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それは提供側の甘えじゃないのか(ドラゴンクエストX、バグ利用で処分)

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(ねとらぼによる)スクウェア・エニックスはドラゴンクエストXのバグを意図的に利用したとして1700名を永久停止処分にしたと発表した、とのこと。

ドラクエXでは、以前もチーターに対して刑事告発を示唆するなど強い態度をつとってきたが、今回の問題は「ひどい」。

不正行為とされているのは、装備品とスキルの組み合わせによって本来は意図しない挙動が発生し、それを利用したということだ。 だが、そんなものは意図的に用意された例外的な挙動なのか、それともバグなのかということは、一般のプレイヤーにはそもそも判断しえない。「意図的に」と言っているが、それがバグであるということを認識して行ったという確定方法が不明だ。 告知を行った後の時間にその行為を行ったとしても、その告知を確認したとは限らないわけだし、それがバグだと認識していたかどうかも分からない。 そもそも、そのように合理的な判断がなされたかどうかの発表がない。

それでいながら、1700人という大規模かつ、永久停止という重いペナルティを課した、ということに対して大いに疑問がある。 しかも、それを認識していたかどうかではなく、一緒にプレーしていた人にさえ、巻き戻しというペナルティを与えているのだ。

だが、話の本質はそこではない。あたかも重大事のように扱っているそれが、本質的に「提供側のミスによって起きた出来事に対して、自分たちの意図や望みに反したからとユーザーに対してその全責任を負わせた」ということである。

そのバグを利用したユーザーがいたとして、本質的には(そのバグが悪であるという前提に立つのであれば)それはバグの被害者である。

プログラマとして、そしてゲームプログラマとして、ふたつの原則を侵す行為なのだ。

ひとつは、バグはプログラマの罪である、という原則である。 バグ自体が意図しないものなのだから、それに対するリアクションを意図に収めるというのは傲慢である。 プログラムが意図しない挙動をするがために、それが仕様となり発展してきた、あるいは意図しない使われ方から発展してきたというのは、歴史として数知れずある。 ましてゲームであれば、きちんと規定されていない挙動を利用して攻略するなどはるか古からあった。

ところが、この件においては「プレイヤーは提供側の意図から逸脱してはならない」というのだ。 何が意図であり、何が意図しないのかを読み取り(エスパーし)、それに従えという。 そうしなければ罪なのだと。 バグは誰が悪いのか。プログラマであるはずだ。バグのために意図しない挙動に遭遇したユーザーに罪を着せ、断罪するのは明らかに過ちなのだ。

そしてゲームプログラマとは、ゲームを届けるまでが仕事であり、ゲームを遊ぶのはユーザーの権利である。 どのように遊ぶか、何を楽しいと思うか、それはユーザーの権利であり、不可侵のものであるはずだ。 ユーザーがユーザーの権利を侵害す時、あるいは犯罪行為であったり、企業運営に重大な支障をきたすのでないならば、ゲームを楽しむという聖域を、運営において侵害してはならないのだ。

ネットゲームにおいてはリリース後もゲームに対して関与できる。その関与にユーザーは一喜一憂し、さじ加減ひとつでもて遊べるためにあたかも神であるような陶酔に溺れてしまう。 その結果がこれだ。神のような全能感に溺れ、思い通りにならないことをユーザーを罰することで叶えようとしたのだ。

エンジニアとしてあるまじき行為だろう。