「静止画ダウンロード違法化、スクリーンショットも違法」の解説
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序
かなり話題になっているのがこの法律だ。
おおよそ表題の通りだが、コンテンツは画像に限らず、文章、そして論文も対象であり、そのコピーやダウンロード、あるいはスクリーンショットによる部分的模写も禁止であり、懲役二年以下の罰則つきである。
俎上に載っているのではなく、事実上の決定事項である。
概要
名目上は「海賊版対策」だが、 実際のところそのような色合いはない。
まず全面的に禁止されているかというとそれはちょっと違って、「違法にアップロードされた」とあるので、正規のところからダウンロードするのは良いですよ、ということである。
それがあるかないかでは大違いなのだが、これはなかなか厄介な話で、例えば版権モノ同人誌なんかは「著作権を侵害した著作物」であるとみなすことができるため、そのダウンロード販売は購入も違法、ということになる。 例えばとらのあななりメロンブックスなりの通販て購入した購入者と購入アイテムのリストを警察が請求し、ここから狙い撃ちで逮捕ということもありうるわけだ。
Twitterで見かけた話では、この法律の何が問題かわからない、と自身のFacebookで発言した議員は、当該記事中で新聞記事の写真をアップロードしたという。 この投稿を保存したりすると懲役刑、というわけである。
「著作権侵害物」を一般の人が判断するのは不可能
そもそも「著作権を侵害しているか否か」をチェックするのは現在至難の業になっている。 私は基本的にソースを確認するようにしているのだが、画像や文章に関しては検索しても「誰がオリジナルで誰が著作権侵害しているのか」というのは 判断不可能 である。 Googleの場合基本的に最もアクセス数の多い、ダウンロードされているものをトップに持ってくるし、そうなるとますますそれがアクセスされ、上位に固まるようになる。画像の場合は微妙な差異が生じるためにそれをコピーして再アップロードしたものが上位にきやすい。 だが、その上位にきているものがオリジナルとは限らず、誰がオリジナルで誰が偽物という確認可能な情報が載っていることは非常に稀なので、判断できない。
これでも、私はなにかに使用する場合(例えばブログに掲載する場合もそうだし、LINEアイコンですらそうだ)はオリジナルの確認と裏取りというのはするのだけど、それには1点あたり3時間はかける。多分そんなことしている人は他にいないと思う。テレビや新聞などの大手メディアですら10分も確認すればチェックできる情報をしょっちゅう落としているのでまともにやっていないようだ。 だが、3時間かけても わからない のだ。
そして、今スマホを使っている人は、多分ほぼ常時広告が表示されていると思うのだが、その広告の画像が著作権侵害していないかどうかというのはどうやって判断するのだろうか。
つまり結局のところ、ほとんどの場面でスクリーンショットを撮れば潜在的に違法である可能性が拭えないし、画像のダウンロードは「違法かもしれず、逮捕されても文句はいえない」という状態を回避することができない。
「文章を違法にしたい」そのわけ
これは私の推測であり、もしかしたら邪推かもしれない (もちろん、ある程度の確度を持って話すのだが)。
以前より政治家の発言についてそれを取り上げることを違法であるかのように言いたがる政治家というのは結構多くて、そうは言わなくてもその流れからこれは違法にすべきである、あるいは名誉毀損であると騒ぐ者は跡を絶たなかった。
基本的にネット上での発信はその文章に著作権が生じる、というのが日本の司法の捉え方だ。 ということは、魚拓のような発言を記録するものは著作物を違法にアップロードした、とみなすことができるし、「発言が形になることを避けるため、そのようなことをすると違法であるということにした」と言えると思う。
そもそもここ数年で、「記録を残さない」「記録はすぐに捨てる」ということをやってきているし、実際にそれを期待してデータの改竄などを行っていることが明らかになってもいる。 そして、それが問題であるという認識を口にすることはなく、正当化だけを並べている。
つまるところ、「官はなにをやっても許される」状態を作り出そうとしているわけである。
これは、独裁というとわかりやすいのだが、独裁という正確な意味とは乖離している。 どちらかといえば、政治家や司法関係者を特権階級化し、法も規律も無視して好き放題できるようにしようという考え方に近い。北朝鮮とか、ルワンダとか、そんな感じ。 実際は独裁かどうかよりも特権階級による腐敗のほうが問題だから、ブラジルとか、そっちのほうに地下いかもしれないけれど。
スクリーンショットが全面違法かどうか、というのはあまり関係ない
スクリーンショットは違法じゃないんだね、じゃあ大丈夫、なんてわけのわからないことを言っている人もいるけれど、そういう問題ではない。 多分、そういうことを言っている人は自分の著作物のスクリーンショットをとるわけではないだろうし、画面中になにか著作権的問題をはらんだものが写り込んでいたらアウトという話なのだから、そんなことを言う人に「なにがセーフなのか」を判断することは不可能だろう。
常に違法状態にしたがる
この法律に限らず、近年の法律というのは、前提として全国民的に違法状態になるという法律を好んでさだめている。 そして、その問題が取り沙汰されるたびに繰り返すのが「慎重に運用するので大丈夫」「濫用しないので大丈夫」といった言葉だ。
私はこれは、「なにもしないから!大丈夫、大丈夫だから!」と繰り返しながら連れ込もうとするチャラ男に見える。
また、これは「その気になればいつでも難癖つけてしょっぴけるようにしたい」ということであり、そのようになった者は日本では発信することもできず、外との交流すらできないのが日本の司法なので、要は「気に入らない相手をいつでも社会的に消せるようにする」ということを強くのぞみ、遂行しているのだと理解できる。
これは、安全装置も外した状態で銃口をつきつけ、「悪質なことしない限り引き金ひかないから大丈夫だよ」と言うようなものである。
あなたにはこれが正しい権力のあり方に見えるだろうか。