMが優れたプロダクトであったかどうかはともかくとして、影響力のある成果物であったのは確かだ。

YUMはあまりにも極端な例だが、そこまでではなくともディストリビューション外で広く利用されているもの、あるいは他のディストリビューションでも人気があってユーザーがいるものを取り上げようと思う。

なお、私が知らない、もしくは思い出せていないだけで、もっと有名なソフトウェアが何かのディストリビューションの成果物であり、現在もそのディストリビューションでメンテナンスされている、というようなこともあるだろう。 もしそのようなものをご存知であればコメントをもらえると嬉しい。

Linux Mint

Linux MintはUbuntu、またはDebianをベースとし、トップクラスに人気の高いLinuxディストリビューションだ。

Linux Mintはユーザーフレンドリーを標榜し、それを実現するためにふたつのデスクトップ環境を独自に提供する。

ひとつはMATEだ。 MATEはGNOME2からフォークしたものだ。marcoはMetacityのフォークだが、gtk+2ではなく、現行のGtk3を使うようになっている。 MATEのルック&フィールはおよそGNOME2そのものだが、中身は刷新され、機能的にもモダンなものになっている。

もうひとつがCinnamonだ。 カスタマイズされたGNOMEシェルとして出発したCinnamonは、現在はGNOMEに依存しない、完全に独立したデスクトップ環境となっている。 トラディショナルな操作感と優れた機能性が魅力だ。

どちらも自然で使いやすく機能的で人気のあるデスクトップ環境となっている。

Gentoo Linux

Gentoo Linuxは人気のある独自のLinuxディストリビューションである。 パッケージをソースコードからビルドする仕組みのため、Linuxユーザーの中でも特にコアなユーザーに好まれる。

Gentooの成果物で影響力があるのがそのパッケージシステムと、OpenRCだ。

パッケージシステムは直接に採用されることは稀だが、BSD系Unixなど広く影響を与えている。 今ではbrewに押されているが、macportsもそのひとつである。

そしてOpenRCはSysVinitを現代的に拡張するシンプルなソフトウェアである。 自身にinitを持っており、OpenRC単独でも利用することができるが、他のinitと組み合わせることもでき、特にSysVinitとの組み合わせが有名だ。 あまりうまくいっていないが、Systemdと組み合わせることも可能である。

SystemdがLinux専用なのに対し、OpenRCは幅広いプラットフォームのinitと組み合わせられる。 Systemdが嫌いな人/ディストリビューションにおいてOpenRCが採用される場合があるほか、FreeBSD, NetBSDにおけるinitとして使うことも可能となっている。

Arch Linux

Arch Linuxは非常に人気の高いLinuxディストリビューションで、トップクラスに人気の高いManjaro Linux, EndeavourOSのベースともなっている。

Arch Linuxの成果物として大きな影響力を持っているのがそのパッケージシステムだ。

PKGBUILDというファイルを使うパッケージシステムは非常に取り扱いやすく、依存関係の解消方法など非常に扱いやすいフロントエンドのpacmanも秀逸だと見られている。

例えばWindows上で動作するUnixエミュレータであるMSYS2のパッケージ管理にも用いられている。

Solus

Solusは独自のLinuxディストリビューションで、パッケージ管理にはeopkgというPiSiのフォークを用いている。

その大きな成果物はBudgieデスクトップ環境だ。 BudgieはGNOMEベースであり、GNOME感が出ているが、GNOMEと比べると普通のデスクトップ環境に近い。 非常にスタイリッシュな見た目が人気のポイントだ。

BudgieデスクトップはGNOMEの変更への追従が困難ということで、Qtベースに生まれ変わろうとしていた。 だが、リソース不足から結果的にSolus自体の停滞を招いてしまった。 現在はBudgie Qtは諦めたようだ。

Deepin

DeepinはDebianベースのLinuxディストリビューションで、QtベースのDeepin Desktop Environment(DDE)が特徴だ。

DDEは以前はGNOMEベースだったが、現在は基本的にQt5ベースになっている。 現状では依存しているものがGtk3だったりQt5だったりするが、いずれQtに揃っていくだろう。(というより既にだいたい揃っている。) 「Windowsからの乗り換えで違和感がない」がウリのディストリビューションだが、ルック&フィールは非常にMacに似ている。

DDEはDebian向け、Fedora向けのパッケージングを公式に用意していることも人気を支えている。

Zorin OS

Zorin OSをUbuntuをベースにしたLinuxディストリビューションだ。

基本的に、UbuntuのRemixが流行ったときに、少年たちがWindows風のルックスにカスタマイズしたものを配布・販売したところが出発点である。現在もUbuntuのリポジトリに相乗りしている。

現在でもWindows風のルックスと、設定ウィザードなどが特徴であり、逆にいえばそれくらいしか特徴がない。 それ以外はよくあるUbuntuのフレーバーだ。

しかし、Zorin OSのルックスは多くの人に魅力に映る。 年数がたって洗練されたこともあり、デザインテーマなどが人気となっている。

Bodhi Linux

Bodhi LinuxはUbuntuベースの軽量ディストリビューションである。

もともと、Enlightenmentをカスタマイズして使っており、Enlightenmentを最高に使いこなしているディストリビューションとして有名だった。

現在はEnlightenmentの活用を越え、MokshaというEnlightenmentフォークのデスクトップ環境を採用している。 MokshaをBodhi Linux以外で見かけることはほとんどないが、Enlightenmentユーザーに対する貢献度は大きい。

Elementary OS

Elementary OSはUbuntuベースのLinuxディストリビューションだ。

その特徴であり、成果物がPantheonデスクトップ環境だ。 Pantheonは部分的にGNOME3をベースとし、そこからフォークへと進んでいる。つまり、Cinnamonと同じような存在である。

Cinnamonとの違いは、CinnamonのアプリケーションはCinnamonデスクトップとは疎であるのに対し、PantheonアプリケーションはPantheonデスクトップに対して非常に密であることだ。 Pantheonは多くのアプリを持っているわけではないが、エッセンシャルなものを備えている。

なお、Pantheonは少々珍しいVala言語で書かれている。

Q4OS

Q4OSはDebianベースのLinuxディストリビューション。

Q4OSは他と違い直接の成果物で知られるわけではない。 だが、Q4OSの存在はTrinity Desktop Environment(TDE)を支えている。

TDEはKDE3のフォークであり、MATEのKDE版のような存在だ。 ただし、MATEがGTK3に対応したのに対し、TDEはQt3をフォークし、TQt3というライブラリを使用している。 全面的にリブランディングしているが、フォークすればそれで動くというわけではなく、当然ながらC++ライブラリ(例えばGCC)などは新しくなっていくわけで、古いコードを全面的にメンテナンスするという厳しい道となっている。

現在はだいぶ安定したが、ビルドが困難な状況なども存在した。 Trinity Desktop EnvironmentはMATEと違って知名度もなく、他のディストリビューションで採用されることもなかった。 そのためにプロジェクトが終了してしまってもおかしくなかったのだが、Q4OSが一貫して採用しつづけたために知名度も上がり、人気も上がってきた。Q4OS自体の人気が向上したこともあるし、Q4OSに触れるという方法でTDEを試すことができたのも大きい。 (ほかのディストリビューションでTDEを試すのは容易なことではなかったからだ)

grml

grmlはDebianベースのライブLinuxである。システムレスキュー系のディストリビューションであり、通常利用を想定したものではない。

grmlが優秀なのは、そのZshの設定である。 Arch LinuxのZsh設定パッケージとして採用されているというのが大きく、その知名度が高い。 採用理由は、制限の厳しいレスキュー環境で効率的に扱えるようにカスタマイズされた設定が素晴らしいからに他ならない。