Chienomi

夢幻の心臓

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最初に紹介するゲームは夢幻の心臓しかないだろう。

私の生家は大阪で、PLの塔が見えるところにあった。

地元でない人にとっては「PLの塔」ってなんだ、という感じだろうけれども、大阪にPL教団という宗教があり、その宗教施設が「PLの塔」である。 PL教団には学校があり、高校野球でとても強かったのでそちらが有名だろう。

ちなみに、地元民にとっては花火で有名。 「PLの花火」は、普通の花火大会みたいにちょっと打って休んで、みたいなものじゃなく、ノンストップでガンガン上げる超派手な花火だ。 これに慣れてしまうと、もう他の花火では物足りなくて仕方ない。

そして、そんなPLの象徴、PLの塔だが、紙粘土で作ったような質感のなんともいえない不気味な塔だ。

そして、夢幻の心臓に出てくる「打ち捨てられた塔」というのが、このPLの塔によく似ていて、それはもう不気味だった。

夢幻の心臓はとにかく不気味なゲームで、幼少の私には道に出る魔術師が怖くて仕方なかったし、砂竜、竜やバドーのようなレアな強力モンスターに遭遇したときや、全く予期できない魔法の壁にぶつかったときは心臓が早鐘を打って大変だった。

当時のぼんやりしたモニターがその不気味さを倍増させており、さらに停電になったりするとその残像が緑色に長時間残り、猛烈に怖かった。

ゲームの概要とルール

夢幻の心臓はRPGで、Project EGGにもある比較的有名なゲームである。 シリーズで3まであり、初代は1984年に発売された。 日本で「経験値」という概念が登場した最初の作品だとか言われている。

主人公はひとりであり、エンカウントする敵も1体で、常に1対1の戦いになる。

初期状態で耐久力や体力は200、攻撃力や器用さなどは0からスタートする。

攻撃力は与えるダメージ量に影響しそうだが、攻撃力は命中率に影響する。 攻撃力は耐久力に左右される。耐久力はHPだが、耐久力が減ると与えるダメージも減るので相当厳しくなる。

最大値という概念は基本的にないが、耐久力は体力に、魔力は知力に上限値が縛られる。

能力は500まではお金を払って上げることができ、紋章を使うと1000まで上げることができる。

30000日という日数制限があり、行動により日数が経過する。マップ上の移動でもマップの地形により日数が経過し、さらに同位置で休むこともできるが耐久力は1回復するものの1日経過する。

セーブはなく、中断はある。 (もちろん、セーブデータの複製でセーブ扱いすることはできる)

泉の水を飲むことで知性分体力を減らして魔力を回復することができる。そのまま死ぬ可能性もある。 これで耐久力が負の値になった場合、日付が変わると死ぬ。ただし、魔法の行使では日数は進まないため、「我が力甦れ」の行使と泉の水を繰り返して使うことで体力と魔力の両方を回復できる。 ただし、この呪文の耐久力回復量は5なので、相当時間がかかる。

大きな特徴として、命中率がめちゃくちゃ低い。何十回に1回当たるというレベル。道に登場する敵は命中率も同じくらい。農民の攻撃力は初期状態の主人公の1/3くらい。 比較的強い衛兵が攻撃力、命中率ともに主人公と同等なので運が悪いと衛兵との戦闘一発で死ぬことになる。 街までまっすぐ行っても4回はエンカウントすることになるが、全て戦う場合生き残れるかどうかが際どい。

魔法の威力はとても低いが、確実に当たるため、魔法は重要だ。

行動は「戦う」「逃げる」「隠れる」「会話」の四択。 逃げると隠れるは経験値が減る。逃げるで-2、隠れるで-10と、隠れるほうが経験値減少は大きい。隠れるのに成功すると先手を取るか、そのまま逃げるかを選べる。 会話は「友好的」「敵対的」「対等」の3つ。「対等」が一番成功しやすく、成功すると情報が得られ、戦闘が終わる。亜人とは会話できる。 経験値は負の値になる(プラットフォームによってはならないようだ)。

外は地形マスだが、ダンジョン内は3D迷宮。 かなりトラップが多く、回復方法がない消耗戦なので攻略は難しい。

序盤はお金で能力を買う関係でお金が重要になる。 命中率が高く強い魔術師が落とす水晶玉が高く売れるため、魔術師を探すことになる。また、道で登場するレアモンスターである商人が60ゴールドくらい落とす。 一方、紋章は経験値を能力に変換するため、途中から経験値が重要になる。

レベルという概念はない。能力値は16ビット整数で、データ上の最大値は65535。

ダンジョンを回って紋章を集め、最終的に夢幻の心臓を手に入れるのが目標。 ラスボスはバドーだが、バドーとの戦いは4回ある。

物語は断片的でわかりにくいが、光の盾を買い、折れたる剣を炎の剣に鍛えてもらい、など割とドラマチック(プラットフォームによってはもうちょっとストーリーがあるらしい)。

敵の話

エンカウントする敵は、ダンジョン外では地形によって異なる。 最も安全なのは「道」であり、人間型の敵ばかりが登場する

道ではレアモンスター「商人」が出る。 お金稼ぎに使う魔術師は毒が厄介。毒になると日が変わると耐久力が1減る。

人気のレアモンスターといえば草原に出る妖精。グラフィックがかわいらしく、倒すと経験値もお金も結構もらえる。 ただ、ほんとに出ないので狩るのは厳しい。しかも、このゲームにしては珍しくよく逃げるので、より難しい。 これと比べればはぐれメタルなんかよく現われるし、簡単に倒せる。

正直、ダンジョンに出てくる強いモンスターとの戦闘は能力値を最大まで上げてもかなり厳しく、ダンジョンでは逃げ回るのが基本。

また、命中率が低いので、序盤戦は20分くらいミスりあうこともある。 この経験があると「そうそう当たるものではない」と言われると「確かに」と思ってしまう。

進行

序盤、できるだけ日数を使わずにお金と経験値を稼ぎ、お金でパラメータを上げるのが基本。 もっとも、有利に進めたければお金をある程度稼いだら、隠れるを駆使してバラージへ行き呪文を教わるほうが速い。

呪文を教わることで日数を使わずに回復できるようになり、泉周辺での稼ぎが可能になる。 能力値は紋章で上げるほうが速く、比較的難易度の低い紋章を獲得し能力を上げたい。 私は竜の紋章をとったあと、無理矢理に光の紋章をとっていた(グリフォンの洞窟は結構難易度が高い)。

魔法の重要性として確実に当たるのもあるが、バフ呪文は重ねがけでき、マップでもかけられるのが大きい。 バフは1日経つごとに消えていく。

しかし本格的に難しいダンジョンは本当に難しい。チートで能力値を上げると、知性分のダメージを受ける魔法の壁というトラップが立ちはだかる。 6万もの大ダメージを受けるため、大変なのだ。

その他

検索するとだいたい4ペインになっている画面が出てくると思うのだけど、JX版は3ペイン。 右側はマップがほとんどで、画面下部に2行の文字が書かれているに過ぎない。 左側はメッセージウィンドウだ。

また、検索すると出てくる半角カナ仕様ではなく、JXの標準モードで動作するゲームなので、普通に漢字も出てくる。 当時は「叛逆者」が読めなかった……

プレイの思い出

どうもプラットフォームによってシステムは大きく異なるようだけれど、「怖い」「攻撃が当たらない」「ゲームバランス的に能力値最大にしても1戦ごとに負けるリスクがある」という印象がある。

こういうヒリヒリするような戦いのRPG、結構好きなのだけど、私を満足させたのはウィザードリィ7だけで、どちらも途方もなく時間がかかるゲームでゴールまではたどり着けなかった。

BASICで書かれていて、5歳のときから私のプログラミングの教材としてコードを読み漁った。 6歳か7歳のときに、セーブデータに触れた。私にとっては始めて触れたバイナリデータでもあった。 バイナリデータの構造を知りたくて色々と触っていたら部分的に「読める」部分があり、またデータに規則性があることも見出した。 適当にいじってみるとセーブデータが大きく変わることを発見した。どこを触ればどう変わるのかということを確認しているうちに、非常に強いセーブデータを作り出すことに成功した。

全能力値が60000越えというデータだが、圧勝というわけではなく、ただ殴り合って勝てるような強さである。 なんといっても、命中率が9割くらいあるので、与える総ダメージ量で言うと500倍とかになっている。 道の敵だと与ダメは150を越える。強い魔法で20、弱い魔法だと5のダメージを与えるという点を考えればどれだけ強いかがわかるだろう。 ただ、それだけだと山やダンジョンだとコンスタントにそこそこのダメージをもらうため割と厳しい。しかし、それでも耐久力が6万を越えるとトラップ以外では死なない。

BGMはなく、えらく豪華なエンカウント音「デレデデー」が印象的。 もっとも、このゲームを印象づけるのは、フロッピーディスクの読み込み音まで含めた、「デレデデー!! ブー、ブーッブー」である。 このテンポの遅さも含めて、ウィザードリィ7がすごく似た感じで、めっちゃ好きだった。

そしてこのゲーム、全能力値60000越えを達成したにも変わらず、クリアはできなかった。 でもエンディングは見た。BASICで書かれているので、breakしてエンディングに入る部分を呼び出せば良いのだ。