鳩山元首相の「デマ問題」が問題である所以
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あらまし
北海道で震度6の地震があった直後、鳩山元首相が「CCSによる人災」と断定的にTwitterで発言、 北海道警が災害後デマとして注意を呼びかける中にこのツイートを含んだことが話題の発端である。
私は 政治的な話をする気はない ので、別の角度から説明する。
これはあくまで 「インターネットと社会」という観点から一般的にどうであるかということと、それに照らしてどうであるかというお話である。
最大の罪は「無責任な発言→証明の要求」
デマを流す人というのは結構いるのだが、そのほとんどは明確な根拠もなく、そして根拠も示さず、検証に労力を割かない。 つまるところ「放言」である。
そして、その無責任な発言を咎められた時の常套句として、根拠や証明を要求するというのがある。
これは極めて下劣な行為である。 なぜならば、自分は責任を負ってもいなければ、その労力を割いたわけでもないのに、他者にその労力を要求するのである。
このようなデマ拡散に対しての義証明というのは社会的に極めて損失になっている。 無責任な放言などいくらでも言い放題だからコストは非常に低く、能力も必要ない。 そして、そのような気まぐれによって、その証明を担える優秀な人たちが比較にならないほどのコストを負わされるのである。
インターネット時代においてはそのようなデマの拡散がより深刻化し、人類の発展を阻害している。 実害のあるデマの抑止・修正に専門家が大きな時間を取られる。
そして、そのような根拠に基づく指摘をされたところで、無視するか、やはり根拠もなにもなくrejectするかというのが常である。
最大の問題は、このような人類に実害のある愚劣な行為を、仮にも元国家元首が行ったことである。 これはちょっと、呆れるでは済まない。
デマの問題
そもそも流言飛語というのは時として国を滅ぼすほどのもので、全く軽い話ではない。
そして、インターネットでは1デマの拡散というのは 最も重い罪である とされている。 もちろん、当初からデマという問題があった、というのがその所以でもあるが、依然として「インターネット」から見ればデマが最も重い。
理由はその拡散性、というかconnectivityにある。 インターネットは間接的に全体でつながるように設計されている。そして、その空間を流れる情報量というのは有限である。 このインターネット上での情報伝達におけるS/N比というのは、そのまま「インターネットそのものの価値」に直結する。 つまり、ノイズが増えすぎるとインターネットは死ぬのだ。もしあなたが「インターネットに接続すると、有益なものはなにも得られず、ただひたすらゴミ情報ばかりが送りつけられる」という状態になったならば、あなたはインターネットを使うことをやめるだろう。そして、そこまで行かなくてもある程度「有益なものはわずかで、ゴミは大量」という状態になった時点でやめる可能性が高いだろう。つまり、そういうことだ。
スパムメールなどがインターネット上で重罪なのもそれ故だ。 ちなみに、これはこれで経済損失としては非常に大きく、ちょっと近年のデータはないのだがかなり深刻であり、かつ一定以上増加すると社会が麻痺する可能性もあるほどの危険性がある。 そのため、日本では違法でもある。
インターネットにおける罪というのは、倫理とか道徳とか、あるいは国家秩序なんてものとは 全く関係がない 。 インターネットにおける罪はインターネットを殺す行為であり、デマの拡散というのはまさにそれにあたる、ということだ。
タイミングと責任の問題
では社会的な話をしよう。
災害直後というのは非常にデマを呼びやすい状況にある。 人々は不安で、かつ正確な情報の伝達手段を損失しているからだ。
しかも、正確な情報が手に入らないことは人命に関わる。だから、例えデマでなかったとしても「十分に意義のないことは含めないようにしなければならない」というのが前提である。 不正確な情報や憶測によって救助が間に合わなかったり、あるいはどうでもいい内容によって救助が必要な情報が埋もれてしまう、という状況は容易に察しがつくだろう。
だから、災害直後という状況下においては 正しかったとしても、その緊急時に必要とされない情報を挟み込むのは人命に関わる暴挙 なのである。
社会的に見れば、災害直後にこのような発言をしたというのが深刻に問題である。 さらに、「不安を煽るような発言」「根拠を示していない憶測に基づく内容」「断定」とあかんものが揃っている。
まして今回の場合、「災害直後は話が広まりやすく、風説の流布には適したタイミングである」という認識があってわざとやったのであり、すごく悪質である。
これは「インターネットでは」であって、「インターネット上の民意では」という話ではない。↩︎