Amazonのコンテンツ戦略とユーザーの問題
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かつてのPrime
Amazonはいよいよ本格的にコンテンツ課金をはじめたようだ。
Amazonはプライムの価値を高めるため、Amazon Prime Music, Amazon Prime Photo, Amazon Prime Videoといったサービスをはじめた。 このサービス自体はアメリカ(.com)と同じものだが、.comと比べるとだいぶ安価な設定になっている。
そのためにプライムの価値は高かった。 当時プライムでなくても配送は無料だったし、お急ぎ便と変わらないスピードで届いていたのでプライムの価値は微妙だったけれど、こうしたコンテンツの充実によってプライムの価値を高めた。
Prime Musicはもとより微妙だった。 音楽大好きな私は大歓迎したのだけれど、とにかく収録曲数が少ない、というかラインナップが大変微妙。 しかもその微妙な音楽もどんどんPrimeから外されていくので実用性も微妙だった。
特殊なBGMをかけたいとき(ムードミュージックとか)でなければ使わなかった。
Prime Photoは現在も有効だけれど、写真をAmazonに渡すことを考えると…
そうしたことを踏まえてもAmazon PrimeのキラーコンテンツはAmazon Prime Videoだったと言っていい。
コンテンツ課金へ
付加コンテンツは微妙だが本国より圧倒的に安価なAmazon Primeはかなりの人気を集めた。
だが、Amazonはあまりユーザーのほうを向いていないようだ。
非Primeに対して送料有料にする、ということは無料自体が一時的なものだったからやむを得ないだろう。 また、梱包の質が落ちていることも、配送が遅れ気味であることも、Amazonのサービスの根幹的価値を落としている気がするが、かつての品質が非人道的労働によるものだとするならば、人はその品質低下は受け入れるべきだろう。
だが、問題は結局はPrimeに付加コンテンツを含めることをやめつつある、ということだ。
今後追加されると言っていたPrime Musicに関しては追加された楽曲にめぼしいものは少なく、主には(.comでライセンスされている)洋楽だった。むしろ追加より削除のほうが目立ったくらいで、人気アーティストの盤はライブや 結局、(私に限らず)Amazon Prime Musicは おまけのような存在を脱していなかったのだ1
そこへAmazon Music Unlimitedが追加された。Music Unlimitedサービスとしては標準的で、Primeサービスを拡張する感覚で使えるのがメリットだ。 だが、Amazonの付加コンテンツがただのお試し版であることが明らかになってしまったとも言える。 Primeの価値を高めるために追加されてきたコンテンツはあくまで他の有料サービスの体験版で、Primeの価値を高めるものではない(広告的存在である)と位置づけが変わってしまい、結果的にPrimeの価値はさらに下がった2。
そしてPrime Videoもいまいちな状態となり3、早々にPrimeのみの表示だったトップページがPrimeをクリックしてもAmazonビデオのトップページとなり、さらに現在はPrimeのページにも購入の項目が並ぶようになっている。
そして有料チャンネルの追加だ。Prime VideoからJ-Sportが見られるようになった、というメリットはあるものの、これも本家で入ったほうが安く、オプションも豊富、見られる番組も多い。
とはいえこの時点では従来のPrime Videoが損なわれたわけではなく、「微妙な有料追加コンテンツが入った」というだけなのであまり見向きもされなかったのだが、一気に話題となったのがdアニメ for Amazon Primeの登場だろう。
Amazon Prime Videoはもとより比較的アニメに強かった。 だが、dアニメが圧倒的なラインナップを誇るためアニメ好きの選択肢というよりはアニメファンとしてはライト層の選択肢であったといっていいだろう。 ここにdアニメが加わったことは、単純に言えばAmazon Music Unlimitedのようなもので、コンテンツに幅が増えた、と言える。
だが、問題は、本家dアニメと比べて随分とラインナップが少ないこと、そして「Amazon Prime Videoを廃止してdアニメのみになった人気番組がある」ことだ。
ユーザーの絶望的リテラシー
もちろん、そのようなことは腹立たしいだろう。 私も「えー」と思った。
だが、大荒れのレビューは、ちょっとこんなにも愚かな人がこの世界にあふれているとはにわかには信じがたいものになっている。
まず、「元々お金をとっているのにさらに追加でお金をとるなんて詐欺だ」という主旨の発言。
Prime Video以外に選択肢がある、と理解しているのであればPrime経由でなくそちらでみればいい。 別に複数の課金コンテンツがあることはなんら問題ないだろう。 また、(その人はアニメのためにPrimeに加入しているのかもしれないが)Amazon PrimeはそもそもAmazonでの買い物のための優待であって、Prime Videoは付加コンテンツにすぎない。Amazon Primeが気に入らないのならPrimeを退会すれば良いし、なんならAmazonを使わなければ良い。 その自由はあるし、別にAmazon Primeをやめて他のところに加入するのも、Amazon Primeとは別に他のところに加入するのも自由だ。 Amazonにお金を払っているからといってすべてが手に入るわけではないのだから。
そして、「Primeのマークがあるのに途中からdアニメに課金させるなんて詐欺だ」という主旨の発言。
実際にそのような作品があった(それもかなり有名所であった)ため気持ちはわからないのではないのだが、元々Amazon Prime Videoの更新は不定期で、「毎週何曜日に更新」となっているものですら不定期だった。 対してdアニメのほうはきっちりやっているので時間差がある。
導入当初ならわかるのだが、既に大荒れコメントからの訂正というレビューが溢れているにもかかわらず放送回が更新されるたびにそんなレビューが追加されるのにはうんざりする。
多分、レビューが参考にならないといっている人はこのような人なのだと思う。 全く読まないか、もくしは読むとしても何かを読み取ろうとするのではなく自分の都合に合致するようにしか受け取らないのだ。 実際、このようなレビューは「他の人も言っている」とレビューしていたりするのだが、その人は訂正も入れているはずなのだが。
私はAmazonの対応よりも、自発的に何かを考えたり受け取ろうとしない愚かな人の多さによっぽど絶望している4。
AKBの楽曲があるので、AKBが好きな人なら満足したかもしれない。↩︎
コンテンツ的にも削除が相次いで価値は少し下がったが、これは「PrimeはAmazonの特別なサービスを受けられる」から「PrimeはAmazonの他のサービスの体験版がついてくる」に位置づけとしてグレードダウンしたという話だ。↩︎
これに関しては意見は様々だろうけれども、削除が目立ち、放送と連動したものも不定期にアップデートされ、みたいと思うような作品はなかなかPrime扱いにならないなど本屋の安売りワゴンのような様相を呈してきているように感じる。↩︎
もちろんAmazonのやり方が適切だとも思わないが、それは「Primeの付加価値が低下し、存在価値が微妙になった」というだけのことで、サービスの質の低下についてとやかく言うことでもない。↩︎