Chienomi

【初心者向け】CPUとビデオカードとパソコンのハードウェアと性能の話

基礎/リテラシー::hardware

AMDから出た新しいCPUが、パソコン性能について説明する上で非常に良い題材であったため、これを機に説明しておこうと思う。 この手の記事は以前、Xeon WやXeon scalable processor familyの話を含めて「世ではこんなことを含めて言われているけれど、実際はこうだよ」ということを説明しようと思って書いていたのだが、まとまらず、果てしなく長くなってしまった上に、AMD Ryzenの登場によって話が大幅に変わってしまったため、お蔵入りになってしまった。

今回の記事は、パソコン初心者がパソコンの性能を理解する、マシンがお買い得かどうか、どんなマシンが必要かを考える上で必要な知識を獲得できる記事とする。 ここではAMD Ryzenの新製品の話を中心に進めるが、決してAMD新製品の話をするわけではない。 CPUやパソコンの性能について明るくない人でも、この記事を読み終えた頃にはなんとなく分かるようになっているだろう。

ただ、初心者向けとはいえChienomiなので、ライトなものではなく、それなりに踏み込み、実測、検証を踏まえた内容となっている。 そのため読みやすくはないが、前提とする知識は少ないので、初心者の方であってもじっくり取り組めば理解に至ることができるだろう。 (そもそもその段落が理解すべきものであるかどうかは、その章/節を読み終えてから判断することは必要である)

また、基本的にはデスクトップPCの話、そしてCPUとビデオカードの話を主とするが、それを踏まえた上で、それ以外の部品の話と、ラップトップの話も後のほうでちらっと触れる。

お題はRyzen5 1600AF

Ryzen5 1600AFはAMDが出した新しいデスクトップCPUである。

新しい、と言っているが、中身はむしろ古い。 AMD Ryzenの場合、ナンバーは4桁で、その最上位の桁が世代を表している。 原稿のRyzenシリーズは3000番台である。

じゃあ1600AFということは第一世代? と考えるかも知れないが、複雑なことに1600AFの中身は第二世代であり、 もう第三世代が出揃った今になって登場した新製品である。

1600AFという名前がついているが、商品には1600と記載されている。 旧製品(ほんとの第一世代)のRyzen5 1600の売れ残りとの区別はいささかつきにくい。

3000番台Ryzenの現行ラインナップは次の通りだ。

ファミリー ナンバー
Threadripper 3990X
Threadripper 3970X
Threadripper 3960X
Ryzen9 3950X
Ryzen9 3900X
Ryzen7 3800X
Ryzen7 3700X
Ryzen5 3600X
Ryzen5 3600
Ryzen5 3400G
Ryzen5 3400GE
Ryzen3 3300X
Ryzen3 3100
Ryzen3 3200G
Ryzen3 3200GE

これらの中でGがついているものはAPUと呼ばれる、ビデオカードが内蔵されたものである。 ビデオカードは通常利用において必須のものであり、Gがついているものは性能は低いがビデオカードが内蔵されていることにより、別途ビデオカードを必要としない。 逆にいえば、Gがつかないモデルは別途ビデオカードを用意する必要がある。 ビデオカードが結構高いので、ミニマムにしたときの価格差は大きい。一方、別途購入できるビデオカードは、普通の選択肢の中から選ぶのであれば安いものでもかなり性能は高いため、内蔵されているものよりもずっと高性能になる。

Ryzen 3000シリーズは非常に性能が高いが、それはビデオカードを内蔵しないタイプに限った話になる。 Ryzen5 3400GにおいてはRyzen3 3300Xと比べてもかなり性能では劣り、それでもなかなかの性能を誇るものの魅力的かと言われるとやや首をかしげる。少なくとも「すごい性能だ!!」とは言い難くなる。一方、Ryzen5 3600Xに関しては相当驚愕すべき性能になる。 なお、私が使っているワークステーションは20コア/40スレッドのCPUを積んでいるが、性能的にはコアがあればあるほど有利な計測においてもRyzen5 3600XとRyzen7 3700Xの中間くらいである。(本体の値段は何倍も違う)

Ryzen5 1600AFは、前世代のRyzen5 2600から少し性能を落として大幅に安くしたもの、と考えて良い。 これは、ビデオカードを内蔵しないタイプである。

実はRyzen3は現時点ではまだビデオカードを内蔵しないタイプが存在しておらず、ビデオカードを内蔵しない、つまり高性能タイプはRyzen5 3600がボトムである。 それに対してより下のレンジとして3300X, 3100, 1600AFの3モデルを投入するという形になる。 その価格だが、それぞれ税抜きで14000円、12000円、10000円くらいであり、1600AFは現行世代のボトムを担う1600AFよりもさらに下ということになる。

ちなみに、公式サイトに載っていないけれど、Ryzen5 3500というのもあるらしい。 こちらは15000円くらいで、3300Xより気持ち高い。3600に関しては21000円くらいするので、だいぶ開く。

複雑な性能勘定

基本的には上位のもの、つまりは数字が大きいものほど速い、で良いのだが、ちょっと複雑な部分がある。

Ryzen5は6コアであり、Ryzen3は4コアである。 コア数という基準で言うと、Ryzen5のほうが多いのだが、Ryzen3はコア数が少ない分熱容量的に余裕がある。 そのため、Ryzen3のほうが「少ないコアをぶん回す」方向になっている。

個々のコアの能力は同じ3000シリーズなので同じなのだが、Ryzen3のほうが速く回すので結果的に個々のコアの処理が速くなっている。

逆にRyzen5 1600AFに関しては前世代なので、個々のコアの処理能力は3000シリーズよりも劣る。 だが、Ryzen5ということでコア数が6なので、3300Xよりもコア数は多い。

3600になるとこれらのどれよりも性能が高い。 また、3300Xよりも3100のほうが明確に性能が低い。 まずここは良いだろうか?

では複雑なのが、3500と3300Xと1600AFの関係だ。

実は3300Xが全面的に3500を上回ってしまっていて、3500の存在が非常に微妙になっている。 これに関しては、なぜそうなってしまったのか判然としない部分もあるけれども……

3300Xと1600AFに関しては、だいたい性能的にはコア性能の高い3300Xが優勢だが、コア数があれば光る条件下であれば1600AF優勢ということもある。 これは先の説明の理屈通りだ。

普通に考えれば1600AFと比べて3500がパッとしない(それどころか、コア数優勢なテストでは1600AFが勝ってしまったりしている)というのは解し難い。 考えられる要素はひとつだけで、Ryzen5 3500が「6コア6スレッド」なのに対して、1600AFが「6コア12スレッド」であるということだ。

コア数というのは物理的な演算器の数であり、頭脳の数といっていい 一方、CPUのスレッド数というのは同時に処理できる仕事の数だ。 これは言ってみれば、「6人の人に12個の仕事を振る」のと同じようなものだといっていい。この意義が大きいのは、「待ち時間が発生したらもうひとつの仕事を進めていられる」ことであり、効率が良い。一方、全く待ち時間がない状態になると、もうひとつの仕事に手を煩わされることになるからむしろ効率は悪くなる。 だから、スレッド数が多いことが必ずしもプラスではなく、条件によってはこの仮想スレッドをオフにしたほうが速かったりする。(私はだいたい仮想スレッドは邪魔である)

一般的に「複数のコアを完全に使い切るような作業」においては仮想スレッドはむしろ足を引っ張ることが多いのだが、これがうまく活きる条件下においては3500を1600AFが上回る、という状況が発生するということだろう。 もしも仮想スレッドが邪魔になるような条件であれば、1600AFより3500が全面的に性能が高い(価格も1.5倍くらいする)ので、1600AFと比べて3500が見劣りするということはないはずだ。

コア数とコア性能と実用

私は20コアのシステムを使っているし、一時期48コア/92スレッドのシステムを使っていた(電力的に辛すぎて手放した)。 また、業務上で40コアのサーバーを使ったりしている。

様々な使い方を踏まえた上で述べるが、普通の使い方においてコア増加がリニアにエクスペリエンス改善につながるのはせいぜい4コアまでである。6コアになると、いささか状況を選ぶ。

ここでいう普通というのは、GUIを使って、マウスやキーボードによる対話的操作によって操作する方法で動作することを前提とする、という意味である。 時間のかかる処理を開始し、それが終了する前にまた別に時間のかかる処理を開始し、という形でユーザーの操作を必要とせず処理時間を必要とするものに関しては話が違うし、その数が増えればそれだけコア数が効く状況が生まれる。

ただ、さすがにRyzen9の32コアなどというのは、そうした方法で「開始をユーザーが行う」というレベルではまず使い切れない。受動的に並列に実行されるか、プログラム自体が並列で実行される必要がある。

プログラム自体が並列で実行される場合、それがユーザーにとっての待ち時間であるならば、コア数が多い意味が発生する。 といっても、単に「プログラムが並列になっているからコア数が多いほうがいい」という話にはならない。プログラムを並列にするのも大変なのだが、並列にして効率がいいようにするのはもっと大変だ。だから、10分割できるプログラムはあまり多くないし、20分割できるプログラムはかなり少ない。libx265なんかも効率的に20分割することは現状できない。単に分割できるだけでなく分割して効率が良いとなるともっと難しい。

いずれにせよ、一定以上になると、コア数が多いというのは、ユーザーがコア数が多いことを前提としてコア数を使う使い方をしなければならないということを意味し、誰でもできる話ではなくなる。 ここまでの説明で、「ならこういうふうに使おう」と思いつかない人であれば、コア数が多いことは、イコール高性能にはつながらないと考えて良い。多ければもちろん状況によりメリットにはなりうるが、優先度は低い部分だ。性能面ではコア効率や周波数が高いことが優先されるし、場合によっては消費電力や価格が優先される。

ただ、4コアだと何らかの理由でコアを完全に使い切ってしまう状況になったときに、マシンがスタックする(反応しなくなってしまい待つしかない)状況になりやすいという面もある。裏で何かしながら作業するタイプの人などは8コアとかあったほうがスタックを防げて良いという面もある。実際、20コアのマシンでCPUに起因してスタックしたことは今のところない。

なお、サーバーの話だとか、仮想マシンを立てる人だとか、非常に長い時間走るプログラムを投げる人だとか、並列計算プログラムを書く人だとかは、そもそもこの記事の対象外である。

電力

高性能を求めるなら電力なんて気にする意味がない、と思うかもしれないが、むしろ高性能コンピュータにおいて最大のネックになるのが電力であり、電力効率というのはスーパーコンピュータにおいても極めて重要な性能指標である。

考えてみてほしい。普通にまわしているだけで常時500Wいくようなコンピュータというのは、部屋がすごく暑くなる(本当に冬に暖房いらずとかいうレベルである)し、その熱には耐えられないから常時冷房をガンガンに効かせる必要がある。だいたい、電気ヒーターをつけた状態で室温を20℃くらいに保とうとする感じである。 しかも、その熱を排出するためのファンの回転音というのは、なかなかすごいものになる。

500Wといったら、電子レンジを常時つけっぱなしという感覚だ。

これは電気代毎月10万円とか普通にあるレベルで、そもそも一般家庭の電気配線が常時500W以上という電気を想定しているとは思えないので、非常に不安になる。

おおよそだが、CPUのグレードによらず、ビデオカードが低グレードなものであるならば、本体のアイドル時消費電力は50W前後あたりが一般的。最近はアイドル時の省電力モードが優秀な傾向があるので、適切なガバナーで運用する場合においてアイドル時の消費電力はあまり重要ではない。

ビデオカードに関してはアイドル時の消費電力がグレードによってかなり差が出る。今の私のワークステーションはQuadro P400ではアイドル時で60W程度だったが、Radeon RX580になってアイドル時100W前後に増加している。

使用量を考慮しない場合、過剰なCPUを搭載するデメリットは小さいが、過剰なビデオカードを搭載することにより消費電力が増大することが考えられることに注意が必要だ。

一定の仕事をこなすために必要な電力という観点からいくと、第一にはコアの効率が問われるが、同じコアを使うという前提であればコア数が多いほうが少なく済む傾向にある。また、連続的に使用する場合も、コア数が多いほうが遊んでいるコアが少し仕事をすれば片付くということが多く、コアのパワーを上げずに省電力のまま処理できるため、やはりコア数が多いほうが消費電力は抑制できる傾向にある。

フル稼働させた場合の消費電力は、TDPから推し量ることができる。 TDPは熱容量の話だが、プロセッサは電力の大部分を熱に変換するため、TDPは連続稼働可能な最大消費電力とおおよそ等しい。 ただし、「連続稼働可能な」なので、瞬間的にみればそれ以上に電力を消費する可能性はある。 これはビデオカードにおいても同様である。

AMD Ryzen9 3950XのTDPが105W、AMD Ryzen Threadripper 3990XのTDPが280W、Intel Core i9-10980XEが165W、Intel Xeon W-3275が205Wである。 105Wならそこまででもない(Core i9-10900Kの125Wでも)が、200W近くなるとちょっと気軽にぶん回せる感じではなくなってくる。瞬間的な話ならまだしも、フル稼働に近い状態を継続するならそれなりに用意したほうがいいかなと考えるくらいだ。

ビデオカードに関しては、Nvidia 2080Tiが250W、AMD Radeon VIIが300Wで、ビデオカードを2枚搭載する場合は当然ながら倍になる。ビデオカードは特にゲームをしている場合に気づかずに猛烈に電気を使っているというケースがあるので注意が必要である。

AMDで言うと、ゲーマー向けの最高峰CPUであるRyzen9 3950Xが105W、通常ラインナップの最上級ビデオカードである5700XTが185Wで、トータル300W程度というのは、電力食いなパフォーマンス指向マシンとしてもこのあたりが落とし所と考えて間違いない。TDPで300Wになると、さすがに500W電源では心もとなく、600Wの高効率電源を選択することになるが、それくらいで済むシステムが深く考えずにガリガリ使うことができて良い。

ワークステーションプロセッサを搭載するシステムや、コアゲーマー向けの高性能ビデオカードを搭載するシステムは、電気で悩まされる可能性が上がる。

なお、本体よりもむしろディスプレイの消費電力が大きいということもあるので、多くのディスプレイ、あるいは大きなディスプレイを使おうと考えている人は注意してほしい。 あまり旧型のディスプレイを使うよりも省電力なディスプレイにかえたほうがいいという場合もある。

ビデオカード

ビデオカード。グラフィックボードとかグラフィックカードとか呼んだりもする。一般的な略称は「グラボ」だ。

ビデオカードといいながら、動画はあまり関係ない(最近は関係あるけど)。 CG処理用の特別なプロセッサであり、CGを多用するゲームでは性能を求められる。 あとは、3DCGの処理とか、動画のエフェクトとかでも結構使う。

また、映像出力も担っているため、出せる画面の数、サイズ(4kとか)などへの影響もある。 単に口があるかどうかだけでなく、画面が広くなってくると性能的な面の問題もある。

最近は動画再生支援でも使われるが、これはビデオカードのグレードによる差はかなり小さく、あまり気にしなくて良い。 むしろ、世代的な問題のほうが大きく、安いから古い世代のビデオカードを使おうと考えてしまうと動画再生でひっかかることもある。

また、動画エンコード支援の機能もあるが、これは主にはゲームを録画するために利用される。 画質(圧縮効率)があまり良くないため、日常的に使うようなものではない。 動画エンコード支援について考えた上でビデオカードを決定しなければならない状態というのは、そもそももっと踏み込んで専門知識が必要な状況であり、この記事の範疇としてはあまり考えなくて良いことだ。 ただ、4k画面でゲームをプレイしながらそのゲーム画面を録画することは、よっぽど高性能なものでなければかなり難しいとは述べておこう。

1600AF vs 3400G

1600AFは、高性能なRyzenでありながら1万円を切る価格で非常に安い。

という話なのだが、実は適性に組もうとすると6万円台半ばから8万円くらいはかかる。 安い部品を使ってめいっぱい安く上げようとしても、6万円をようやく切れる程度だ。 一方、3400Gを使う場合、3400G自体が2万円くらいするにも関わらず、6万円を切るのはそんなに難しくない。

やはり、2万円台〜なビデオカードを購入するかしないかという点が大きい。 何世代も前の、エントリーモデルの在庫とかなら5000円前後で買えたりするが……

IntelのCPUはかなり上位のモデルまでビデオカード内蔵が前提である。 一方、AMDのRyzenはもっと下のほうでビデオカードの有無が分かれている。

これは割と明確な話である。 ビデオカードは必須であるが、ビデオカードを別途購入するのであればビデオカードを内蔵する必要はない。 ユニットからビデオカードを排除できれば熱的に余裕ができて性能を排除上げられるし、消費電力も減って、さらに価格も安くなる。

Ryzen5 3600Xは十分すぎるほど、むしろ「どうすればその性能を100%使い切れるのか」と心配してしまうほど性能が高い。 単純にパソコンを使うという意味ではそのような性能は必要なく、それだったらRyzen5 3400GやRyzen3 3200Gがフィットする。

それでも性能を欲する場合、全体的に性能を求めている可能性が高く、であればビデオカードは高性能な製品を使う可能性が高い、という考え方だ。 特にRyzenの場合、ゲーム用途にフォーカスしており、ゲームであれば高性能なビデオカードは必須である。 また、高性能なプロセッサを必要とするクリエイターも高性能ビデオカードを欲するカテゴリの人が多い(音楽家に関してはプロセッサへの要求は高いが、ビデオカードはそこまで性能を要求しないが、CGクリエイターや動画制作者であればビデオカードの性能も必要だ)。

だから、Ryzenの内蔵ビデオカードの有無は、高性能を欲する人と、一般的な利用の人に明確に分かれていると言っていい。

CPU性能的にも3400Gよりも1600AFのほうが上であり、内蔵ビデオカードはそこまで高性能なわけでもないから、ビデオカード性能的にもまず1600AFを使用した構成のほうが性能は高くなる。 トータルで見れば1600AFのほうが「性能を欲する人のパソコン」になるわけだ。もちろん、1600AFのほうがパーツに求められる「見合ったグレード」も高くなる。

ではそれぞれどんなPCになるのか?

3400Gはビデオカード内蔵ながら、通常利用では困らない程度の性能がある。3400Gの処理能力で困るとしたら、それは明確な処理性能要求が(暗黙にでも)存在する人だろう。 ビデオカードの性能もIntelのものと比べると高い。だから、簡単なゲームなら意外と快適に動いたりする。 こうしたことから、3400Gのマシンは、一般的な使い方において不満のない、快適なマシンといった感じになる。

なお、3200Gでマシンを組んだとしても(5万円切りを狙えるくらいになる)、高負荷なことをしなければ全く問題ない程度に快適である。 私は3200Gの半分も性能のない、A10-7870KというAMDのプロセッサのマシンも使っているのだが、動画処理とか、圧縮とか、プログラムのコンパイルとか、暗号化処理とかしているときこそ重いと感じるが、それ以外はそんなに処理性能不足とは思わないくらいだ。とはいえ、A10で性能が気にならないといえば全く嘘になるくらいのものではあるのだが、それとは違い3200Gの性能は常日頃性能不足を感じられるようなものではない。 おとなしい使い方をする人であれば3200Gで事足りるし、もっと頼もしい万能マシンが欲しい人なら3400Gが安心だ。価格差が結構ある割にそんなに性能差はないので、3200Gのほうがより有力な選択肢ではあるだろう。

一方、1600AFならもっと性能狙いになる。2ランクくらい上の処理性能に、軽量設定なら本格的なゲームもできるビデオカードを組み合わせる(AMDの現行のボトムを担うRadeon 5500XTの想定である)マシンとすると、突発的に性能を要求されるような状況(例えば突然動画編集をしてみたりとか)があったとしても非常に心強いし、ゲームに手を出したとしても(あるいは、稀にゲームをするのだとしても)、「動くかどうか」の心配は基本的にいらない。 「ものすごい性能があるわけではないが、全方位に頼もしいパワフルなマシン」といったところだろうか。

このあたりは3300Xや3500でもあまり変わらない。3600まで来ると、「ハードに使う前提」という感じがしてくる。

ちなみに、意外な話になるが、内蔵ビデオカードの性能はAMDのほうが明確に高いのだが、ビデオサポートに関してはIntelのほうが進んでいるため、ビデオ再生という意味ではIntelのほうが有利な条件があったりする。 対応さえしていればAMDのほうが消費電力も、使用するCPUパワーも少なく快適に再生できるのだが、AMDのほうが対応が遅い傾向があり、例えばYouTubeで使われているVP9のサポートもAMDはだいぶ遅れたため、性能の低いCPUのマシンでYouTubeの4kを再生しようとしたときに、Intelのほうはビデオカード支援が効くので再生できるが、AMDは支援がきかずCPUパワーが足りず、みたいなことがあったりした。 (AMDの現行モデルに関しては全てVP9がサポートされているので、今のところそんなことはない)

今後8k動画や、AV1という新しい形式が出てくることになったときに、AMDがIntelに対して先んじることができるかどうかが問われるだろう。 なお、今この瞬間、つまりIntelの第10世代Core iシリーズと、Ryzen 3000/Radeon RX Vegaの話をするならば、特にAMDがビデオサポートで劣っているということはない。

ゲーム

これは具体的に述べよう。 私が今使っているマシンは、2x Intel Xeon Silver 4114 CPUと、AMD Radeon RX580ビデオカードを組み合わせている。

4114の性能だが、Passmarkという測定を見ると

項目 4114 Ryzen3 3300X Ryzen5 3600X
コア数 10 4 6
スレッド数 20 8 12
マルチコア スコア 14292 13138 18343
シングルコア スコア 1705 2712 2674

となっている(私は4114を2機積んでいるが、これは1機のスコアである)。 4114はコア数が多いので、マルチコアではそこそこいい値が出ているが、シングルコアはだいぶ遅い。

ビデオカードの性能的には、前世代(見方によっては2つ前の世代)のトップグレードであるRX580だが、 現行で見るとエントリー向けの5500XTのほうがちょっと良いようだ。

この構成でどれくらいかと言うと、ネットゲームで割と重いと言われている「黒い砂漠」あたりだと、普段はVeryHIGHでもイケる。 画面が激しいときはMiddleでないとちょっとつらい。Ultraはさすがにちょっと厳しい。 本物と見紛うようなグラフィックが特徴的なProject Cars 2も、設定次第、というか、「やや下げ気味」くらいの設定で遊べる。 全体的に、「最高画質でプレイしたい!!」とか言わなければだいたいのゲームが普通にできる。ただ、私はディスプレイが4kなので、4k描画で、となるとグラフィック品質はだいぶ下げることになる。描画量4倍だからね。でも、プレイできないわけではない。

じゃあ先に出てきたA10-7870kのほうはどうかというと、ネトゲはだいたい設定次第だけど、起動しないゲームは普通にある。例えば、レースゲームのForza Motorsport 7なんかは起動しない(処理能力というより、ビデオメモリが足りない)。 ゲームに関しては試してみる価値はあるし、3Dゲームでも「意外とできる」けど、間違いなく快適ではない。画質をめいっぱい下げたときにどれくらい下げられるかによる、みたいなゲームも多い。CPUパワーも足りない。 ゲームできないわけじゃないけど、日常的にゲームしたり、本格的なゲームで遊びたいなら無理がある。これに関しては、3200Gを使っても程度が変わるだけでニュアンスはあんまり変わらない。

AMD的にはディスクリートビデオカードは5500XTが現行の一番下なのだけど、この説明でわかるとおり、3400Gの環境と1600AF+5500XTの環境ではかなり話が変わる。 設定的には「1段変わる」程度の話じゃなくて、2〜3段は変わるし、そもそもプレイできないゲームがどれだけあるか、という点でも大きく変わってくる。 3200Gや3400Gでゲームするのは、できないわけじゃないけれど無理気味にやる話で、1600AF+5500XTは普通にゲームをやることを想定したマシンになるわけだ。

DMMなどのブラウザゲームに関しては、どれほど性能を高めても実はあまり快適にはならない。 これは非常に様々なボトルネックが存在するためで、スマホでプレイするようにサクサクになったりはまずしない。 動かすだけならA10でもイケるので(さすがに画面エフェクトは重いけれど)ブラゲ/ソシャゲのためにゲームを想定したマシンを、というのはやや過剰。

また、ソシャゲの類は基本的に非常に細かく通信が入るため、速度全体が通信によって決まってしまう面がある。 だから、手元のコンピュータの性能でどう、というのは割と稀である。

パソコンに必要なものは

自作する場合、いくつかのパーツを寄せ集めることになる。 現状、Ryzen3を含めて豊富な選択肢から完成品を選ぶというのはやや難しいだろう。

基本となるパーツは以下である。

  • ケース
  • ケースファン (熱が少なければケースに付属しているのでだいたいイケる)
  • 電源ユニット (ケースとセットになっているものもある)
  • CPU
  • CPUクーラー (普通は付属してる。熱の多い上位機種にはついてなかったりする)
  • メモリーモジュール
  • ビデオカード (別途必要ならば)
  • ストレージ (SSD、あるいはHDD)
  • Windowsライセンス (あなたがLinuxerである、あるいはLinuxerになるならば不要)

ここで忘れられがちなのが、ケーブルが1本1000円くらいはするということだ。 1台目でなければキーボードやマウス、そしてディスプレイの心配はないだろうが、ケーブルは必要になることもある。 ディスプレイの接続形式によっては変換ケーブルが必要になったりもする。

大きなストレージを必要としないなら、NVMe(M.2)ストレージに対応したマザーボードを選ぶのが良い。 SATAよりもNVMeのほうが高速だというのもあるが、なんといってもケーブルがいらない。 NVMeストレージのほうがSATAストレージよりも若干高いが、ケーブル代も含めればだいたいトントン。

ちなみに、M.2 = NVMeなわけではない。M.2 SATAというのもある。通常のSATAとM.2 SATAは接続形式の違いであり、中身は同じ。 一方、M.2 NVMeとM.2 SATAは接続形式は一見同じ(互換性はない)だが、中身が違う。 M.2スロットはNVMeのみ、SATAのみ、両方挿せる、の3タイプがある。 あと、2242とか2280とかいうのは、ストレージ自体の長さである。長いのが入る場合、だいたい短いのも入るが、長いのが入るのに短いのを入れる意味はほぼない(短いのが余っている場合は別)。ラップトップとかだと。長いのは入らなかったりする。まぁ、NVMe SSDといえばだいたい2280である。

逆に初めての人は、キーボードとマウス、ディスプレイのことも考えておかなければならない。 キーボードとマウスに関しては「とりあえずは安いの」でもいいが(いや、あんまり良くはないが)、ディスプレイに関しては買い換えるのはなかなか手間なので大きさや性能などそれなりに考えて選んだほうが良い。気に入らないディスプレイと何年も過ごすのは結構なストレスである。

実際何が必要か、というのは、環境と、何のパーツを選んだかにもよるので答えにくい。 一応アドバイスしておくと、デスクトップPCは普通有線LANなので、有線インターネット環境がないとネットにつなげるのに「スマホでUSBテザリング」とかやることになるし、有線インターネット環境があっても有線LAN用のケーブルを買い忘れる人が多い。

なお、LANケーブルは、普通の家庭のネットワークならCAT5eで事足りるし、今や5eは入手しづらいのでCAT6でいい。 CAT7以上は無駄なだけでなく、リスクである。

性能の必要性とIntelを含めた性能関係

第8世代 Core iシリーズの時点で、Core i3であっても一般的な用途において差し支えないというくらいの性能があった。 Microsoft Officeなんかは割と重いので、その手の重いプログラムを常用するのであればCore i5あったほうが良いかなというくらい。

Ryzenも登場した時点で、ビデオカードを要求するRyzen5/7に関しては明確な高性能寄りで「普通の人」が文句をつけるようなものではなかったし、ビデオカードを内蔵するRyzen3/5に関してもパソコンに対する積極的利用の意思がある人(要はホビーとして、必要がなくともパソコンを触るし、性能や快適性を気にする人)でなければ問題は生じまいと感じであった。

Core iシリーズに関してはさらに2世代重ねて、その差し支えない度合いが上がったと考えて良い。 一方のRyzenに関しては、第3世代の性能は凄まじく、ビデオカード内蔵のRyzen3/5も十分に高い性能を持つようになったし、Rzyen5はまだしも、Ryzen7/9に関しては格上を食う性能になってしまった。

格上を食う性能とはどういうことかというと、要は私が使っているような20コアCPUとか、ワークステーション用の28コアCPUとか、そういうのを上回ってしまい、高額な業務用・特殊用途のコンピュータを、ゲーマー・一般向けの民生品が凌ぐ自体になったということである。

そのRyzenのワークステーション用のRyzen Threadripper 3990Xに至っては、もはや私は体験したことがない異次元の世界である。Passmarkベンチマークで言うと、私が使っていた最高の性能であるXeon Platinum 8160(24コア)を2機搭載したものがスコア38365であるところ、Ryzen Threadripper 3990X(64コア)は81371というスコアを叩き出す。 データに対する処理時間を考えると、回線速度やストレージ量が明らかに3990Xの速度を下回ってしまい、私の研究においてもどうやっても使い切ることが不可能な次元に到達している。

Intelが進歩してないわけではないのだが、どうしてもAMDの急激な躍進が目立つ。

とはいえ、必要性の面から言えば、Core i3やRyzen3は普通の人が普通にパソコンを使う上で困らない性能があるし、Core i5やRyzen 5(G)はいささか性能要求が発生する場合に心強いものになっている。 Core i7やRyzen5/7はゲーマーにとっても不満のない性能であり、パソコンに性能を求めたいホビイストの要求を満たすだろう。Core i9に関してはどのような状況で必要になるのか悩んでしまい、Ryzen9はその性能を使い切る方法があまりにも限られる状態だ。ゲーマーでも必要あるまい。

Intel Pentium, Intel Celeron, AMD Athlonといった廉価プロセッサも随分性能が上がり、かつてのようにまるで使い物にならないということはなくなっている。 とはいえ、ストレスを感じる状況は実際にかなり多いのも事実なので、使いどころや使い方を選び、初心者が選ぶべきものではない。

ビデオカードはあなたのゲームに合わせて選べば良い。 4kマルチディスプレイへの出力などを必要とする場合は、ビデオメモリーのことも考え、AMD Radeon 5500XTやNvidia 1650などの低グレードだが現行のビデオカードを使用したほうが良いだろう。

Core iNマウンティングと実際

もはや風物詩ともいえるのが、Core i3やCore i5のユーザーに対して「Core i7じゃないなんて」という謎の煽りを入れる(というか、罵倒の限りを尽くし、人権がないかの如く言う)ことだ。

実際のところ性能差は、グレード差以上に世代差で埋まる傾向があること、ユーザーとしては自分の用途にあった性能であることが望ましいことから、このマウンティングは極めて愚かなものである。 というより、そんなことを言ったら代々Intel Xeonを使っている私に対してはどう振る舞うのだろう? 跪いて崇めてくれるのだろうか?

エクストリーム系列がCore i7からCore i9にリネームされ、エクストリーム系列は全くの別物であるにも関わらず名前は同じであるためにCore i7の名でマウントがとれたのと比べると、Core i9は低グレードのものでも従来より高めであるためマウントを取る人は減ったが、それでもCore i7やCore i9でマウントを取ってくる人は結構いるようだ。

では一言。

無意味である。

もう一言。

全く気にする必要はない。

Core i9に関してもそこまでめちゃくちゃな性能があるわけではなくて、製品グレード的な話をするならば、その上に山ほどXeonがあるわけで、マウント取りの根拠がないし、だいたい使っているプロセッサの製品名でのマウントとか、学歴マウント以上の恥ずかしい。

あと、Core i3やCore i5なんてゴミだみたいなことを言う人もいるが、自分の用途にあったプロセッサを選ぶという考え方がなく、Core i3やCore i5の性能を活かすこともできず、性能をベンチマークで見るだけで実計算としてプロセッサ性能を判断することができないような人は、単に机上の数字と戯れて妄想を並べているだけで、その計算量を活かして生産的な行為をするプログラムを書くことすらできないような人なので、哀れな目で見ておけば良い。

メモリの話

私の動画を見てもらうのが早い

容量的には

  • 4GB … 利用の仕方に工夫が必要。メモリ管理などができる手練向け
  • 8GB … 多くの場合事足りる。ただし、不要なアプリケーションは閉じるなどマナーが必要
  • 16GB … よほど贅沢をするか、メモリを食いつぶすようなアプリを使わないと使い切れない
  • 32GB … デスクトップ利用ではまず使い切れない。余剰を活用するテクニックが必要
  • 64GB … 普通の意味でのメモリ利用の割合はわずか。使いこなすにはなんのために、何にメモリを使うのかという意識が不可欠

一方、速度の話をすると、速度は速ければ速いだけ体感的にもよくなる。 メモリの速度に関しては、「全体的に新しいシステムで、そのシステムに適正なメモリを使う」ことで高速になる。

ストレージの話

SSDは半導体製品(USBペンドライブ(=USBメモリー), SDカードなども同じ)、HDDは磁性体製品(テープとかも同じ)で全く違う。

基本的にSSDは

  • 速い
  • 省電力
  • 外部要因によるデータ損失に強い
  • 衝撃に強い

というメリットがあるのだが、大容量化という意味ではHDDにまだ及ばず、特に大容量製品に関してはHDDと比べ高価である。 (逆に言えば、HDDの小容量製品が安くないので、容量が大きくなくて良い場合はむしろSSDのほうが安い)

どのような場合であれ唯一のデータストレージにするのは危険であり、常にバックアップはとるべきだが、故障リスクはHDDのほうがずっと高い(ちなみに、うちはHDDで40台超、SSDで20台超のシステムがほぼ常時稼働しているような形である)。 だが、SSDも壊れないわけではない。HDDの故障が、「あ、もうダメだ!」と気づくチャンスがあるのと比べると(いや、ない壊れ方も普通にあるのだが)、SSDはいきなり全滅になる壊れ方が多い。これを嫌ってSSDは劣ると主張する人もいるようだが、そもそもストレージは常に「壊れる可能性のあるもの」であり、故障リスク全体においてリスクの低いSSDを避けるような理由ではない。

基本的には現状、「SSDを使う」が第一の考え方であり、大容量のデータストレージとしてHDDを使う選択肢が入ってくる。 そのような場合は、外付けUSB-HDDなども考えられるが、NASのほうが良いだろう。

ここでは本体のシステムストレージの話なので、SSD一択であるという前提で進めよう。

M.2とSATA、そしてNVMeの話は既にした通りで

  • M.2 NVMe
  • M.2 SATA
  • SATA (ケーブル接続)

の3パターンがある(ラップトップだとスロット式でぶっさす形式があったりするが、ディスクそのものはケーブル接続のものと同じ)。 これらの中で適合するものを使う。デスクトップPCであれば、使えるのであればM.2 NVMeが推奨される。 ラップトップの場合は、NVMeのほうが消費電力が大きい傾向があるため、あえてのSATAという選択肢もあるが、M.2 SATAのディスクは結構少ない。

M.2ディスクは長さの規格があるが、2280が最も一般的である。

余談だが、ディスクといっているが、SSDには円盤はない。

ラップトップの話

ラップトップは熱的な問題があって、どうしても性能的に十分だというところには到達できない。 そもそも、ラップトップはインターフェイス的にそこまで効率の良いものではないため、フルに性能を使うような要件は適してはいないと言える。

プロセッサ自体の性能に関しても、熱的な問題からフルに性能を発揮しつづけることはできないのが現実なので、プロセッサが高性能なら良いというわけではなく、ラップトップ自体の放熱機能なども重要になってくる。 このことから、性能を測ることは非常に難しい。

ラップトップの性能をどう考えるべきかということについては、この記事の知識とは比べ物にならないほど難しいので、とりあえず

  • プロセッサなら現行のCore iシリーズやRyzenシリーズなどなら良しと考えればだいたいOK。前世代に関しては、安くてもそれなりに考えて選ぶ必要がある
  • メモリは8GBマストでだいたいOK。16GBあれば嬉しいけれど、それをメイン環境としてガリガリ使うのでなければ高額な構成にしてまで16GBを選ぶ理由はあまりない
  • ストレージはSSDならだいたいOK。HDDやeMMSなんかは避けたほうが良い
  • あとはキーボードの打ち心地とか、持ちやすさとか、バッテリもちとか、ディスプレイの見やすさとかで選べば良い
  • 超低消費電力・小型SoCのCore Mシリーズに関しては意外と速いのでそこまで不満にはなりにくいのだけど、ゴリゴリ使う状況では明確に遅い
  • 中古・旧型・リファービッシュ品などは、知識があった上での好き者のお遊びでなければやめておくこと!!

あたりの知識があればよろしい。