Chienomi

Linux的機能視点でのLinuxデスクトップ環境比較 2020

Live With Linux::software

Windowsユーザーは知る由もないし、LinuxユーザーでもLinux時間が短い人は知らなかったりするが、Linuxのデスクトップは非常に便利で使いやすい操作がたくさんある。

もちろん、個々は驚くようなものではないが、それらの便利な機能、快適な操作に慣れるとWindowsでそのような操作ができないことに非常にストレスを感じたりするほどだ。

個人的にはAlt+ドラッグとボリュームスクロールはついついWindowsでもやってしまう操作である。

今回は主要な4つのデスクトップ環境について、そのような「Linuxにある快適なデスクトップ操作」について比較したいと思う。 今回はMATE, Deepin’, Budgieについてはナシだ。

比較表

機能 Gnome Cinnamon Plasma XFce4 (Gtk3)
タイル 左右ステートレス 8方向ステートフル 8方向ステートレス 8方向ステートレス
スクリーンショット 直接保存 3ステート Spectacreの起動1 XFce4 Screenshooterの起動2
ファイルインデックス tracker Baloo
Alt+ドラッグ移動 Super+ドラッグ
Alt+右ドラッグリサイズ
PAスクロール3
PAミュート4 中クリック(設定) 中クリック
Alt+F2 コマンド コマンド 検索 コマンド+履歴
通知 非スタック圧縮5 非スタック スタック スタック Quietあり
pinウィンドウ
belowウィンドウ
ウィンドウシェード
強制ボーダーレス
全ワークスペースに表示
Super+N6
ウィンドウスナップ
ナイトモード7

説明

GNOME

スクリーンショット

PrtSc一発でファイル保存される、シンプルだけど最も望まれる挙動。 Altによるウィンドウ、Shiftによるエリアのキャプチャもできる。

可能ならGNOME Shellのインターフェイスを使って取得する。

ショートカットキーはGnome Screenshotの呼び出しで、コマンド自体は遅延実行や保存場所指定なども可能。

保存される場所に関してはgsettingsで設定できるが、ファイル名は指定できない。

全画面表示

全画面表示しているスクリーン内にDockがあるとき、今フォーカスしているウィンドウが同スクリーンにある場合のみDockを表示する。(Macみたいな帯は表示しない)

Super+N

Super+Nのとき、対象のアイコンに番号を出してくれる。

ただ、数字キーを押してから表示されるので、実用性はいまいち。

Window ready

ウィンドウを生成するプログラムをランチャから起動してから同ウィンドウが表示されるまでの間に既存のウィンドウにfocusするとウィンドウがメインループに入ったら教えてくれる。

主に、起動に時間がかかるブラウザなどで役に立つ。(特に最大化や全画面化している場合)

ワークスペース

Alt+F1がExposeになっているのだが、このとき右側にワークスペースが表示され、ワークスペースのスイッチも可能。 さらに検索によるランチャも兼ねている。

多機能なようだが、CinnamonがAlt+F1->Nで任意のワークスペースに直接、一瞬で切り替えられるのと比べるとマウス操作が必須で特にラップトップだといまひとつ操作しづらい。

ウィンドウスイッチャ

スタイルの設定ができない以外は、基本的にCinnamonと同じ挙動。 (というよりも、CinnamonがGNOMEを拡張したウィンドウスイッチャになっている)

ウィンドウの整頓がしやすく非常に使いやすい。

Cinnamon

タイル

非常に独特な挙動のタイリング。

8方向にタイルできるのだが、現在のウィンドウの状態に従ってタイルするステートフル型。 Super+カーソルでカーソル方向にタイルし、そこからコーナー方向(例えば左右へのタイルなら上下)にタイルするとエッジタイルになる。 コーナータイルから引き剥がす方向にすればエッジタイルに変更することもできる。

エッジタイルから引き剥がす方向にタイルするとタイルが解除される。

8方向タイルはショートカットキーの設定に非常に困るが、非常に使いやすい設定だ。

スクリーンショット

スクリーンショットはGnome Screenshotを使うようになっている。 ショートカットキーとしては全体、ウィンドウ、エリアの3つ。

電源コントロール

  • ディスプレイを切るまでの時間
  • サスペンドするまでの時間
  • ふたを閉じたとき

を電源接続時とバッテリ駆動時で設定でき、

  • 電源ボタンが押されたとき
  • バッテリーが残りわずかのとき

の設定もできる。 バッテリー残量がわずかの場合、即座にシャットダウンするかどうかの設定のみが可能。

リッドクローズ時の動作は外部ディスプレイ接続時にも行うかどうかを選択可能。

これとは別の項目として、バッテリー駆動時に操作がない場合にディスプレイを暗くするかどうかの設定がある。 これは、時間と輝度について設定が可能だ。

メディアコントロール

ボリュームアプレット上でプレイヤーの再生をコントロールできる仕様。 メディアコントロールはロック画面上にも表示される。

このコントロールがかなり細かくて、結構使いやすい。ほとんどの場合、アプリを開くまでもなく利用できる。

カレンダー

単純なカレンダーの表示。

開始曜日は日時の設定のほうから(Cinnamonのグローバル設定として)指定できる。

ワークスペース

Alt+F1でワークスペース表示になり、選択で切り替えることができる。

全画面表示

全画面表示のウィンドウが前面にある場合にそのディスプレイを覆うように表示する。

同一ディスプレイ上に全画面表示のウィンドウより前にraiseされたウィンドウがある場合、パネルなど他コンポーネントを表示する。

ウィンドウスイッチャ

Cinnamonといえばウィンドウスイッチャ。 この使い勝手が大変良い。

というのも、

  • スイッチャを起動すればカーソルでもウィンドウの選択が可能
  • スイッチャの操作はマウススクロールでもできる
  • スイッチャがどのように動作するかは設定可能
  • スイッチャ上でQすると(Altはホールドする必要があるため、実際としてはAlt+Q)スイッチャを維持してウィンドウを閉じる

という機能がある。

Plasma Workspace

タイル

8方向タイルが可能で、コーナータイルのキーバインドはデフォルトでは設定されていない。

4方向タイルのショートカットキーはSuper+カーソルで、ステートレスだけれど、タイル方向にもう一度タイルしようとするとタイルが解除される仕様。

カレンダー

曜日の開始はロケールによる固定。

イベントを表示する機能があるが、この編集にはKDE PIMが必要。

大きな特徴として祝日に対応しており、祝日の表示が可能。

電源管理

設定可能な項目が非常に多く、まず

  • 電源接続
  • バッテリー
  • ローバッテリー
  • アクティビティ

の4項目でそれぞれに設定可能である。 アクティビティが任意に増やせるため、「プレゼンテーション」などの状況を追加できる。

そして、

  • 当該項目が適用になったときのディスプレイ輝度
  • 当該項目が適用になったときのキーボードバックライト輝度
  • 輝度を下げるまでの時間
  • ディスプレイを切るまでの時間
  • 自動サスペンドまでの時間
  • リッドクローズのアクション
  • 外部ディスプレイ接続時にリッドクローズアクションを実行するかどうか
  • 電源ボタンが押されたときのアクション
  • スクリプトの実行と、実行条件
  • Wi-Fiの状態
  • モバイルブロードバンドの状態
  • Bluetoothの状態

の項目が設定できる。

low batteryとbattery criticalの定義は別に指定可能で、battery critical時は

  • なにもしない
  • スリープ
  • シャットダウン

の3択。

「サスペンド時にメディアプレーヤーを一時停止する」という項目があるのもおもしろい。

全画面表示

全画面表示のウィンドウが前面にある場合にそのディスプレイを覆うように表示する。

同一ディスプレイ上に全画面表示のウィンドウより前にraiseされたウィンドウがある場合、パネルなど他コンポーネントを表示する。

同一ディスプレイ上で全画面表示のウィンドウよりraiseされたウィンドウが生じた場合、全画面表示ウィンドウがふたたびディスプレイを覆うためには全画面表示ウィンドウをraiseしなければならない。

ウィンドウ操作

ウィンドウボーダー右クリックからのConfigure Special Window SettingsとConfigure Special Application Settingsが強烈。

実用性はそれほどないが、ウィンドウを一発でフォーカスするためのショートカットを割り当てられるため、作業のために決まったウィンドウレイアウトを用意して、これらのウィンドウを維持したまま作業する人にはよさそう。

XFce4

タイル

8方向へのステートレスショートカットだが、デフォルトでは設定されておらず、設定が必要。

電源コントロール

各ボタンとリッドの設定が可能。 ボタンに「スリープボタン」「バッテリーボタン」などがあるのが特徴。

スリープは一律「スリープ」という概念にハイバネートとサスペンドがまとめられ、スリープの意味するところをバッテリ駆動と電源供給時で分けて定義する形。

バッテリークリティカルは該当する残量を設定でき、サスペンド/ハイバネート/シャットダウン/問い合わせの4択。

ディスプレイコントロールも電源接続をわけて輝度、ブランク、スリープ、電源断と細かく設定できる。

ワークスペース

Ctrl+Alt+カーソル/PgUp/PgDn、あるいはデスクトップ上でホイールスクロールで切り替え。

どちらも暴発しやすく、キーボードのほうはショートカットがかぶりがち。

ウィンドウマネージャ

今どき珍しくシェードがある。 ただ、シェードを歓迎する人はあまりいないようにも思う。

全画面表示

全画面表示のウィンドウが前面にある場合にそのディスプレイを覆うように表示する。

全画面表示のウィンドウの他にfocusされたウィンドウがある場合、パネルなど他コンポーネントを表示する。 これは、異なるディスプレイ上であっても、ウィンドウがディスプレイを覆うのはfocusされている場合のみ。

総評

GNOMEはLinux的な操作の多くが無効になっており、使い勝手はよくない。 レガシィなものを排除しようと考えているのはわからないではないのだが、例えばsystrayがないといったことは直接的に困る。GNOMEの考えに賛同しない者に対して排除的になってしまっている。 伝統的な機能や操作に対しても否定的であり、Windows的な機能も少ないが、一方でiOSやMac OSを彷彿とさせる要素は割と多い。

Cinnamonは操作可能な項目こそ少ないが、ツボを得た作りと、ユーザーの直感に正確な振る舞いによって非常に快適。 ファイルインデックスもなく、ユーザーがコントロールしやすいのも魅力。 ただ、外観に関してはかなりシンプルで面白みがない。

Plasma workspaceは細やかだが、かなり細かく設定しないとその実力を発揮できない。 XDGディレクトリを尊重しないことなど細かな点で気になるところがあるほか、KRunnerの動作速度が遅く、アイコンをクリックするほうが早いあたりが気になる。 依然として最もスタイリッシュであることは魅力的だ。

XFce4は、ユーザーの意図に反した微妙な振る舞いなど「残念感」がどうしても漂う。 とはいえ4.14になって大部分は解消された(例えばデスクトップアイコンのラベルが複数行になるなど)が、 マルチディスプレイの全画面表示の振る舞いなど微妙な点はまだ少し残っている。 ビデオカードのアクセラレーションをあまり積極的に使わないため、軽いとは言い難い点も難点。

なお、これは私の好みによる偏見が多いに含まれている。 「こういうことはこのデスクトップ環境でしかできないよ!!」という愛好家の意見があれば、ぜひどしどしコメントに書いてほしい。