Chienomi

携帯電話キャリアの通信改竄問題(通信の最適化)

はじめに

高木浩光さんがauに問い合わせのがTogetterに上がっている

前編, 後編

これは極めて問題だ。 もちろん、対応者の著しい無知も問題だが、これは一般の人にはまず伝わらない。

ここは問題について絞り込んで説明しよう。

通信の秘匿の侵害

通信の秘密は憲法で保障されている権利だ。

通信はプライバシー権として保護され、それを侵すことはできない。 私人間効力についての議論はあるが、この対象になることについては電気事業法によって定められている。

さて、この厳しさをひとつ見てみよう。

  • 2006年5月にぷららがWinnyを遮断したことを、総務省は「違法」と判断している
  • OP25Bについて「通信の秘密を侵害するもの」と判断している

これらは、「封筒を見ている」という話だ。 通信を届けるために、見ないでいることができない情報を見て、通常の届ける以外の行為を行っていることを問題としている。

だが、ここでの問題はそうではない。 手紙でも、中に写真が入っているか、どのような写真であるかは、封筒の「中」を見なければわからない。

通信でも同様で、エンベロープ(封筒)情報にはデータが画像であるかどうかという情報はない。 それを解いて中にくるまれている本文を読まなければいけない。

たんに解くだけではない。 「含まれるかどうか」については読んでいかなければいけない。 それが人間でなく機械がしているにせよ、それを判定するためには本文も読まなくてはいけない。

auが「メールの添付ファイルも圧縮する」というのなら、それはauは全てのau経由のやりとりのメールをチェック読んでいるということを意味する。 これは、ezwebのメールでなくても、とにかくauのスマホでメールをうけとるか、送るかした全てのメールにおいてだ。

これがもし、TLSを用いたものも対象にしているのだとすれば、それは「暗号化されたものを解読して覗いている」ということになる。 これはさらに別の法律にもひっかかる。

そして、覗いただけでは済まない。 これを改変してしまうのだ。 物理的な手紙でいえば、

封筒を開封して本文を読んだ後、同封されている写真を「これじゃ大きくて飾れないね」といってハサミで切り取ってまた入れて封をして届ける

ということをしているわけだ。 そもそも改変するためには、読まなくては処理できない。 元のデータを見ることなく、そのデータを元に何かの結果を計算することはできない。 X + 10 の結果を実数で出すためには、Xの値が何であるかを知る必要がある、ということだ。

これを気持ち悪いと思わないか? 人間でなく機械だから許される、というものではない。 それだったら、あらゆる通信を盗聴して保存し、検索することなど当たり前にできてしまう。 もちろん、それで「こいつは犯罪性がある」「この思想は悪だ」などとマークしておく、などというか、かつてのドイツのような状況まであと半歩の状態だ。

極めて危険だ。

しかも、近年は権力側で堂々これを踏みにじることを「アリにしよう」といっている。 警察の盗聴などだが、「状況・期間・対象を限定し、裁判所の許可を必要とするから問題ない」などと言っているが、 既に日常的かつ恒常的に盗聴を行っていて、かつそれが明るみに出ても問題だとも思わない、という状況が存在し、その上で公権力はOKということにしてしまったら、憲法が形骸化するのは目に見えている。

改竄自体の問題

改竄自体の問題もある。

例えば、私が地図を送ったとしよう。

地図は大きな画像だ。スマホでは表示しきれない。 だが、縮小して送ることはしない。なぜなら、地名が書かれているからだ。

もし、4倍のピクセルを持つ画像であれば、4倍まで拡大した時に表示されている領域の情報は4倍になる。 しかしドットバイドットの状態、つまり800x600の画像を800x600で表示している状態であれば、4倍に拡大しても情報は増えない。字が見えるようにはならないのだ。

つまり情報の欠落である。

さらにいえば、それがプログラムの一部を構成していたら? あるいは、データをチェックサムで検証していたら? いずれにせよ同一性を要求する場合においては問題は必ず生じることになる。

しかも、これは一方的に行われるものだ。

例えば、ある写真家が、

「自分の写真は完全な状態でのみ公開する。これを他の形式に変換したりピクセルサイズを変更するなどの加工を禁じる」

というみずからのポリシーに基づいた著作権(著作人格権)の行使を行っているとしよう。 その写真家はたとえばauのユーザーではない。auとは関係のない人物だ。 しかし、auユーザーがその写真を見た時には加工されてしまう。 この場合、著作者とauの間になんら契約はなく、auは著作権を侵害する。

ちなみに、画像非可逆圧縮については、同一性保持権に関しても侵害している可能性がある。

実際にそれにより起きた不具合と、それによる対応もTogetterにまとめられている

なぜやるのか

目に見えないのでわかりにくいが、帯域というのは携帯キャリアにとっては「商品」である。

使用量が増えればQoS(サービス品質)が低下するため、利用者離れにつながる。かといって、容量を拡大するのはコストがかかる。

そこで、通信料を減らそう、というのが最近の発想らしい。

これは言ってみれば、水道で、水道管の太さ、水の最大供給量は変えないが、「各家庭の蛇口を勝手に細くして水をたくさん使えないようにしよう」というようなもの。

もっとも、これは質的な問題でもあるから、「ちゃんと浄化するのはお金がかかるから、塩素大量にぶち込むだけにしよう」というようなことでもある。 それをまともに告知せずに行う、ということだ。せいぜい、契約書に「浄水方法はこっちに任せてね」と書いてある程度。

発想や思考形成としては食品偽装に非常に類似している。 なんらかの対応が必要なのは仮に認めるとしても、地位的有利を利用した傲慢な手法である上に、それを隠してできれば騙していたいという考え方に非常に問題がある。

Wrote on: 2015-07-12T00:00:00+09:00