Linuxデスクトップ環境の比較
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序
Linuxデスクトップ(Unix系デスクトップ環境)の使い心地というのは使いこんでみないとコメントもできないものなのだが、なかなかその特性を理解するまでそれぞれを使い込むのも難しい。 特にまだLinux歴の浅い方はどれを選んで良いのかわからないこともあるだろう。
そこで現行のデスクトップ環境からメジャーなものについて、私が感じる良い点、悪い点をまとめてみた。 あくまで私の視点なので、異なる意見もあるだろうが、そこはあくまで1ユーザーの意見とご了承願いたい。
また、MATE, Deepin’, Pntheon, Budgie, Lumina, LXDE, LXQtなどの他のデスクトップ環境、あるいはEnlihgtenment, fvwm, i3, awesomeなどの他のウィンドウマネージャがあることは承知しているが、私が普段使っていないのでコメントするレベルにはないことも、併せてご了承願いたい。
GNOME
良い点
- Waylandに最も良好なフィーリングを見せる
- スクリーンショットツールがとても使いやすい
(ただし設定は
gsettings
コマンド) - ウィンドウボーダーのデザインが豊富で、良いものが多い
- ランチャーがコマンド実行になっており、検索前提のアクティビティ機能と相性がいい
- Gnome Keyringは様々なキーをいい感じに管理してくれて使いやすい
悪い点
- 設定の大部分が隠されており、テーマ設定などの基本的な設定もできない。また、壁紙もコマンドを打たない限り
$XDG_PICTURES_DIR
直下の画像ファイルに固定されている - ウィンドウタイリングが左右にしかできない
- ウィンドウフィッティングが弱く、表には設定もない
- Nautilusで右クリックにおけるアクションメニューが簡単に設定できるようになっていない
- Alt+マウスドラッグによるウィンドウ操作ができない
- メニューが非常にわかりづらく、メニューが少なすぎて必要な機能を満たさない
- 「1画面しかなくて、1画面に1アプリしか表示しない」が基本なので、ウィンドウはクローズボタンしかない
- アクティビティ機能はプログラムをカテゴリ分けしてくれないので、探すのが非常に辛い
- ウィンドウスイッチャがなく、常にアクティビティから切り替えるかタスクスイッチャから切り替えることを求められる。カレントウィンドウのメニューは表示されるが、マルチディスプレイの場合はプライマリディスプレイ以外無視される
- 設定がホームディレクトリ以下になく、バックアップしづらい
捕捉
私はGNOMEが好きではないので、すごく否定的な意見であると考えてもらっていい。 「Linuxなら出来て当たり前だったことをわざわざできなくしている」ことに私は好感を持てない。
Gnomeアプリケーションにはいくらか魅力的なものもあるけれど、デスクトップコンピュータ、とくにマルチヘッドディスプレイや、大画面で使うのに適したものだとはとても思えない。
Gnomeはパソコンよりもタッチデバイスを優先しているのだと感じるし、パソコンもせいぜいが今風なラップトップのみを想定しているといったところだろう。 そして、様々な機能を要求に応じて使いこなす努力するユーザーではなく、機能を使う気がなく、機能を与えてほしくないルーザーのみに親切、という印象である。
ただ、それは解消不能な一部の問題(例えばウィンドウタイリングやAltマウスイベント)を除けばgconfなどによって解消することができ、 およそ「Windowsでレジストリをいじる」のと同じレベルで操作することにより、ユーザーによっては満足できるものに仕上げることもできるだろう。
Cinnamon
良い点
- 非常に使いやすいウィンドウタイリング。 Super+カーソルで「現在の状態を基準にカーソル方向へタイルする」という挙動。また、タイルした状態でリサイズもできる
- ウィンドウタイリングしたあとウィンドウを移動すると元のサイズに戻すようになっている。これは、タイル状態でリサイズした場合も同様で、タイルにウィンドウサイズのステートが影響されない
- 軽い。 ハードウェアアクセラレーションが効くためXFceと比べても格段に軽い
- ウィンドウフィッティングが設定可能で、かなり使いやすい。タイルしたウィンドウに対してもフィットするため大量のウィンドウを並べるのも楽
- Alt+左ドラッグ(move), Alt+中クリック(windows menu), Alt+右ドラッグ(resize)全てに対応している
- 設定項目はやや少ないが、必要なポイントは抑えていて「ほどよい曖昧さ」になっている。設定が大変ではなく、かつ必要な設定はできる傾向がかなり強い
- Gnomeのメリットだったスクリーンショットと鍵管理はGnomeと同じものを使用しており、同じメリットが得られる
- Nemoアクションがiniファイルになっていて、結構書きやすい (ただ、現在ちょっとバグってもいる)
- ウィンドウラベルのマウススクロールに対して細かな設定が効く。アルファ設定も可能
- Nemoが単独で動作し、軽いファイルマネージャでありながら、gvfsによるマウントにも対応していて使いやすい
- Alt+F1でワークスペース選択になるのが便利。数字キーで選択できる
- マルチヘッドディスプレイでフルスクリーンにしているとき、パネルは「パネルがある画面上でフォーカスされているのが他のウィンドウであるときのみ表示する」という理想的な振舞い。フォーカスウィンドウはフルスクリーンウィンドウより前にくる
- 選べるデスクトップアニメーション
- 純粋なコマンドラインのランチャと、検索可能なメニューの組み合わせ
- 左右へのパネル配置に比較的強い
- 合理的な「フォントはDPIではなく倍率で設定させる」
- DPのプラグアンドプレイ問題で「復帰できない変更をされる問題」が比較的少ない
- ボリュームアプレットがマイクのミュートコントロール、デバイス選択、プレイヤーコントロールまでできる便利設計
- フォント設定機能がフォント数が増えても軽く、使いやすい
- ファイルダイアログが未選択状態でキータイプを始めると直接パス入力できる仕様
- Conkyの表示が一番安定している
- ウィンドウスイッチャからQで直接ウィンドウクローズが可能
悪い点
- 通知を1件ずつ表示するため、大量の通知がある場合いつまでクリックしても終わらなくなる
- 通知の有効期限をスクリーン上ではなく通知エリア上の時間として扱う。これは、恐らく正しくない
- 壁紙がウィンドウごとではなく共通である。設定が楽、ディスプレイ認識でおかしなことにならないというメリットはあるが、残念には感じられる
- ウィンドウデコレータがMetacityベースでデザインがあまりよくない
- アプレット機能があるものの、動作しないものが多く、ほとんど役に立たない
- 起動がやや遅い
捕捉
基本的に「すごくいいバランスで、うまい具合に作られている」のがCinnamon。 機能豊富というわけではないのだが、GNOMEやKDE Plasmaのように主張をぶつけてくる感じではなく、「どうあるのが自然か」「どうなっていれば使いやすいか」ということに向き合って作られている感じがする。 (ただ、Cinnamonはissue reportに対して割と対応は冷たいのだが)
ほとんどの場合要求を満たすことができ、完全ではないが不満というほどではないという状態を作るのがうまい。 至らないところもあるが、使い勝手なら最高だと思う。私は何に移ってもCinnamonに戻ってきてしまう。
ややいまいちだったウィンドウスイッチャは、Windows7以降と同様のアイコンスタイルのものが導入されて使いやすくなった。 グループに対してはホバー時だけでなくクリック時にウィンドウリストを表示する機能もあるが、これはまだbuggyである。 垂直表示を有効にしていると、ウィンドウグループを縦に表示し、さらにそのウィンドウから派生したウィンドウは水平に表示するという器用さを見せる。 懸案だった「.desktopファイルに書かれている情報を使ってくれない」という問題も解消してくれている。
ClutterとNemoの出来の良さが圧倒的で、総じて非常に使いやすい。派手な機能はないが極めて実用的だ。 Cinnamonの欠点を探してみたのだが、これといってあまり見つからなかった。以前はいくつかあったのだが。それが戻ってきてしまう理由かもしれない。
KDE Plasma
良い点
- 非常に充実したアプリケーション群でクオリティも高い
- 非常に充実した設定項目。特に電源管理が優れている
- KIM Panelが格段に使いやすく、Fcitxのウィンドウも統合されていて入力が快適
- Alt+マウスドラッグによる操作をカスタマイズできる
- デザインが良い
- KDEパネルは機能が多彩で、ウィジットも強力
- 0.1倍単位のUIスケーリング。Gtkアプリケーションにも対応する
- 検索のみではあるもののランチャもメニューも強力な検索で使いやすい
- KDE Walletはウェブブラウザのパスワードを一括して管理してくれるので安心感がある
- 設定ファイルが素直にホームディレクトリ以下にあるためバックアップしやすい
- Qtの利点を活かした非常にスムーズなスクロール
- ディスプレイ接続時のアクションが良好で、プレゼンなどでプロジェクターを使うときにも使いやすい
- ディスプレイを「重ねて配置」できる
- ウィンドウフィッティングが非常に素晴らしく、ピタッとウィンドウを並べることができる
- フォントレンダリングに手が入っているのか、ちょっと綺麗
- 通知の扱い方が適切で使いやすい
悪い点
- やや不安定
- サイズの異なるディスプレイを並べると、ディスプレイ位置がおかしくなったり、パネルを失ったり、壁紙を失ったりする
- ディスプレイの再接続時に本来のディスプレイ設定に復帰しない
- よくアイコン位置がおかしくなる
- プラズマにログインしてからログアウトし、再度プラズマにログインするとスケーリングがおかしくなる
- Balooを有効にしているとキャッシュファイルなども画像に含められてしまい困る上に、inotifyの上限に到達してもさらにファイルを追加するためシステムが終わる
- AkonadiやKDE PIMは便利ではあるけど、「いらないことをする」感じも強い
- KDE WalletがGnome Keyringのように暗黙にSSHエージェントのように振る舞わない
- 設定が独特で、XDG標準を遵守しないし、XDGディレクトリもあまり尊重しない
- Dolphinはアクションを追加するのも面倒で、XDGディレクトリを無視し、ブックマーク機能はない
- ウィンドウタイリング後にウィンドウを移動すると、ステートはタイルされていないことになるが、元のサイズには戻らない
- 壁紙の設定が面倒。フォルダの追加は知識が必要で、全部まとめられるので
捕捉
理想は高く、理想に届かないKDE Plasma。 KDE Applicationsに満足するか否かが分かれ目になる。
ウィンドウフィッティングはCinnamon以上に良好で、ウィンドウを並べるのは得意。 ただし8方向タイリングはショートカットキーの設定が必要になる。 一応、マウスでエッジに持っていくとタイリングしてくれるのだが、位置が割と狭くてやりづらい。
大きな欠点だった「等幅フォントにデュアルスペースフォントが設定できない」は、spacing >= 90にするのではなく、spacingを無視するオプションを加えて対応している。
うまく噛み合っていれば使いやすいのだが、噛み合わないことが多いKDE Plasma。 状況がハマれば使いやすいため、私はラップトップではKDE Plasmaを使用している。
なお、KWalletでブラウザの鍵を管理すると、ブラウザはこれまで管理していた鍵を捨ててしまう。 逆にブラウザに管理させるとKWalletで使えなくなる。だから他のデスクトップと行ったりきたりするのには最大の障壁になる。
systray問題として深刻だったsniについても、現在はおよそ問題のない状態になっているようだ。
特にスケーリングの自由度は大きなメリットと言っていいだろう。 電源管理の柔軟さと併せて最新のラップトップには適しているように感じる。
KDE4時代の癖のあった特徴的な機能は下げられている。そのため、積極的にKDE Plasma workspaceを使う理由を損ねたという印象もある。
相変わらずbuggyな部分も残念だ。Balooは非常に振る舞いに問題があり、オフにしておくのが無難だろう。
XFce4
良い点
- Alt+左ドラッグとAlt+右ドラッグに対応
- パネルウィジットのアプリケーションメニューが独自メニューを設定できるため、引き出しとして使用できる
- 「ランチャー」ウィジットは副項目を設定でき、やっぱり引き出しとして使用できる
- XFce4 Terminalの使い勝手が良い
- やたら積極的で便利な「透明度」設定。透明ウィンドウ好きにはたまらない
- ThunarがSFTPに対応している
- ディスプレイの「ブランクスクリーン化」と「電源off」が分けられていて、DPプラグアンドプレイに悩まされている場合は便利
- 自動起動にそれとわかるように他のデスクトップ環境のものが選択できるようになっており、Gnome Keyring SSH Agentを使うということもできる
- 8方向タイル可能。ただしタイルのショートカットキーは全く設定されていない
- デスクトップ右クリックでデスクトップコンテキスト(アプリケーションメニューつき)、中クリックでウィンドウリストと結構便利
- アプリケーションファインダーがコマンド実行で候補検索を含み、展開すると(Alt+F3でこの状態でスタート)メニュー検索もできるようになった
- Whiskerは簡単にリサイズできる
- Mugshotが実は結構便利
- デスクトップにウィンドウリストを表示することもできる
- ウィンドウスイッチャがグリッド状に表示されるため選びやすい
- パネルの設定が器用で、高さを含めるかどうか、ホバー時で透明度を変えるか、隠すかなど設定可能。「Dock風」と「タスクバー風」を使い分けられる仕様
- 壁紙の設定がモニターごとである上、「設定ダイアログをモニター上に動かせばそのモニターが設定できる」親切設計
悪い点
- アイコンラベルのサイズは固定で、アイコンの間隔も固定。ちょっと長い名前のフォルダは簡単に隠されてしまうし、隠されないように設定すると
- Bluemanが初回起動時だけXDGディレクトリを拾うため、XDGディレクトリを変更すると毎回エラーを出す
- ウィンドウフィッティングは一応存在し、リサイズ時にも効くのだが、非常に弱い。設定もできない
- 通知がいくつでも出してしまう上に、閉じても表示した位置に表示しっぱなしで大量に出されるととても困る
- ウィンドウタイリング後にウィンドウを移動すると、ステートはタイルされていないことになるが、元のサイズには戻らない
- パネルがデスクトップの大きさとして除外されない(xfwm4は除外できる)ので、デスクトップアイコンやConkyがかぶる
- ファイル選択ダイアログがGnomeと同じものになったため、ファイルをパスで一気に入力することができなくなった
- アプリケーションファインダーがフォーカスロックしないため、複数起動してしまうこともでき、さらにフォーカスを失うことがあるため「あれっ」となって複数起動してゴミが残ることが多々ある
- フルスクリーンにしているとき、フォーカスしているアプリ以外はパネルがウィンドウより前にきてしまう (マルチヘッドディスプレイでのみ発生する)
- 標準のボリュームアプレットがない (外部プログラムとしてはPulseAudioアプレットがある)
補足
XFce4になったときからずっと「ちょっとずれてる」「いい感じなのに、対応したにもかかわらず痒いところに手が届かない」を続けているXFce。
だが、Gtk3化の過程で大胆にチェンジした。 アイコンラベルとか、アプリケーションファインダーのフォーカスとか、微妙に「XFceだなぁ」と思うところは残っているものの、機能的には遜色ないどころか、他の環境を凌駕するところまで到達している。
Manjaroでは18.2からついにXFce4 Gtk3がメインになった。 使い物にならなかった時期が長かっただけに、ようやくという感じだ。 だが、
- thunar-archive-plugin
- thunar-volman
についてはGtk2を引き続き標準としている。 thunar-volman-gtk3はextraとcommunityそれぞれにバージョン違いがあるちょっと困った状態だ。
ウィンドウデコレータがMetacity相当になり、Cinnamonと同じものを使えるようになった。 今までちょっと偏りがあって使いにくいものが多かったので、非常によくなったし、デフォルトのものが結構スタイリッシュにもなった。
基本的な方向性はCinnamonやMATEに近い進化だと思う。 使い勝手が劇的に向上し、他のデスクトップと比べ見劣りするという印象を払拭した。 Gtk3になったため「軽い」という特徴は損なわれたが、最近はアプリケーションのほうが重く、Gtk2を採用するアプリケーションも少ないため、正直デスクトップの重さというのはそもそも感じにくい。 むしろ処理が速くなって快適になったくらいだ。