hp Pavilion x2 10
ハードウェア
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概要
hp Pavilion x2 10はhpが2014年10月に発表したDetachable 2in1 PCだ。
BayTrail-M世代のAtomプロセッサとWindows 8を組み合わせるもので、1kgを切る軽量さと、39800円(税別)という低価格が特徴だ。
購入動機は、e440が重かったからだ。
本来、音楽を軸に活動するつもりであり、モバイルの携行ということは視野になかった。 仮にコンピュータを主軸とするとしても、モバイルが必要なライフスタイルではないと思い、稀に携行する程度であれば2kgを越えるe440でも問題ないと考えていた。
だが、実際は、「PCが必要かどうかはわからないが、営業のためにあったほうが良い」ケースは多々有り、 e440を携行していたが、体を壊すことが多すぎる。
そこで、やはりモバイルPCは必要だという結論に至った。
元々はPanasonicのRZ4が欲しかったのだが、18万円級というと前倒しで投入できるようなものではない。 そこで、軽量で使える、なるべく安いもの、かつ操作性に差がでるラップトップだけに、その点も考慮して選んだのが、私が信頼するhpのPavilion x2 10だった。
10.1インチというモバイルとしても小型のラップトップ、 さすがに750gと超軽量なRZ4にはとても敵わないが、それでも960gとかなり軽い。
検討はしたものの、それほど深く考えずに買った。 だが、これが思わぬ伏兵だった。
ちなみに、クーリエ保守3年をつけたため、トータルでは6万円を越える程度だった。
性能
性能面では、AtomプロセッサなのでCPUは速くない。 Core Mプロセッサは動作周波数は低いが、Core i5並の性能を出しているようなので、それと比べても遅いかもしれない。
また、何よりRAMが2GBしかないので、下手な使い方はできない。 さらに、eMMC32GBというストレージはその使い方もかなり制約される。
つまり、考え方を変える必要がある。
「これはタブレットである」
スマートフォンで全力のコンピューティングをしようと考える人が稀であるように、タブレットでもそれは変わらない。 Surfaceが全てをまかなえるようなPRをしているが、実際はそうはいかない。
メインマシンが他になければ成立しないモバイルだ。 実際、細かな打ち合わせやデモンストレーションを行う時はe440を持参することになるだろうから、2台どころか3台目である必要があるということになる。
はじめてのコンピュータに勧めるようなものではない。 あくまでも「モバイルのためのもの」だ。
1280x800という画面なので、なおのこと常用は厳しい。
携行
携行性は、960gで大変に良い。
ただし、恐らく手に持った時にまず驚くだろうと思う。 重いのだ。 この重いというのは、片手で縁を持った時の重量感がe440と同じくらいだ、ということを意味する。
だが、バッグにいれて携行する場合は話が全く別だ。
だが、それだけであれば「軽いが、最高に軽いわけではない」で終わっていた。 ここにDetachableである強みが加わった。
軽量である上にむき出しで携行されることを前提にしたものであり、コンピュータバッグで携行しなくても、百均のクッションポーチで携行できる。
e440をアンチショックケースとPCバッグの組み合わせで持ち運ぶと4.4kgほどになる。もちろん、大きな専用バッグを含めてだ。 対して、x2 10ではその重量は1kgをわずかに越える程度であり、既存のバッグに入れることもできる。
加えて、detachableである以上、キーボードを外して使うことができるし、必ずしもキーボードはなくても良い。 キーボードを必要とする状況が想定されないなら、キーボードを外して、そもそも持たないという選択肢もあるのだ。
ちなみに、実測値はキーボード側が322g、本体は606gとのこと。
hpは実測に近い値を掲載値としていることに交換が持てる。
タブレットとして使える、というメリットは案外大きく、先日は電車で立っている間はタブレットとして使用し、吸われた時にキーボードを装着して使用した。
RZ4のようなConvertibleタイプだとキーボードは裏側にくるため、タブレットにした時に重く、持ちにくい。
実はマイレージ性能が素晴らしい。 11時間45分としているが、動画連続再生で11時間を越えたデータがある。RZ4は17時間以上を公称するが、同様の方法で11時間台にとどまる。
このマイレージ性能の素晴らしさに対して、Windowsの起動が速く、またWindows 8がモバイル的な仕様に対応しスリープが高速化されていることからAndroidスマートフォンのように使える。
そして、本当にもつ。
microUSBで充電するが、供給電力は4A+… モバイルバッテリーでの充電は難しい。停止すればいけるか。
キーボード
このPavilion最大の特徴が、キーボードカバーだ。
それが特徴たる点としては、まず布であることだ。布でタブレット自体をカバーする構造で、しかも全体はカバーしない。
さらにこれがドックであり、スタンドでもあるという。 これについては後述する。
キーボードは10インチに詰め込んだにしてはオーソドックスなものとなっている。
多少気をつける必要はあるが、普通に打てるし、扱いにくいラップトップが多い昨今としては結構快適だ。
ただ、PageDnやEndなど、私が多用するキーがFnとの組み合わせになっている点だけちょっと困る。
ファンクションキーは機内モードもあり使いやすい。
タッチパッドはクリックのないものでやや使いにくい。
マルチタッチによるスクローリングがSynapticsとは逆(画面タッチと同じ)になっていることに戸惑う。 ちなみに、エッジに関しては画面に対するものと同じスワイプ効果をもたせている。
Bluetoothではなく優先接続なので確実で素早く、さらにBluetoothのチャンネルを消費せずに済む。
変形
キーボードカバーに端子が出ており、タブレットをここに合わせる。マグネットがあり、吸着するのでつけやすく外れにくい。タブレットを持ってキーボードを持ち上げることは問題ない。
キーボード側は拡張端子を持たない。キーボードを外すことで機能が制限されることはない。
キーボードカバーはマグネットを持ち、これがタブレット背面に吸着する。だから、カバーの状態ではしっかりカバーされて外れることはまずない。
そして、これがスタンドになる。吸着位置はカバーになるところを含めて3箇所、つまりディスプレイ角度は2段階。
無段階調整できないのか!と思ったが、意外と困らない。
ちなみに、非公式な方法としてフラップを内側に折ればもう2段階調節できる。
このスタンドが本体よりうしろにはみ出すので接地面積が増える…というが、立体的に考えるとその上に本体がくるわけで、そんな小さな斜めの空間に物があるなら、カバーを畳んでもたれさせればよい気がする。
この布カバースタンド、結構丈夫で、実はキーボード「も」支えられる。 つまり、PC使用中に筆記が必要になった場合に、キーボードを本体側に倒して畳み、奥に押し込んで手前スペースに筆記する、ということが可能。 狭い机を広く使える。
(クラムシェルならどけるしかないだろう。「縦に畳める」ために素早く出し入れできるということだ
さらに布なので、そのまま折り返して使用することができる。 hpは「スタンドモード」と称し、カバー底面の下にキーボードがくる、つまりむき出しのキーボードが机につく形の状態で利用可能としている。 動画を見たりSNSを見たりに適した状態か。タッチ対応なのでこの状態で操作可能。
hpらしいアイデアとサービス心にあふれたこのカバー、実に素晴らしい。
これの難点は、足の上では結構使いにくいこと、手持ちではタブレットにしないと使えないことだ。
Windows8 (BayTrailとLinuxとタッチディスプレイ)
実は私はWindows8のまま使用している。
なぜならば、Bay Trailの32bit UEFIへの対応が、Linuxでは(も)結構大変だからだ。
しかもタッチ関連のセットアップも結構大変だったりするので、とりあえず諦めた。Windows Tablet向けのチューニングがディストリビューションで提供されるようになるまでは放置、と考えたのだ。
だが、実はWindows8が結構よかった。
いや、私はWindows8は「一体何を考えているんだ」と思うほど苛つく代物だと思っている。
だが、タッチができるようになっただけでその印象は大きく変わる。なるほど、確かにタッチで使いやすいUIだ。
Linuxはキーボードを意識しているし、だからこそ速い。だが、キーボードを失った時、Linuxの標準的なUIは必ずしもWindowsよりも優れていない。
コマンドでの設定が可能なことについても、キーボードがないとあまりうれしくない。
だが、まずマウスでカーソルを持っていくことなく、パッとタッチすれば良い、というのは意外なほど「良い」。タッチパッドはなくても良いかもしれない、と思うほどだ。
腕の揚げおろしを考えれば手元のタッチパッドのほうが良いケースもある。特に、スクロールはほとんどの場合タッチパッドが良い。
だが、ウェブページの中にスクロールできるブロック要素がある場合などは、どちらをスクロールするかの調整はタッチディスプレイのほうがしやすい。
専用のファンクションボタンがあるような使い勝手だ、と言えば伝わるだろうか。 多分、これは10.1インチだからだ。30インチもあるような巨大ディスプレイでタッチするのは明らかにしんどい。
加えて、入力フォームに「タッチでフォーカスすると」ソフトウェア・キーボードが現れる。キーボードで入力するか、ESCキーを押すと消える。出し入れは任意にできる。 この仕様は、結構快適。自分がしようとしていることを一歩先んじて用意してくれる。
この点に関してはLinuxのタッチUIはほど遠い。ほとんどの環境でバーチャルキーボードは手動で出すものだし、Plasma Activeのキーボード出現タイミングはちょっとおかしいと言われている。
このバーチャルキーボードが結構使いやすいのもいい。記号に関しては基本的にわけられているが、数値へと切り替えた時に一緒に出てくる。テンキーモードは「on/off」であり、日本語入力も「on/off」である。スマートフォンよりもスペースがあるからだが、この方式は結構使いやすい。 特に、パスワードで記号も入れる私の場合、Androidでのパスワード入力はかなり辛いのだ。
ちなみに、Androidのいずれのキーボードとも異なる、もっと物理キーボードに近い配列も良い。 それでいて、数字のフリックもでるきようにはなっている。
また、Windows8はIMEの切り替えが可能になった。ほとんどの人には必要ないと思うが、かな入力にしている私の場合、バーチャルキーボードでかな入力は事実上できない(アルファベットキーしか表示されないため、打てないキーがかなりたくさんある)。そこで、MS-IMEはローマ字、Google日本語入力はかなにしている。これによって切り替えが可能だ。
※Google日本語入力はインスタントにローマ字とかなを切り替えることはできない
密かにMS-IMEは劇的に改善されている。こんなによくなっているとは驚きだ。
画面回転はいずれの方向に対しても自動。 回転は遅く、さらに事前アクションがあるため、素早くは変わらないが、あまり回転させるものでもないと思うので、意図せず回りにくいほうが嬉しい。
フォントレンダリングはそれなりに改善されたようだが、依然としてFreeTypeよりはるかに劣る。にじまず見やすいが、非常に見づらい条件がある。だが、MacTypeを動かすにはメモリに余裕がない。
相変わらず設定はしづらく、Windows Update中にスリープに入ってコケてしまうが、それでもいくつか改善された部分がある。 その最たるものはネットワーク関連で、アダプタの設定は今までよりも表に出された。
ただ、Modern UI上のアプリがデスクトップとは独立であることや、設定がModern UI上で一部だけできることは混乱を招く。 ちなみに、Modern UIのSkypeはMicrosoft IDでログイン(サインオン)する仕様で端末にMicrosoft IDを紐付けることを前提とする。だが、デスクトップSkypeを入れた場合に関してはそれは独立だ。
Microsoft IDの端末への紐付け、というのは、AndroidがGMailアドレスを要求するのと話は同じだ。 だが、Androidは勝手に電話番号やクレジットカード番号まで送らせようとするので、それと比べてMicrosoftのやり方は、Windows 8現在ではジェントルだと言える。Modern UIを拒否すれば別に登録する必要もないのだ。
これがModern UIだけ(Windows PhoneあるいはWindows ARMのように)ならば、うんざりしていたものと思われるが。
デザイン
非常に特徴的で素敵だ。
hp
hpは製品はもちろん、サポートも丁寧で好きだ。
そのサポートの素晴らしさだが、まずいきなり「初回ブート前にLinuxをブートしてバックアップを取る」に失敗、チャットで結構好まれない質問をしたのだが、丁寧に答えていただいた。
…CDブートの可否については調べて追ってメールで伝えるとのことだったが、メールがないのはご愛嬌。自己解決したしね。
ただ、製品に関してはフィルムをはがしたら、液晶に傷?があったのが残念。 白く、汚れではなさそうなこすっても変わらないものだった。
これについて申し出なかったのは、フィルムはがしと保護フィルムはりを同時にやったために元々ついていたことを確認できなかったためだ。
その時は開封動画をとめてしまっていたというのもある。
総括
5倍近い値段のLet's Note RZ4に対して、資金的余裕がなく一時的な方策として導入したのだが、実際は価格差がなくても悩むほどの逸品だった。
使い勝手もよく、hpらしい心配りで誠実な製品だ。 モバイルとしてはベストに近いものだと思う。
これが適しているのは、スマホのような受け身な使い方ではなく、キーボードを欲したりPCでなければやりづらい作業を外出先でスキマ時間を活用してPC作業を行いたい人だ。
ハッカーや趣味プログラマ、あるいは忙しい人、外出や出張が多い人、小説を書くなどの生産活動をPCで行っている人などに適しているのではないか。
時間の有効活用に、あるいは機会の活用に適しているように思う。