Chienomi

ThinkPad X1 Carbon 2017 レビュー

ハードウェア

モデル

構成

ThinkPad X1 Carbon 2017で、Core i5-7500U, 8GB RAM 128GB SATA M.2 SSD, FHDディスプレイだ。

シルバーボディで、中国生産モデルとなった。

NVMeストレージやUHD液晶を選択しなかったのはバッテリーマイレージのため、i7や16GB RAMを選択しなかったのは価格のためだ。

第8世代がきちゃったけど

KabyLakeプロセッサモデルであることについては、認識自体はあって少し悩んだ。

実際、既にCoffeeLake2プロセッサはきている。 だが、CoffeeLakeプロセッサはかなり難易度が高いということで潤沢に供給されているわけではないし、そうなると低消費電力版が出てくるのはまだ先だろう。 ThinkPad X1 2018には採用される可能性が高いが、40%以上のoffになるには半年近い時間がかかる。

そうなると、CoffeeLakeモデルをこれくらいの価格で購入できるのは半年から1年くらい後ということになり、既にラップトップが壊れた問題を抱えている私には待てないものだった。 待てる人ならば、性能向上は大きいので待ったほうがいいと思う。

インプレッション

速度

もうちょっと速くてもいいかなぁ、と思わなくはない。

SSD + Core i5という構成で性能は十分だと思うのだが、状況によってはもっさりだ。 特に、KDE Plasmaが遅いと感じることはないのだが、SATAとはいえM.2 SSDを挿している状態で起動がちょっと遅いのではないか…と感じる。 電源ポストでの待ち時間が長めに設定されているということもあるが。

起動はLinuxよりWindowsのほうが速い。 特にKDE Plasma/Cinnamonの起動はそれなりに遅い。

メイン機として使う人であればCore i7+16GBのほうが良いと思う。 この構成で「満足な速度」ではないからだ。 サブ機として考えればそんなにストレスフルなわけでもないので許容範囲かなという印象。 バッテリーマイレージと引き換えになるが、NVMeストレージを選択したほうが良いかもしれない。

Cinnamon/KDEの動作速度自体はメインのワークステーションよりも良好だ。 これはKabyLakeが持っているグラフィックアクセラレーション機能が優秀であることの現れだろう。 ドライバの出来の問題や画面の広さもあるかもしれないが、KDE Plasmaでまるでひっかかりがないのは初めての経験である。

マイレージ

私の通常作業(Wi-Fi接続で、ウェブで調べ物をしながらのタイピング。輝度は30%程度、キーボードバックライトoff、Bluetooth off)では16時間程度という感じだ。

再起動も多用するインストール/セットアップ中は6時間程度だった。

輝度を落としてWi-Fiも切れば20時間は突破しそうだし、文句なしのロングマイレージと言っていい。 素晴らしい。

トラックポイントとトラックパッド

トラックポイントはlibinputを使っているとちょっと癖のある動きをする。 少し強く触ったときの動きが大きすぎるのだ。 感度を落とすと安定するのだが、KDE Plasmaでは設定できないため、辛いところがある。

ただし、これも慣れればなんとかなた。

e440と違い、ちゃんと独立したボタンは優秀だ。 Linuxでは「中ボタンクリックができる」ことは重要だろう。

また、感触がよく広いトラックパッドは「押せるように」なってる。 これは、クリックエミュレーションではなく、本当にクリックイベントを発生させる。 ほとんどの位置で左クリックだが、右下の端でのみ右クリックとなる2ボタン仕様だ。

トラックパッドでのクリックは、ボタンクリックと比べて強くおさくてはならない。 そのため、トラックパッドの決定である「タイピング中にどこかに飛んでしまう」ということをそもそも発生させないことができる。

この問題は「トラックパッドが認識されるから」ではなく、「クリックエミュレーションの結果として意図せずクリックされて」発生する。 ThinkPad X1でもクリックエミュレーションをオンにして、軽くぽんとタッチするだけでクリック動作を発生させることは可能だが、クリックエミュレーションをオフにしても、トラックパッドをボタンとして押すことでちゃんとクリックは機能するのだ。

そのため、クリックエミュレーションを無効にしてしまえば、ありがちな「ぶっとび問題」は全く発生しなくなる。

Manjaro Linuxでは最初からクリックエミュレーションが無効の状態になっていた。

キーボード

ThinkPadのキーボードはラップトップとしてはどれも素晴らしいものだ。 だが、X1のキーボードはことさらに素晴らしいと思う。

実際に使いはじめた最初は、e440よりもクリック感が強く重いことから、ややミスタイプ(というよりもアクチュエーションポイントに到達しない空振り)が発生したが、すぐ慣れた。 ストロークはごく短いがクリック感があり、そこそこ打ちやすいキーボードというのは他にもあるが(例えばhpのSpectre13やEnvy13のキーボードだ)、やはりこのストローク感が打ちやすい。

ThinkPadの良さというか、THinkPadでなければならない大きな理由のひとつだと思う。

ネットワーク

Wi-Fi, EthernetともにIntel製だ。

少し勘違いしていたのだが、ThinkPad X1 2017にはEthernetがないわけではなく、チップとしては載っている。 単に口がないのだ。

専用の口になっており、アダプタはそこからEthernet信号を引き出すものになっている。 なお、使ってみたのだが、認識されないのかリンクがとりづらく、いまひとつであった。 重大な残念ポイントである。

スムーズな動作

コンピュータは意外と繊細で、構成の問題なのか、 「ひっかかりが生じる」ケースが割と少なくない。

店頭で展示されているPCを触ると、比較的低性能なモデルでも、自分のコンピュータよりもスムーズに動作するということが少なくない。 自作するとどうもクリーンインストール直後からメーカーPCと比べて変にレスポンスが気になる、ということがあるのだが、Lenovoのコンピュータはややその傾向がある。

国産のほうがなぜかスムーズだ…と感じるのだ。 hpやDellにもその傾向はあるが、Lenovoのほうがやや強いと思っている。

シルバーボディ

「ThinkPadらしくない」シルバーボディだが、結構ありだと思う。

いままで出たものと違い、全面がシルバーになっている。

ThinkPadはもちろん良いものであり、ThinkPadの黒も、ピーチスキンも、ThinkPadの誇りというべきものだ。

しかしながら、一般の人にとってはそうはならない。 ThinkPadの特別さを知る人は(少なくともスバル車を特別なものだと感じる人1よりも)十分にマニアだろう。

Mimir Yokohamaの仕事は一般の人を相手にするものなので、「ハッカーとしての特別さ」と同時に「普通の人が見て美しいと感じる」ことが必要とされた。 それによりThinkPadとSpectre132で悩んだのだが、その折衷案3としてシルバーのThinkPadにしたわけだ。

黒よりも滑らかな手触りと、高級感のあるシルバーは、Thinkpadファンなら(邪道だと思うかもしれないけれど)注目せざるをえないもので、そうでなくてもThinkPadを使ってきた私にとって、新鮮な気持ちで使える。 「黒がよかった」と感じることはない。

ちなみに、汚れにくく汚れも拭き取りやすい、アルコールで拭いても色落ちしにくいなどのメリットもある。

携行性

ベゼルが薄く、厚みもないため、13.3inch用のZeroShockラップトップバッグに収納可能であった。

1.1kgという重量は軽く、今まで使用していたThinkPad e440 (2.1kg)はおろか、Dynabook R51 (1.4kg)と比べても明らかに軽量で携行性は良い。 さすがにPavilion x10(970g)と比べれば若干重いが。

ただし、コンパクトなラップトップ収納スペースを持つものは13.3inch用が多く、Macbook Airなど13.3inchでも薄いものを想定していてうまく収納できないケースがある点には注意が必要だ。 実際、13.3inchと比べるとfoot printは大きい。

形状としては持ちやすく、重量配分も安定していて非常に持ちやすい。

スリープ安定性

実はLinuxだと「スリープから安定して復帰できるか」というのは構成次第の結構な運の問題である。4

ThinkPad X1 Carbon * Manjaro Linux5では問題なくスリープ/復帰できている。

結論

素晴らしく良い。 満足だ。


  1. クルマにおけるスバルや、ラップトップにおけるThinkPadは一種の憧憬の対象となっている。それは、それが「好きかどうか」とは別のこととしてだ。↩︎

  2. hpの個人向け高級ラップトップ。ちょっと高めだけれど、性能的にも良好で優れたデザインを持つ。2018年モデルは色が白になってしまい、だいぶ普通になってしまった。残念。↩︎

  3. hackerのThinkPad(ただしThinkPadらしくない)とSpectreのような美しさ(しかし遠く及ばない)である↩︎

  4. もちろん設定はできるが、設定したところでそれなりの確率で復帰できないものはあり、設定しても依然として復帰できないケースもある(特にAMD製ビデオカードにCatalystドライバを使用している場合は非常に多かった)。↩︎

  5. Manjaro XFce 17.06 x86_64 Linux 4.14.4 * KDE Plasma workspace環境である。Cinnamon, XFceでも安定してスリープから復帰できている。↩︎